63羽:寄生獣
2016年1月10日
「ママ〜頭踏んだらダメだよ〜。」
突然ムスメがダンナを制する。
昨夕からダンナの実家に帰省している。
年始の挨拶という訳で。
祖母宅にて挨拶を済ませ、行きつけの神社へ。
約1400年に設立された神社。
正月シーズンが終わったからだろうか。
俺らを合わせても3組しかいない。
社務所は閉まっている。
お堂も閉店ガラガラ。
更には、賽銭箱さえも見当たらない。
鈴だけがぶら下がり、風が境内を通り抜ける音さえ聞こえ、物静かさを醸し出しすぎている。
「こんなんで願い事が叶うのかよぉ。」
顔を3人見合わせて不思議がる。
お堂の隙間からダンナが見つけた。
賽銭箱はお堂の中で身を潜めていたのだ。
拳一つ入る隙間から、賽銭箱に向けて銭投げを開始。
ダンナは完投し、全てストライクで三振を取る。
俺は5枚中1枚を外し、フォアボール。
ムスメは5円玉1枚を、的外れに超外しデッドボール。
ダンナとムスメはニ礼ニ拍手一礼をし損びれてやり直した。
今年の願いは家族で叶わないだろう。
本日は成人式。
なのに、神社を閉めるとは。
経営の意図が読めない。
祈願できたかどうか分からない参拝を終え帰路に着く。
挨拶と同時にお年玉の回収を納めたムスメ。
今時のお年玉は一昔前と金額の桁が違いすぎる。
「一番のお金持ち〜♪」
喜ぶムスメ。
まんざら嘘でもない。
生まれた時から手を出さずに、保存に保存を重ね寝かせている。
ここダンナの実家もまた、保存に至れり尽くせりの古民家。
築約50年。
お客を通す為の正面玄関があるにも関わらず、俺らは台所横の土間から家に上がる。
敷居を跨いで土間へ。
長式台を経て居間へ。
奥には座敷が二間。寝室が三間。
正面玄関からは上り框を経て客間へ。
玄関は何人分の靴が並べられるのだろう。
とてつもなく広い玄関。
客室は10畳間。
これが二つも並ぶ。
荘厳な客室。
天井の梁は現代の家では再現できないほど一本木がず太く、部屋部屋を渡り、煤で燻かされ年代を感じる。
大黒柱も同様に一本木。あり得ない程の太さと存在感、威圧感。
というか、このダンナの実家は完全なる遺産だ。
建築マニアの弟が見たら感涙するだろう。
「ママ〜頭踏んだらダメだよ〜。」
頭とは敷居の事。
俺が小さい頃から敷居は頭だと祖母から教えられ、半年以上前にムスメに1度だけ教えたことがある。
「頭を踏むと自分の頭も、家の頭も馬鹿になるよ。」
と、家屋の保存も含め軽く窘めただけなのに、よく覚えてたな。
敷居は跨ぐ。
最近敷居を踏み倒して遊ぶ子供達を見たことがある。
親の顔が見てぇ。
一喝したくなる。
ここ第二の実家の敷居を初めて跨いだ日。まぁ、結婚の挨拶をしに初めて来た日でもある。
ダンナの父は拳を丸め、テーブルにそれを叩きつけながら待っていた。
今にも跳びかからんという体勢だった。
当然だろう。突然ダンナを奪いに参上したのだから。
正直、1、2発の覚悟はあった。
しかし、殴られもせず、普通に事は進んだ。
今でも鮮明に覚えている。
正直、生きている内で一番怖かった出来事だから。
それもまた思い出。
今では支援され、この「家屋」からも愛されるようになった。
守っていこう。
そして強くなろう。
それまでは、いや、いつまでも、寄生します。




