69羽:ムスメの夢と、俺の賭け
2016年1月16日
眠気が顔を覆いつくし、白く透き通った顔にストーブの灯りが柔らかく灯し頬をピンク色に染め上げ、ムスメは抱きついてきた。
腰痛の癒えない俺には支えがたく、上から包み込むようにして、
「ゴメン。パパ、まだ腰が痛いから良くなったらちゃんとギュッとするね。」
と伝え抱きしめた。
ムスメは上目遣いに相槌を打ちながら呟いた。
「パパ、テレビにでたい。」
2ヶ月前唐突に聞いてきたことがあった。
「パパ~、テレビに出たらどうやってオウチに帰ってくるの?」
「ん?テレビに出たら、そのまま宿に泊まるか、飛行機で帰ってくるしかないよなぁ。テレビにでたいの?」
「ん~。うん」
11月中旬、テレビは歌謡祭真っ盛りで、アイドルやらミュージシャンが謳歌していた。
ちなみにムスメは『きゃりーぱみゅぱみゅ』の大のファンでもあり、2歳でライブデビューしていた。
2歳時。
七夕の短冊に、
「きゃりーといっしょにおどれますように。」
と書き記した。
ここでは記せない『奇跡』が起き、短冊記載3ヶ月後ライブデビューを果たした。キュウリ、ありがとう。
そんなことも相まってだろうか。
ムスメは歌う、踊る、意味は分からないが、どこでも、1人で踊る。
音楽がロックだろうが、ポップだろうが関係ない。
夕飯を食べている時さえ、頭は縦に揺れ続ける事もしばしば。
そうして、出てきた、
「パパ~、テレビに出たらどうやってオウチに帰ってくるの?」
の話だろう。
あの時は、そんなに考えなかった。
しかし、2ヶ月経った今、またテレビに出たいと発言を繰り返す。
「どんなテレビに出たいの?どんな歌を唄いたいの?どんなアイドルになりたいの?」
具体的な内容を知りたく、俺は執拗に質問攻めにする。
沈黙するムスメ。
そして、絞り出た超具体的な回答。
「んー。神楽ちゃん。みたいな。神楽ちゃん。」
『神楽ちゃん』とは。
空知英秋さん作の少年漫画『銀魂』に登場する人物で、ヒロインである。
アニメでの声優は、釘宮理恵さん。
万事屋に住み込み働く、宇宙最強を誇る絶滅寸前の戦闘種族・夜兎族の生き残りの少女。その肩書きに違わず、万事屋の中でもすば抜けて戦闘力が高い。また、ジャンプ史上初の「ゲロを吐いたヒロイン」であり、時に「ゲロイン」と揶揄されることもある。
一人称は「私」。
セミロングの髪を両サイドで纏めてズンボラ星人のペ○スケースで団子状にしている。
普段は様々な種類のチャイナ服を着ていることが多く、“チャイナ”や“チャイナ娘”と呼ばれることがある。
普段は語尾に「~アル(カ)」や「~ネ」「~ヨ」「~ヨロシ」などをつけた胡散臭いチャイナ口調でしゃべるが、辛辣な発言をする場合などには普通に共通語や関西弁も喋る。
かわいい容姿とは裏腹に口の悪さが目立ち、ぶっきらぼうで態度が大きく、自己中心的で型破りな性格。
その一方、定春を含むかわいい動物の面倒を見ることを好み(そのためか動物からも好かれる)、赤ん坊に自ら母乳を与えようとするなど、母性的な面も強く、優しい一面を持っている。
また、年齢の割に大人びた発言や、さばけた言動が多いが、かわいらしい傘を差したがったり、ゴキブリが大の苦手であったり、バレンタインで恥ずかしがってチョコを渡せなかったりと、年頃の少女らしい部分もある。
銀時の言葉を鵜呑みにしたり、何事でも積極的に参加しようとしたりする(美容の大敵である行為は除く)など年齢よりも幼く無邪気な面を見せることもある。
「魂っ子」にさせてしまった俺の責任だ。
「ほら、『カードキャプターさくら』のさくらちゃんとか、プリキュアとかは?」
慌てて他のアニメで提案をする。
「んー、そんなに強くないし、そんなに優しくないし、そんなに可愛くないもん。」
ムスメは至って真面目に答える。
「いや~、大分『さくらちゃん』は好きだろう。」
内心で、応答する。
「そうか、だったら、声優目指すか?」
思いもしない発想を自分で提案してみた。
「厳しいぞー。今は有り触れてるからなぁ。でも20年後なら、またチャンス来るだろうから。20年で輪廻する世の中だからな。」
続けて、自分を肯定するように賭けてみたくなった。
「うん♪がんばる♪」
快答だった。
さて、問題は山積みだ。
まずは、声優学校に入学か、それとも、幼児用の役者を目指す事務所のオーディションを叩くべきか。
今ほど『情報』が欲しいと思った事は無い。
ムスメの馳せる夢に、俺は賭けてみる。




