017.つ~ん
『借りて借りて借りて踏み倒す異世界逃走記!?』と同時投稿
「この度は、元当主、妹、そして、馬鹿・・・いや、もう一人の部下がご迷惑をおかけいたしました。誠に申し訳ありません」
屋敷の中に入るなり、床に額をゴリゴリと擦り付けるスパイン。
「いいよ。いいよ。俺に被害はないしね。それに、いいモノも見せてもらったからな」
「ガッハハハ、まだまだ、儂も捨てたもんじゃないのぉ。ケイ殿が望ならいつでもお見せいたそう」
「爺さんのことじゃねぇ」
爺さんのは、見たくなかった現実だ。
「あ、あの勇者王ケイちゃま。もうちわけありましぇんでちちゃ」
モジモジしながら謝る少女リストちゃん。
「あー許す。許す」
実害がなかったからな。
あったら、お亡くなりになってたので許すにも、許せなかった。
「ありがちょうごじゃいましゅ。あ、あにょ、あ、あくしゅ、よろちぃでちゅか?」
モジモジしてたのは、コレが理由か。
「それくらい、いいぞ」
「ひゃ、ひゃい、ありがちょうごじゃいましゅ」
握手をしてあげると、ポワポワポワンとするリストちゃん。
「で、アームズストロング家の方を、お目こぼししたんだから、ビッグフープ家の方も話が大きくならないように頼むよ」
チラッと、スパインを見る。
「あー、無理かも知れないです。街に入るために待っていた口で稼いでる商売人たちの前であれだけやったんです。もう、噂と言うか事実が知れ渡っているでしょう。で、ジェリドのヤツは、ケイ様だけでなく、王家に対してもやっちゃってますから、ビッグフープ家の爵位返上は確実で、後は何人首を落とされるかの問題っぽいです。でも、ケイ様がそうおっしゃられるのなら、一応、ケイ様のお名前で嘆願書をあげておきます。それでよろしいですか?」
「もちろんだとも」
「じゃあ、ナトア、いつまでも膨れてないで、先に詰め所に戻って、嘆願書の草案を書いておけ」
「・・・・・・」
ツーンとしてるナトア。
「ナトア?」
「すーちゃん、ナトアの裸、見たでしょ?」
「今はそれどころじゃないだろ」
「見たでしょ?」
「だから・・・」
「見たでしょ?」
「はぁぁぁ。何を馬鹿なことを言ってるんだ。いくら、大馬鹿野郎のあいつの実家とはいえ、ビッグフープ家一族の命が関わっているんだぞ。そんな時に私情を挟んで、駄々をこねるヤツは、パートナー、いや、部下にもいらん。命令が聞けないのなら、後で、詰め所にあるナトアの荷物は家に届けさせる。目障りだ。さっさとここから立ち去れ。ナトアがここにいるのはもう職務ではない。立ち去らないと、衛兵を呼ぶぞ。で、どうするんだ?」
厳しいようだが、正論だ。
と言うか、バカップルのやり取りが延々続かなくて良かった。
「わぁぁぁぁん、すーちゃんのばかぁぁぁぁ」
あーあ、ナトアは泣きながら出て行ってしまった。
もうそろそろ、原稿落ちそう。




