第6話 俺、メイドもらいました。さて、どうしましょう?
怪我が完治し、ようやく退院して家に戻ってくると、金髪碧眼の少女が、メイド服のコスプレをして出迎えてきた。
「お、おかえりなしゃいませ、ごごごご主人様!」
突然のことで、訳がわからず、その後ろからやって来たフツルギに目で訴える。
「ん?」
だが、彼女は、何か用か?とでも言いたげな顔を見せる。
「...こいつ、誰だよ?」
「あぁ、そういうことか。それなら、中で話そうよ」
フツルギがそう言って、俺の部屋までトタタと歩いていく。
その後ろを謎のコスプレ少女が追いかけていく。
幽霊にコスプレ少女って、明らかになんかのフラグ立ってるよな?
そんな思いを俺は胸の内に秘め、俺は部屋に向かった。
「───という訳だ。わかったか?」
「いや、全くわからん。何?景品って」
フツルギの説明を要約すると以下のことになる。
・イシソレの都市のボスモンスター、ルナを倒したことで、景品として配送されてきた。
・攻略時のレベルが低ければ低いほど、景品のレア度が高くなる。
・このレベルとは、最近受けたヌーテントの点数によって決定される。
・俺のヌーテントでの点数はかなり低かったので、レアな金髪碧眼メイドが景品となった。
・彼女は、すでに契約書で、景品として選ばれたら、一生その人に仕えることを約束している。
・親もすでに了承済み。
ということなのだが...
「良かったな一記。ヌーテントでの点数が低くて」
フツルギが肩をバンバンと叩く。
「だがな、一記。この娘、もともと、隠れ奴隷売買で売られていたところを救出された身で、名前がない。お前が名前をつけてやれ」
「荷が重すぎるよっ!!?」
俺がそう叫ぶと、彼女はびくりと肩を震わせる。
「あ、一記、女の子には優しくしろよ?」
フツルギが少女とうまく連携して一記を追撃する。
「わかってるよ...そうか、名前、なぁ......」
「あ、あのっ!」
不意に、金髪碧眼美少女メイドが俺に声をかける。
「ん?」
「ご主人様、その、と、トイレを貸してもらっても...」
「行ってらっしゃい」
俺はそう適当に告げて、名前を考え始める。
(小動物みたいだし、ミニーってのはどうだろうか?)
(いや、それはさすがにやめたほうが...)
(なら、金髪碧眼美少女の定番、アリスっていうのは?)
(アリス...アリスかぁ)
(確かに、彼女は不思議な雰囲気がそことなく出ていてそれらしいしなぁ...)
(決めた、アリスにしよう)
ちょうど、頭のなかの会議が終わった頃、彼女が部屋に戻ってきた。
「名前、決まったよ」
「ほ、本当ですか!?」
彼女は俺の前で正座をして、発表を待つ。
「お前の名前は、今日から」
「あ、少し待ってください、心の準備が...」
アリス(仮)はそう言うと、顔を手で打ち、真剣な表情をとる。
「...お願いします」
彼女がそう言って、先を促す。
俺はうなずき、発表する。
「今日から、お前の名前は、アリス!」
長い沈黙。
あれ、もしかしてまずったか?
そう思い出したとき、彼女の肩がプルプルと震えだし、涙がこぼれる。
「え?俺、なんかしたか?」
「いいえ...」
そんな俺の言葉は、彼女に否定され、こう続けられた。
「とっても、嬉しいです、ご主人様!」
そう言うと、彼女は俺に抱きつき、涙を流した。
どうやら、俺の心配は杞憂で終わったようだった。
こうして、俺の家にメイド、アリスがやって来たのであった。
アリス
性別 : 女
身長 : 150cm
年齢 : 不詳
元奴隷の金髪碧眼美少女メイド。
マスターは一記。
家事全般得意という理由で、親が許可した。
景品としてここにいるため、タダ働き。
彼女はそれを苦とは思っていない。
理由は不明。