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もうちょっとで転生したらバランスボールだった件  作者: 辛味亭
第02章 どれいのさんすけ
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008.やられやくぅ~さんじょぉ~

「お姉ちゃんたち~。指名依頼の完了報告に来たよ~」


 いつもの冒険者ギルドの入り口に近いカウンター。

 ここには、俺専用の踏み台があり、小さい背丈でも、カウンター越しに話が出来る。

 【飛行】スキルがあるから、関係ないのだが、冒険者ギルドの受付嬢たちのご好意だから、使ってやっている。

 爪先立ちしながらカウンター越しにやり取り。

 幼女のふりも大変だぜ。


「「「「ケイちゃん」」」」


 4人の受付嬢たちの声が上がった。

 そして、3人の受付嬢たちが俺のとこにやってきた。


 頬摺りされたり、銀髪のポニーテールをもふもふされたり、胸に顔を埋めされたり、ほっぺにチューされるのはいつものことだ。


 俺が冒険者登録してから、道路側が高価なガラス張りになった。

 こういった姿を周りにアピールするためだ。

 これによって、冒険者ギルドのイメージアップに繋がっている。


 ひとりは、冒険者の相手をしていて仕事中だ。

 書類を書きながら、呪い殺されそうなくらいのどす黒い不機嫌オーラを発散中だ。


 ちなみに、これはアピールしてはいけない姿だ。


「お、おれ、小腹が空いたんで、そっちの酒場で飯食ってくるから、手続きの続きは後で良いか?」


 受付嬢の冬奈(とうな)の不機嫌オーラと他の冒険者からのプレッシャーに負けて、ちょっと前まで冬奈に対応して貰って我が世の春を謳歌していた冒険者が空気を読んだ。

 冒険者の言葉に、パアァァァッと、冬奈の表情が明るくなった。


「ありがとう」


 冬奈は、最高の笑顔を見せて、そう言うと、ダッシュで俺のとこに来て抱き付いた。

 冬奈の笑顔を向けられた冒険者は、嫉妬全開の冒険者たちの不意打ちにより、だらしない笑顔のまま、意識を失った。


 ここ1年では珍しくない極々日常のひとコマだ。


 『冬奈』という名前で分かるように、俺はこの世界に来て、言葉の壁を実感することは全くなかった。

 転生受付のお姉ちゃんの説明に『転生者向けに調整された世界』と言うのがあった。

 それがそう言うことなんだろう。


 冒険者ギルドの受付嬢の名前を胸の大きい順に並べると春奈、夏菜、秋奈、冬奈だ。

 俺のお気に入り順は逆だがな。



     カラン、カラン、カラン、カラン、カラン、カラン



 俺が冬奈たちになすがままになりながら、受付嬢たちの感触にひたってると、冒険者ギルドの入り口のカウベルがけたたましくなった。

 見たところ冒険者っぽいが、見たことのないヤツだ。


 きっと、余所者なんだろう。


 キョロキョロしてから、俺たちの方へ、頭陀袋を持ってやってきた。





 頭陀袋から、血の臭いがする。


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