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(閑話2)アネットお姉さまとたくさんの噂

ザーラ視点です。

残念な前髪男のハンスも出てきます(笑)

会話は最後の方に出ますが、ほとんど説明が主です、すいません…!

アネットお姉さまのお屋敷から帰る車中、私はその身の高揚を抑えることが出来ず、緩みっぱなしの頬を両手で押さえた。


今日はなんて素敵な日だったのかしら!アネットお姉さまとアプフェル様と、より仲良くなれたなんて!


初めてアネットお姉さまにお会いした日のことを今でも覚えている。

十年前、父同士が知り合いだった縁から、兄であるハンスと共にブルーメ家に挨拶をしに行ったときだ。

兄はアネットお姉さまの弟のマルティン様と同い年だったため、すぐに意気投合していたが、まだ四歳の私は、自分の家から出ること自体あまりなかったので、極度に緊張していた。

父の後ろに隠れて、早く家に帰りたいと願っていた私に、アネットお姉さまは緊張を解すように優しく手を取ってくださった。


『初めまして、ザーラ。私はアネット。こちらへ来て、きれいなお花がたくさんあるのよ』


月夜の明るい夜空のような深い群青色の髪。月の光のように輝く大きな瞳。微笑みを浮かべたふっくらとした口。当時八歳のアネットお姉さまは、とても愛らしかった。

年上に対して愛らしいとは失礼かもしれないが、初対面の私の感想はその一言につきる。

じっと見つめる私に笑いかけたアネットお姉さまの笑顔に惹かれ、その後は一緒に仲良く遊んだ。

その遊びが庭での体術の練習で、その光景を見た父が、必死で受け身を取る私に驚愕されて倒れかけたのも、今では良い思い出だ。


そして、現在も定期的にアネットお姉さまとお茶会などで交流を深めている。お姉さまは相変わらず愛らしいが、年齢を重ねて芯の強さも持ち合わせられ、自分の意見をしっかり述べられる姿は、ますます私の憧れになった。

アネットお姉さまの親友とも言えるアプフェル様にも会わせてもらい、姉が二人も出来たようでとても嬉しい。


それにしても、反面ハラハラした一日でもあった。

ナディア様の難有りな態度に対して、アプフェル様は爆発寸前まで苛立ってらっしゃった。しかし、アネットお姉さまのあの毅然とした対応といったら!正論を堂々とお話しされるお姿は凛々しく、私はうろたえるだけの自分が恥ずかしくなった。

私もロバ耳会の一員として、これからはしっかりとしなければと、固く誓った。


あと驚いたのは、兄のハンスのこと。

まさか、ルートヴィッヒ王太子殿下と一族の若様クラウド様と並ぶほど、令嬢たちの人気があるとは知らなかった。


ルートヴィッヒ王太子殿下は、少し癖のある王族特有の金髪と国内では珍しい金の瞳をお持ちで、容姿端麗の上、剣や魔法に天賦の才があり、性格は穏やかで常に目元と口元に微笑みを絶やさない。夜会では常に女性が周りを取り囲み、彼女たちに様々な甘いお言葉をかけ、女性の扱いがお上手だと、噂で聞いたことがある。アネットお姉さまは初恋の方と正反対の王太子殿下をあまりお好きではないようだが、令嬢たちの人気は絶大だ。

御年十九歳になられ、来年までに婚約者を決めなければならないが、まだその席は空席だった。様々な女性とのお噂が絶えず、令嬢たちが目をぎらつかせて王太子殿下が参加する夜会に乗り込んでいるらしい。怖すぎる。


ゾンネルン一族の長の息子であるクラウド様は、星の輝きのような一族直系の者特有の銀髪を肩の下まで伸ばして一つに結び、切れ長の瞳はやはり銀色、知的な顔立ちに華を添える。身長が高く、魔法の腕は一族の長についで高い能力を持つ。また、剣や体術などにも精通し、幼馴染みで親友でもある王太子殿下と親善試合をすることもある。あまり表舞台に立たないが、国王陛下主催のパーティーに参加するときは、令嬢たちの視線が王太子殿下とクラウド様の会話風景に釘付けになるらしい。私も早く成人となり、その光景を拝見したい。クラウド様の冷静沈着な雰囲気はなかなか話しかけづらくさせ、表情もあまり変わらないので、表立っては令嬢たちも騒がないが、王太子殿下と人気は互角だ。

クラウド様も王太子殿下と同い年の十九歳、婚約者はご不在だが、クラウド様ご自身が認めた方なら貴族でも平民でも構わない。しかし、これも噂ではなくご本人がお認めになった話だが、クラウド様は暁の巫女姫様一筋とのこと。令嬢たちは涙を流しながらも、その組み合わせに納得しているとも聞いていた。


暁の巫女姫。

この方は、ヒンメルン王国の歴史を語る上でかかせない、重要な伝説の人物である。初代ヒンメルン王とゾンネルン一族の創始者と共に、ヒンメルン王国の礎を築いた、当代一の魔術師だ。空の神と対話ができるとされる唯一の人物であり、国の有事には暁の巫女姫の神託を仰ぐことになっている。

その素性は謎に包まれており、ヒンメルン王国が出来てから同じ人物なのか、それとも世襲制なのか、指名制なのか、何もわからない。

表舞台に出るのも年終わりの儀式と新年の儀式のときだけで、明け方の空のような暗い赤い色の布を体に纏い、巫女姫しか持たない黒髪を長く靡かせ、神からのお告げを数言話すのみ。年終わりの儀式ではご尊顔は仮面で覆われているが、新年の儀式では仮面を外すらしい。その素顔は絶世の美女だそうだ。巫女姫が登場する年終わりの儀式と新年の儀式では、国の重要な役職につく者とその子息もしくは令嬢しか参加できない。新年の儀式後のパーティーでは全ての貴族が家族と共に参加し、国王陛下並びに王族たちにご挨拶することとなる。


そんな巫女姫様と、王弟殿下の娘であらせられるカノンさま、そして何故か私が、国の三大美女として噂されているらしい。これはご友人の多いアプフェル様が教えてくださった。

私は引っ込み思案なので、同年代の友人がほぼいないため、情報が限られているのだ。

それにしても、何て恐れ多い噂なのだろう。アネットお姉さまならともかく、私はまだ成人前の小娘に過ぎない。その三大から抜けたいのだがどうしたらいいのやら。


アネットお姉さまにもいろんな噂があるが、そのほとんどが勝手な想像に彩られたものだ。私も自分が初めて噂されている立場だと知り、心境は複雑だ。

ちなみにアプフェル様も噂になったことがあるらしい。ご本人が教えてくれた。

曰く、国の三大苦労人一族の一つとのこと。アプフェル様の祖父の代以外でも窮地に陥ったことが何度もあるが、その度に復活していることが理由らしい。他が気になる。


そして兄のハンス。これには妹の私も首を傾げる。

アネットお姉さまにベタ惚れで、お姉さまの迷惑を省みずにアプローチを続けている。騎士団の中で、お姉さまとの仲を公言している。先走る傾向のある兄なので、騎士団の仲間は話し半分に聞いている。そしてそれに気付いていない。

その全てが残念すぎる。魔力はないが、剣の腕前や態度や能力は決して悪くないのに。暴走傾向があるがために、残念さが際立つ。

アネットお姉さまに申し訳ないわ。何度も兄を諌めたのに、全く効果がないのだ。




高揚していた気分は兄のせいで、やや下がり気味になった。

複雑な表情のまま馬車を下り、出迎えた執事や侍女たちに「ただいま戻りました」と告げる。部屋に戻ろうとすると、玄関の脇にあるサンルームに兄がだらしなく座っていた。シャツのボタンを数個開け、冷たい水を飲んでいる。豪快に開けた胸元と気だるげな整った顔に、若い侍女たちがこっそりではあるが釘付けになっているのがわかった。


全くお兄様は。お母様がその服装をご覧になったら、怒られてしまいますわ。


私の嘆息が聞こえたのか、兄がこちらに気付いた。


「おっ、ザーラお帰り」

「ハンスお兄様、ただいま戻りました。お兄様もお出掛けでしたの?」

「ああ、マルティンと馬で郊外の湖までね。毎日の騎士団の練習で滅入っていたから、いい気分転換になったよ。ザーラはどこに行ってたの?」

「アネットお姉さまと、伯爵令嬢のアプフェル様主催のお茶会に行って参りました」


アネットお姉さまの名前が出た途端、兄はガバッと身を起こした。


「何だ、お茶会の約束ってお前も一緒だったのか。それなら俺も一緒に行って問題なさそうだったな。せっかくアネット様の側にいられる機会だったのに、残念だ 」

「…外出先をお兄様に伝えなくて、本当に良かったですわ」


兄のアネットお姉さまに対する想いは、妹の私から見てもそれはそれはしつこすぎる。顔も悪くないし、性格も優しいし、花形の職業だし、家柄的にも釣り合う。黙っていればお似合いの二人と言えなくもないのに、兄のアネット命の暴走はそれに気付かない。


重ねて言おう。残念すぎる兄だ。ロバ耳会の後なので、率直に思った。しかし、そこでふと考えが過った。


ハンスお兄様が落ち着いた態度になったら、アネットお姉さまも急な変化に興味を持たれるかも…?

上手くいけば、二人は想い合って、結婚なんてお話になって、アネットお姉さまと私は義理の姉妹になって…!


ここまで考えて私は急いで部屋へ行き、一冊の本を手に取り、また兄の元へ戻った。


「お兄様、この本を読んでみませんか?」

「ん?ええと、「漆黒の騎士と純白の令嬢」?えー、これ恋愛小説だろ。全然興味ないんだけど」

「アネットお姉さまの一番お気に入りの本ですよ。この小説に登場する騎士様みたいな人と恋に落ちたいのですって。でも気が進まないのでしたら、無理に…」

「へえ、なかなか面白そうじゃないか。さすがアネット様のお好きな本だな」


私の手から本を取り上げた兄はパラパラと中身を見る。


「では、ごゆっくりお読みください。続編も、全て持っておりますから」

「ありがとう!ザーラはいい子だな!今度街で流行っている菓子があるらしいから、買ってきてあげよう」

「嬉しいですわ、お兄様。ありがとうございます」


暴走傾向のある兄だが、優しいところもある。私はにっこり笑い、早速読み始めた兄に、それではと告げ、部屋に戻った。

アネットお姉さまの好みのタイプは、今も初恋の方だ。何度も話を聞かせてもらって、今では私の好みのタイプにもなった。その初恋の方に似ている登場人物の騎士のことを知れば、兄もそこに近付こうと思うのではないか。

あとはハンスお兄様の頑張り次第ね。ロバ耳会もまたお約束したし、楽しみなことがたくさんだわ!


一人浮き足だった気分で立ち去ったため、兄がぼそりと呟いた言葉は、私の耳に入らなかった。


「この漆黒の騎士、俺にそっくりじゃないか。…なるほど!だからアネット様はこの騎士が好きなのか!じゃあこの本は読まなくたっていいだろう。俺のこのままがアネット様はお好きなのだからな!」

ようやく、今後出てくる人物たちの紹介ができましたー。

どのようにアネットと関わっていくのでしょう。

次回は、アネットの弟のマルティンが一目惚れしたお相手についてです。

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