ハードボイルドなおっさんの場合
続きの四話、本編再開を受けて、ささっとアップさせて頂きます!!
「・・・きょうはおれか」
先日のコウヤと同じように、目覚めた時から、バーントは冷静に自分に起きた出来事を受け止めていた。
「お、はよう」
「あぁ、おはよう」
「おはよう」
「おはよう・・・・」
朝起きて、朝食を食べるために移動車を出たところで、旅の一行達は今回の違和感に気づく。だが、誰もその違和感を指摘しようとはしない。
ちなみに今朝ようやく元の体を取り戻したコウヤは、少し晴れ晴れとした様子で体を動かしていた。
そんな彼を横目で眺めつつ、バーントはいつものように帽子を被ろうとした。
が、当然四歳前後の姿をした彼に、大人の帽子は大きすぎる。すぐに帽子が目元よりも下にずれ下がった。
「「「「!」」」」
その光景を目の当たりにしたマツリ、カイン、サンジュ、ルイの四人は一斉に噴出しそうになるが、寸前の所で留まる事に成功した。
「このすがたでは、かってがちがうな」
四歳児は難しい顔で腕を組んだ。
「・・・・バーント」
―――お前、俺に言わなかったか。五歳児が難しい顔をしているのは違和感があると。今、その言葉をそっくりそのままお前に返すぞ。
バーントを見つめながら、サンジュは眉を寄せた。
けれど、バーントは特に気にした様子もない。
コウヤが朝食の用意をすると、いつもの調子で食事を始めたし、その後も特に幼いからといって変わった所はない。
あまりの変化の無さに、すでに後ろの背景に、大人のバーントが居るような錯覚さえおぼえる。
そんな彼を観察しつつ、面白くないと思っている人間が三名。
何も思ってない人間が一名と、少し悔しがっている人間が一名居る。
「いいたいことがあるなら、いえばどうだ」
「・・・・・姐さんに見せたい」
「!」
マツリのその一言に、バーントの顔色が変わった。
要らない事を思い出したような彼に、ルイが余計な言葉を加える。
「コウヤは肖像画を描くのがうまかったね。どうだい?記念に一枚描いてみれば」
「いいな。それをマリンデ―ルに見せればいい。きっと喜ぶ」
サンジュがニヤニヤ笑いながらルイに賛同した。
「・・・きっと、生涯それでからかわれるだろうな」
彼らの言葉を聞いていたカインが、ポソリとそう呟いた。
そして、それこそがバーントが懸念している事だったらしい。
明らかに顔色を変えた。
「やめろ、それだけするな」
「でも、姐さんきっと喜ぶよ」
何故バーントがそこまで嫌がるのかイマイチわかっていないマツリは本気でそう尋ねた。するとバーントが少し疲れた声でそれとなく理由を説明する。
「まつり、おまえはおれにしりにしかれろっていうのか?」
「今もそう変わらんだろうが」
すぐさまサンジュの冷静な指摘が加わった。
「うん。わたしも思う」
サンジュの言葉に、マツリも賛成した。彼女に至っては、真摯に肯定したつもりだった。
「・・・おまえたち・・・」
「嘘だよ」
声が少しだけ低くなってきたところで、ルイが笑った。
「・・・・・」
子供故だろうか。
これだけで、バーントはかなりの体力を消耗したような気がしてならなかった。
「マツリ、昼寝するから付き合え」
「え、あ、うん」
やはり、相手がバーントだからなのか、マツリも他の者達とは違いあまり気軽に抱きしめたり褒め言葉を言うことはできないでいた。
近くの木陰で、マツリは昼寝をするバーントに膝を貸した。
いつものように帽子で顔を隠すと、瞬く間に彼は夢の国へ旅立ってしまった。
「・・・ほんと、姐さんに見せてあげたかったな・・・」
幼いバーントの体温を布越しに感じつつ、マツリはずっと同じ事を考えていた。
恋人のこんなに愛らしい姿を見れば、きっとマリンデ―ルは喜ぶに違いない。確かに、からかう事もあるだろうが、それでも、幸せな気持ちにはなれると思うのだ。
自分でも、仲間達の幼い姿を見るたびに幸せな気持ちになる。この気持ちを、尊敬するマリンデールにも見せてあげたいものだ。
それからあることを思いついた。
姿を見せることが無理ならば、せめて手紙で報告をしよう。
そして、この話で二人が持ち上がるといい。
それはすべて、マツリの心からの善意から来たものである。しかし、もしもバーントがこのことを聞いていたなら、必死になって止めていたに違いない。
だが、幸か不幸か、この時バーントはまったく気づかずにただ健やかな眠りについていた。
「コウヤもコウヤだったが、バーントもバーントだな」
「うん」
いつものようにサンジュとの稽古を終えて戻ってきたカインが、マツリの隣に腰を降ろしながら笑った。
その後、サンジュ、ルイ、コウヤ、二―ルもその輪に加わって、全員で眠っているバーントを見つめ続けた。
―――バーントが目を覚ましたのはすでに日も暮れかかった頃で。仲間達が全員集まって自分を見ていたことを知るや否や、先日のサンジュ達のようにコウヤの後ろに隠れてしまった。しっかり夕食は食べたものの、今朝の余裕がなくなっていたことは、言うまでもない―――




