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 あれから月日があっという間に経ち――セレスの学園入学の日が来てしまった。


 そわそわとどこか落ち着きがなく、ディズに逢いに行ける嬉しさと不安からか表情がコロコロと変わる。


 ボクも本当は付いて行きたいけど、学園はペット禁止のようで……ボクはこの家でお留守番することになっている。


 でもボクはセレスの事が心配だから、内緒で学園に行くつもりだ。それはセレスの望むことではないだろうけど、セレスの学園入学の日付が近付く度、強まる胸騒ぎが何かをボクに訴えているように思う。



 ボクは月から地上を見ていたから、セレスが入学する学園の場所は大体把握している。


 

 この家のメイドさん達には申し訳ないけど、頃合いを見て部屋から脱出しようと計画中だ。


 セレスが行ってすぐ抜け出してはメイド達に即座にバレ、その事がセレスの耳に入ろうモノなら余計な心配を掛けてしまう。だからこそ、学園に向かうのはセレスより後になってしまうけど――急いては事を仕損じる。


 普段から大人しいウサギを演じているから、少しずつメイド達を油断させておいて脱出すれば良い。胸騒ぎのせいで気持ちが落ち着かないけれど、それでもボクは行かなくちゃいけない気がする……セレスのところに。



 


――セレスが学園に行ってから月日が少し流れ、あまり世話を掛けないボクに対してメイド達の油断が高まってきたところで、ボクは窓から脱出を試みる。


 セレスの部屋は丁度一階の為飛び降りても死ぬことはないし、鍵も単純なモノだからウサギの脚でも開けることができた。


 メイド達の掃除の時間が終わってからの脱出なので、メイド達が戻ってくることはまずないし、外に出てしまえばボクはただのウサギ――メイド達からしたら、野ウサギとの見た目の大差が無いボクを捜し出すのは困難だと思う。


 この家の庭から音をあまり立てないように駆け出し、柵の隙間を潜って外に出て学園の方角に向け走り続ける。


 駆けて駆けて駆けて……どれぐらい駆けたか分からないけど、ようやっと学園が見えてきた事に安堵して走る速度を緩めた。


 セレスはどこに居るんだろう?とりあえずは学園の中に入って、周りに見つからないように気を付けながら捜さないと。



 今は休憩時間らしく、あちこちで談笑したりする生徒の姿を見かける。けど、その中にセレスの姿は無い。


 学園の建物の周りを草の中に紛れながら駆けていくと、聞き慣れた声が耳に届く。ただその声が怒気を孕んでいるのが分かり、焦る気持ちを抑えながらその方向に向けて走った。



「私は、ディズの婚約者のセレスです」



「あら、おかしいわね……ディズ様は婚約者なんていないと言ってたわ、嘘は良くないわよ」


 ようやく辿り着いた先では、セレスが見慣れない女性と言い争っているのが見えた。


 言葉から察するに、その女性がディズの手紙の頻度を落とした原因のようだ。



「ねえ嘘つきさん、仮に私の言ってた事を皆様に言ったとして、皆様は絶対信じないと思うわ……精々無駄な足掻きをなされば?」


「っ!?あなたみたいな人にディズの傍に居てほしくない!!」


「キャッ?!」



 セレスの耳元で囁かれた嫌みに感化され飛び出しそうになるも、その前にセレスが女性を突き飛ばしてしまう。 


 その瞬間、草を踏みしめる音が聞こえて……青い顔をしたディズがこちらに向かってきているのが見えた。




 ああ……嫌な予感がする。




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