表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

言葉はいらない

作者: BJ

ある晴れた日曜の昼下がり


ファミリーレストラン『ツベリクリン・パパ』で一組のカップルが仲睦まじくテーブルを共にしていた


見つめ合い微笑み逢う二人


時折肩を揺すらせて笑い声をあげる二人


男は半笑いのまま懐に手を入れ44マグナムを取り出すと続けざまに三発、窓際一面のガラス壁に向け発砲した


ガラスは砕け散りその割れた空洞の外からウエイターがサーカスの火の輪をくぐる虎の如く勢いよく飛び込んできた


男はガラスの破片で額を切り流血で顔が赤く染まって足元に倒れ込んでいるそのウエイターの耳に噛んでいたガムを詰めるとその耳にスピーカーホーンを押し当て大音響で二人の注文をした


空を見上げれば領空侵犯したロシアのジェット機がアクロバット飛行をしながら民家に向けてミサイルを撃ち込んでいる


轟く爆音


戦争は絶対にいけない!


男は反戦主義者だった

この爆音が彼のリベラル魂に火をつけた

彼はだんだんと腹の底から怒りがこみ上げてくるのだった

彼は怒りがこみ上げてくるとあからさま大きくなる質であった


すでに男は来たときよりも約70センチほど身長が高くなっていたのだ


鼻も120センチ長くなっていた


男はその鼻で女のバッグの中ををまさぐるとその中から一つのアコーディオンを鼻で巻き込み取り出し、畳み一畳くらいになった大きな両耳を高速で羽ばたかせながら今はやりの『おしりかじり虫を』シャンソン風にアレンジして女の目の前で優しく奏でて見せた


男のその暖かい心遣いに感動したのだろう、女はバッグの中からオナニー用のトカレフを取りだし天井に向けランダムに発砲しながら嬉しさのあまり軽快なステップでリズミカルに店内中をスキップしだすのであった



★★★オシャレな馬賊は毎日シャンプー!新発売!『newプリン体宮殿』であなたも召集令状!★★★



・・なステップでリズミカルに店内中をスキップしだすのであった


団体客である山伏達の吹くホラ貝がやけにセンチメンタルだ

いっそこのまま客達全員がセンチメンタル虫になればいい・・

ハーフの支配人、アムステルダムとし子(47)は流れ星にそう願った


遅い・・


注文してかれこれ3時間が過ぎようとしていた

さすがの女もふと、我に返ったのだろう、軽快なステップのスキップをはたと止めパンティの中から手榴弾を取りだし口で芯管を引き抜きざまサラダバーの上でミットを構えるドカベンめがけ大きく振りかぶり投げはなった


それを受け取ったドカベンは粉々に砕け散り長い連載にようやく終焉の時が訪れた

長い間ありがとうございました水島先生!



その爆発音におののいたのか戦々恐々とした表情のウエイターがようやくリヤカーをひきながらギターを弾きながら運動場に石灰の白線を引きながらリヤカーに注文の品を載せ山向こうから日に焼けてやって来た

彼の生まれ故郷はねぶた祭りで有名な青森なのにいつも彼は人から里を聞かれると必ず東イエメンと答えてきた

どのような理由で彼がそう答えていたのかは誰も知るよしもなかったのだ

以前彼の幼なじみが言っていたことだが、おそらくその彼の幼なじみである友人サミュエル幕ノ内(29)が言うにはバイアグラを屋根上から節分気取りでばらまきたいだけのことらしい


その彼が!ウエイターのモッツァレーラ山下(29)が持ってきたのだ!

注文の品を積みリヤカーを引いて運んできたのだ!

今日が自分の誕生日だと言うのに!

国境を越え3時間かけて持って来たのだ!

しかも国境警備隊の銃弾をかいくぐってだぞっ!

左肩を撃ち抜かれながらだぞっ!


ウエイターがひいてきたリヤカーには一台の清涼飲料水の自動販売機と一台の原付バイクが積まれていた


男はおもむろに百円銀貨をその自動販売機に入れ、次から次へと色んな清涼飲料水を出していき、瞬く間にテーブルの上は清涼飲料水の山で埋め尽くされてしまった


男は食い入るようにその清涼飲料水の山を見ながら来ている服を一枚一枚脱いでゆきやがて全裸へとなった

男は悠然と缶の栓とペットボトルの蓋を己のペットボトルのような逸物で凛々しく開け出す


すべての品を開け尽くすと男はテーブルから7メートル離れ黙想し、深く深〜く深呼吸しだす


女は原付バイクの給油口を開けると咥えているホースの片方の端を給油口に突っ込みエンジンを吹かし出す


女は原チャリを走らせながらガソリンを飲む!

女はガソリンを飲みながら原チャリを走らせる!


男は黙想をやめカッ!と両目を見開くと助走をつけテーブルの上の清涼飲料水の山めがけ走り出しダイブする!


男はダイブしたテーブルの上でもんどりうち清涼飲料水の山を蹴散らしてしまう


中身が飛び散り、飛沫を上げて舞い踊る清涼飲料水君達


あたりは零れ飛び散った様々な品種がミックスされた大きな清涼飲料水の水たまりになってしまっていた


その大きな水たまりのなかでもんどりうちながら体中に付着した清涼飲料水を半笑いで白目を剥いて舐めまくる男


その周りを給油口に突っ込んだホースでガソリンを飲みながら半笑いで白目を剥いて原チャリウィリーで旋回する女


美しくも仲睦まじい二人


愛する者同士に言葉などいらない


この愛する者同士の二人を


オーナーのトゥーランドット川端山@Jr(53)が自慢のバグパイプを演奏しながら

包み込むような笑みを浮かべいつまでも二人を見守っていたらしい


とサミュエル幕ノ内(29)は苦虫を潰したように語っていた





           〓END〓







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ