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忍び寄る陰謀と一族の名に恥じない決断?

更新遅くなりました!すみません!

前回ちょろっと出た、アネットが何故侍女をやっているか、その理由がわかります。

長めです。

私は思わず言葉を飲み込んだ。しかしカノン様とルゥは私の返答を待っている。カノン様、あの魔力に気付いていらっしゃったのね。ご自身が気付いたのかしら、屋敷の誰かから報告があったのかしら?おっと、そのことを考える前に、質問に答えなくちゃ。


「…おっしゃる通りです。その魔力が気になり、庭へ向かいました。すると、塀の向こうから話し声が微かに聞こえてきたので、風魔法で声の大きさを増幅させました。私は幼い頃の修行で、簡単なものでしたら魔力を外に発することなく風魔法を操ることができますので、誰かに魔力を感じられる恐れはありません」

「それは、ミハイルさんの指導ですか?!」

「何故ルゥがミハイルのことを知っているの?」

「ミハイルさんは魔法学院創設以来の天才で、凄腕の密偵として名を知られた存在なのです。何度かお会いしたことがありますが、その知識量や人柄に触れる度に尊敬の念が沸き上がってきて…!」

「はい、落ち着いて。話を元に戻すわよ。アネットの聞こえた会話の内容を教えくれる?」


興奮状態のルゥはカノン様にたしなめられて、少し残念そうに口を閉じたが、私にキラキラした視線を送っていた。これは、またあとで話を聞かれそうだ。おかしいな、もっと淡白で意地悪な人だと思っていたんだけどな。男の人ってよくわからないわ。

とりあえずルゥのことは置いておいて、聞こえた内容をかいつまんで話した。私の話を聞いたカノン様が難しい表情で私に尋ねる。


「アネットは隣の屋敷を所有するバーデン伯爵家について何か知っていることはある?お父上のゲオルグ宰相から聞いたこともふくめて」

「ええと、国の三大貴族に次ぐ古い家系で、第二王妃カトリーナ様のご実家で、現在の当主はカトリーナ様の弟さんですよね。父から聞いた話は、カトリーナ様のお父上様が前当主であった時代、ゾンネルン一族の地位向上を後押ししたことにより一族の力を得たバーデン前伯爵は、政に際して積極的に進言したり、バスティード陛下の王太子時代にご自身の娘を正妃として輿入れさせたりと勢いがありましたが、バスティード陛下が国王になった際に前伯爵の不正を明らかにし、前伯爵は失脚して領地の屋敷へ隠居されたと」


国の三大貴族とは、モント公爵家、ブルーメ伯爵家、ハルトマン男爵家である。

この三家のご先祖様たちは、稀代の艶男で密偵のヴァイス・モント、麗しの策略家カロリーン・ブルーメ、熱血の武人ベアード・ハルトマンと言い、初代ヒンメルン国王ソラ様の三忠臣と呼ばれた。

ちなみに、カロリーン様は私の憧れの存在。三忠臣の中で唯一女性のカロリーン様は、戦いにおいて常に冷静に状況を読んで、ソラ様の意図を汲んだ的確な作戦を組み立て、味方の被害を極力抑えたと伝えられている。しかも戦闘面でもとてもお強くて、その足技の破壊力と華麗さは、凍るような美貌と相まって見惚れるほど美しかったそう。

カロリーン様が作ったとされる我が家の家訓を要約すると、「ヒンメルン王家を支えよ。しかし自分が忠義を尽くす相手を見誤るな。その上で我が道を行け」。今は薄れたが私は王太子殿下個人への苦手意識はあったが、賢王と名高い現国王バスティード陛下に対して尊敬の念を常に抱いている。お父様は陛下に並々ならぬ恩義を感じているみたい。私も忠義を尽くす相手を早く見つけたいものだわ。


ソラ様とゾンネルン一族の創始者であるロート様が、暁の巫女姫と三忠臣とともに戦乱の世を正していく様は、ヒンメルン王国建国史に詳細に載っている。

また、この建国史を記述したのは、お供に付いていたベアード様の弟のダックス様だ。勝者側の都合のよい内容ではなくありのままを記しているので、生々しいことも載っているが第一資料としてとても価値が高い。

それからヴァイス様とロート様は魔法学院の設立と密偵の育成に、カロリーン様とダックス様は法の整備に、ベアード様は騎士団を結成し、それぞれ国を整えていった。


初めて私がミハイルから建国史について学んだとき、何故ハルトマン家だけ爵位が違うのかと疑問に思ったのよね。するとミハイルはこんな逸話を話してくれた。


ソラ様がヒンメルン王国を平定なさったとき、これまで特に尽くしてくれた三忠臣にそれぞれ最高位の公爵を贈ろうとした。しかし、ベアード様だけが爵位を固辞する。いわく、自分は主の剣であり盾であるのだから、爵位と領地をもらって家や領民まで守れないと。しかし、彼ほど尽力した者が断ると他の者が遠慮して爵位を素直に受け取れないという声が出たので、やむなく弟のダックス様が爵位を継ぐことになった。またダックス様も自分の功績ではないと、一番下の爵位である男爵を望んだという。

その後、ハルトマン男爵家は兄弟姉妹関係なく、武に優れたものを騎士団へ、知に優れたものを当主にする。ハルトマン男爵家は今まで国に貢献している功績から爵位を上げる話が何度も出ているが、代々の当主がベアード様とその弟である初代当主の教えを守り、やんわりと断っているそう。


だから、カノン様とマルク様の婚約が実現したんだろうなぁ。ただの男爵じゃなくて本来なら公爵位を献上されてもおかしくない家柄であるハルトマン男爵家令息だったから。

今の話と関係ないことをチラリと考えていたら、カノン様が満足そうに頷いた。


「そこまで知っているなら話は早いわ。そう、前伯爵が失脚したあとは、国王陛下とモント公爵、そしてゲオルグ宰相がバーデン伯爵家に目を光らせていたの。陛下は前伯爵には罪はあっても娘のカトリーナ様をないがしろにすることはなかったわ。今まで通り接していたの。さすがにカトリーナ様も父親の失脚直後はおとなしくしていたけど、ヨハン殿下が産まれてからはまた元に戻ってね。元々ご自身やご自身の実家を優先しないと気が済まない性質だったから、陛下をいつも困らせていたわ。特に、イブ様がお輿入れされてからは顕著だったわね。生家の身分が低いからってイブ様はいつもカトリーナ様を立てていらっしゃて。なのにカトリーナ様のわがままやイブ様への嫌がらせは止まないから、陛下の心がイブ様へと傾いても仕方ないことだわ」

「ヨハン殿下がお生まれになったとき、カトリーナ様は生まれた順で王太子かどうか決まるのはおかしいと、法の改正をゲオルグ宰相に迫ったそうです。宰相は、カトリーナ様がご自身の息子を王太子にしたいだけなのがすぐにわかり、簡単に改正できないと一刀両断したと聞いております。それからカトリーナ様はヨハン殿下よりもご自身のことしか興味を持たず、享楽的な生活を送っていらっしゃいました。陛下とイブ様は王太子殿下もヨハン殿下も同じように愛情を注ぎ、王太子殿下とヨハン殿下、その後お生まれになったネーナ王女様はとても仲が良いのです。ヨハン殿下は優秀な方で、成人前ですが思慮深く、いつも兄の王太子殿下より一歩下がっていらっしゃいます。王太子殿下はヨハン殿下を一番信頼しております」

「そうね、ヨハン殿下もルートヴィッヒ殿下を慕っているし、ネーナ王女をとてもかわいがっているわね。私はそれぞれと文通をしているけれど、毎回お互いのことを書いているのよ。ヨハン殿下はネーナ王女にお菓子をいつもプレゼントしていたり、マルク様のお話を私に聞きたがるわ。剣の練習の相手がマルク様の一番弟子である騎士団長だから、どんな方か知りたいみたいよ。十分ヨハン殿下も強いのに、熱心よね」

「ヨハン殿下は剣の腕もさることながら、王族の直系の方々は全ての基本魔法を使用できる中でも、火の魔法を扱うことに特に長けていると聞きましたわ。素晴らしいお人ですのね」


ネーナ王女は王太子殿下の妹君で、ヨハン殿下の異母妹である。御年八歳になられて、イブ様の柔和な顔立ち、バスティード陛下の金髪と藍色の瞳を引き継いだ、とても愛らしい姫君と聞いている。美麗な三人兄妹の仲睦まじい姿は、どんなに眼福だろう。

それにしても、王太子殿下に近いカノン様やルゥがヨハン殿下を良くおっしゃるのなら、ナディア嬢に聞いた話はなかなかの信憑性があるのかもしれないわね。

そう思いながら相槌を打つと、カノン様とルゥの顔がサッと強ばった。


「何故ヨハン殿下が火の魔法が得意なことを知っているの?」

「以前ゼール伯爵令嬢のアプフェルのお茶会で、同席していたトリッペン男爵令嬢のナディアから聞きました。ヨハン殿下がいかに素晴らしいお人柄か、ナディアのお父上の男爵様がおっしゃっていたそうです」

「そう、トリッペン男爵が、ね。ルゥ」

「はい、早急に調査致します」

「全く、ナディア嬢は変わりないのね。その話が周りにどんな影響を与えるか考えずに話してしまうのだから。以前面識がない私に突然手紙を出してきたけど、その内容の稚拙さに驚いたわ。アプフェルの苦労が目に見えるわね」


密偵のルゥが調べるって、やっぱり極秘事項だったのか…!ナディア嬢、そしてトリッペン男爵、ご愁傷さま。しっかり裁かれてください。

心の中でうんうんと頷いていると、カノン様が呆れた顔でため息をついた。私とアプフェルが友人であることはカノン様もご存じだし、ナディア嬢の悪評も知れ渡っているので、アプフェルに同情的だ。

私も神妙な顔をした。


「ええ、折に触れて注意していたのに、全く聞き入れてくれないとアプフェルが嘆いていましたわ」

「ゼール伯爵家は失礼ながら運がお悪いといいますか、国内でも古い家柄で王族からの信頼も厚く、代々の当主もしっかりしているのに、時折財政難に陥ったり付き合いのある家の不祥事のとばっちりを受けたり、災難に見舞われていますよね」

「国の三大苦労人一族って言われているらしいわ。アプフェル自身から教えてもらったのよ。それで、カノン様、バーデン伯爵家で何かあったのですか?」


不思議そうに首をかしげるルゥの言葉に私は思わず苦笑いしたが、いい加減に本題に戻そうとカノン様に向き直った。


「ええ、その通りよ。実は、伯爵領で一年ほど前に追放になった宮廷魔術師の姿が目撃されたの。その宮廷魔術師が一癖あって、腕はかなり立つのだけど問題行動が多過ぎて処分されてしまったそうよ。ただ、追放の際の契約をちゃんと結ぶ前に雲隠れしてしまったらしく、行方が知れなくて。魔術師はその力故に、追放したとしてもその後の所在を把握していないと狙われたり、逆に犯罪に使ったりして、危ないですからね」

「身柄は拘束していないのですか?」

「残念ながらまだね。体裁を考えて表沙汰にしていないのだけど、ルゥを始め密偵たちは魔術師の行方を追わせていたら、その過程でバーデン伯爵領に辿り着いたの。昔のことを覚えているものも多いから、バーデン伯爵家を再度調査したわけ。そうしたら、隣のバーデン伯爵家の別邸に人が滞在することが増えたり、ヨハン殿下の噂が意図的に流されたりね。現在のバーデン伯爵自体は二大公爵に睨まれっぱなしで下手な行動はできないので、前伯爵の差し金だろうという推測よ。それに…」

「それに?」

「ヨハン殿下が、成人後の王位継承権の破棄と王族からの離脱、そしてバーデン伯爵家との絶縁を空の契約で結ぼうとしたの」

「!まさか」


空の契約とは、空の神の名の元に執り結ぶ、非常に重要な契約となる。ヒンメルン王国で絶対的な空の神に誓うもので、暁の巫女姫を通してしか扱えないそれは、魔法契約に基づいており、その効力は絶大だ。王族やゾンネルン一族、貴族の婚姻もこれにあたる。王族や貴族の結婚は政略結婚が当たり前のようにあるが、その際に相手との相性も重要視されている。それは、空の契約により簡単に離縁できないからだ。

他には暁の契約があり、暁の巫女姫の名の元に執り結び、ゾンネルン一族の配下になるときや庶民の婚姻に使う。


ヨハン殿下はどうしてそんなことを?!

私が驚愕のあまり言葉を無くすと、カノン様は悲しげに目を伏せた。ルートヴィッヒ王太子殿下とヨハン殿下のことを弟のように慈しんでいたというカノン様の心境はいかなものか。

しかしすぐに顔をあげ、カノン様はきっぱりとした口調で続けた。


「直系の王族は暁の巫女姫と直接やり取りができるから、ヨハン殿下は巫女姫に願い出たそうよ。でも、巫女姫がルートヴィッヒ殿下に契約を結ぶ前に連絡を取ったので、まだ有効になっていないみたい」

「王太子殿下はヨハン殿下に問い詰めたそうです。何の相談もなかったので、王太子殿下の衝撃は計り知れませんでした。そのときはバーデン前伯爵、つまりヨハン殿下の祖父となる人物の周辺を探っているところでしたが、ヨハン殿下には知られないようにしていたので、何故なのかと」


ルゥの顔が苦渋に満ちていた。自分の両手をきつく握りしめている。王太子殿下の関係者だし、かなり近しい間柄のようだから、自分のことのように辛いのだろうな。

カノン様も心配そうにルゥを見ていたが、言葉を引き継いだ。


「ヨハン殿下とカトリーナ様の親子の交流はほとんどなかったのだけど、最近になってカトリーナ様から近付いてきたようよ。ヨハン殿下に親子の情は残っていなくて、むしろ何か問題でも持ってきたのかと胡散臭く思っていたみたい。カトリーナ様はヨハン殿下こそ王太子に相応しいと、次期国王として国を納めるべきだと熱心に説いたそうよ。話し半分に聞いていたら、焦れったくなったのか、今の王太子は災難に見舞われるかもしれないからと、言い出したの。そこでヨハン殿下が反応したのを見て、勘違いしたのね。今後王太子の周りで何が起きても、あなたは今のままでいればいいのよと吹き込んできたの。そこからヨハン殿下の行動は早かったわ。母親が何をするかまではわからなくても、このままでは自分のせいで兄に迷惑をかけてしまうと、すぐに暁の巫女姫に連絡を取って、契約を結ぼうとしたの。全く、散々ほったらかしにしていた実の母親と、今まで愛情を注いでくれた異母兄とその両親、誰が見たってどちらを慕っているかわかるでしょうに」

「カノン様はカトリーナ様を良く思っていらっしゃいませんよね。まあ良く思っている方なんてほとんどいないでしょうけど」

「私は何も思ってないわ。ヨハン殿下のことで怒りはあるけど。あちらが勝手に私を敵視しているだけよ。昔から私を城内で見かけると顔を反らされたもの」

「カトリーナ様はカノン様を妬んでいるのですよ。美貌も知性も才能も人気も、全てにおいてカノン様が上ですから」

「まあ、そんなことよりも。ルートヴィッヒ殿下はヨハン殿下を失いたくないの。家族の情もあるけれど、信頼のできる右腕としてこれからも一緒に国を盛り上げていきたいから。だから、秘密裏にバーデン前伯爵たちの計画を調べて事前に阻止するようルゥたちに指示したのよ。国王陛下や宰相が知ったら、いくらヨハン殿下を守りたくても大々的に調べて処罰しなければいけなくなってしまう。そこで、アネットの風魔法に協力してほしいの。どう、アネット。もう一度尋ねるわ。ゲオルグ宰相に報告する?」


私はカノン様の深緑色の瞳をじっと見つめる。そこには何の感情も浮かんでいない。私の答えが何であれ、きっと今まで通りの付き合いはできるだろう。カノン様はそういうお方だ。

次にルゥを見つめた。その切れ長の瞳は強い光をたたえていた。それは王太子殿下に対する忠誠か、私の覚悟を見届けようとしているのか。付き合いが浅すぎて、何もわからないが、カノン様と同じように私の答えを受け止めてくれるだろうという確信が、何故かあった。

私はしばらく俯いたあと、立ち上がった。


「父に報告するのは簡単ですが、事前に危機を食い止められるならば、それに越したことはありませんわ。今回の件が明るみになれば、国民にいらぬ心配や不安を与えてしまいますし、混乱に乗じて他の不穏分子に隙を見せることになりますから。私の力が王家のお役に立つのでしたら、いくらでもお使いください。私はブルーメ家の娘、王家を支える一族の者でございます」


カノン様へ淑女としての最上級の礼をする。そして顔を上げて二人に笑いかけた。


「アネット…!まず、あなたとの友人関係を使ってしまったことと、あなたの忠誠心を利用してしまったことを謝らせてちょうだい。最初からあなたを仲間に引き込もうと思っていたわけではないの。言い訳に聞こえてしまうかもしれないけれど、私は初めてアネットと会った日からもちろん今も、あなたのことをとても大切な友人だと思ってる。ただ、事態はヨハン殿下の成人の儀まで時間がなくてかなり切迫していてるの。企みはわかっても肝心の内容がわかっていなくて、解決の糸口がほとんど見えていないわ。あなたの力が頼りなのよ。決して危険なことはさせないから」

「私もカノン様との友情をとても嬉しく思っております。王家のためというのはもちろん、カノン様がお心を砕いている王太子殿下とヨハン殿下のためにも頑張りますわ!」

「ああ!アネット、二人の身内として、元王族として、本当に感謝するわ。ありがとう」


カノン様も立ち上がり、私の両手を優しく包んだ。申し訳なさそうに眉を下げたカノン様は、私の言葉に目を潤ませた。うおう、美しすぎて目がつぶれそうだわ…!

いつの間にかルゥもそばにおり、胸に手を当てて私に膝まずいた。


「本当にありがとうございます。アネット様の御身は私がこの命にかけて、お守り致します」


私はカノン様に手を握られたまま慌てた。なんかすごいこと言ってるし、ルゥの瞳も潤んでいるし、色気もすごいし、というかその行為って!


「命って…!ちょっ、ルゥ!どうしてそんな忠誠の礼をしているの?!」

「それはもちろん、アネット様をお慕いしてますから」

「お慕いって…ええっ?!」

「ルゥ、何を先走っているのかしら?今はそんな時ではないでしょう。さあ、アネット、今後の話をしたいから席にかけてちょうだい」

「は、はい!」

「も、申し訳ございません…」


爆弾発言をするルゥに目を白黒させていたら、カノン様の冷ややかな声で背筋がすっと伸びた。私はなんとか表情を引き締めるだけですんだが、叱責された張本人のルゥは顔を青ざめていた。さっきの言葉の真意を聞きたかったが、さすがに今は無理だ。私はカノン様を怒らせたくない!美人の無表情は恐すぎる!

カノン様に促されて座り直すと、さてと改めて仕切り直された。そしてカノン様が放った言葉が、私の思考をまたも飛ばすものだった。


「密偵の調査で、隣のバーデン伯爵家別邸がある条件の侍女を探しているらしいの。アネットにはその侍女に扮してもらうわ」


えっ、敵の本拠地に潜入って…ほ、本当に危険じゃないの…?!

カノン様は実は結構悩んでいました。

アネットと仲良くなったあとで風魔法の術者と知り、協力してほしいけど友人だし危ない目にあわせられないし、でも時間がないし。

そんな中で昨日のことがあったので、この際断られてもいいから打診してみようと思ったわけです。

そしてルゥがぶっこんできましたね。

おかしいな、ルゥってもっとクールなイメージだったのに、勝手に動いちゃって。

次回はルゥ視点ですー。

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