第4話 俺、決意しました。さて、どうしましょう?
魔王討伐の真実を知った俺だったが、力がそれで得られるならと、フツルギのスパルタ教育は受け続ける事にした。
「────''jisqca marniram''!」
(魔法言語訳:───消化する火球!)
俺は、山に向かってジスカ・マーニラムを放ち(?)、しかし、また失敗して発動しなかったことにため息をつく。
「こっちの方がため息つきたいわ.........はぁ。一記、いい加減にこのくらい、ちゃんと出来るようになってよ。お願いだから。はい、1697回目!」
今日も彼女のスパルタ教育は続く。
「───''jisqca marniram''!」
また失敗した。
そのとき、フツルギは何かに気が付いたように手を打つ。
「そうか、魔力が足りないんだ、これ」
初歩的なミスである。
「通りでいくらやっても発動しないわけだ...一記、これからあなたにあるところに一人で行って帰ってきてもらう」
彼女は右手をなにやら動かすと、目の前に一振りの刀が現れた。
「これは?」
「絶対に壊れない刀よ」
彼女はそう嘯いて、それをわたす。
「じゃあどうやって加工したんだよ、それ」
というもっともな疑問をぶつけると、
「は?おまえ、比喩も分からないのか?絶対に壊れないって言って良いほど壊れにくい刀ってことだよモヤシ」
「モヤシモヤシうるさいな、傷つくだろ!?」
「あえてそうしているのよ、それくらい気づきなさい、この駄人」
俺はその刀を受けとると、彼女に聞く姿勢を見せる。
「それで、行ってもらいたいところなんだけど、天空都市ってわかるかな?」
フツルギは、そう言いながら人差し指を上に向ける。
「天空都市...って、マチュピチュのことか?」
「違う違う」
俺が直ぐに思い付いたものを挙げると、フツルギはちっちっちっとか可愛らしい舌打ちをして即否定する。
「じゃあどこだよ?」
俺は怪訝そうな表情で聞く。
「イシソレの都市よ」
......どこだよそれ!?
まず第一印象がそれだった。
「イシソレの都市には、人工的に作り上げられた、訓練用迷宮都市で、土台がナヌネフトで作り上げられているから、常に宙を浮いているの」
さらに怪訝そうな顔を見せる俺に、いい加減にしろというかのようにため息をつき、続ける。
「そこには、倒すと保有魔力量が上昇するモンスターがいるの。確か名前は『ルナ』だったかな。ヒトガタのモンスターで、そのダンジョンのボスモンスターね。未だに倒せた人は、私の姉と、私、そして米軍の大佐、露軍の兵団全員くらいかな。ああ、あとレリファとかいう迷宮踏破者もいたっけ」
迷宮踏破者。
ある迷宮のボスモンスターを倒した経験を持つ、迷宮探索者。
レリファといえば、彼は、多くの迷宮を踏破し、一人で一国の軍艦三隻分の戦力を持つことで有名な迷宮踏破者だ。
彼女の話から分かったように、フツルギとその姉である、通称魔王はそれほどにも強いらしい。
「それを、俺に攻略しろと?そして、その『ルナ』とかいうやつを倒して保有魔力量を上げてこいと?ざけんなよ!!?」
「だから一記はいつまでたってもモヤシなんだよ、なめられるんだよ!!」
ぐぅのねもでない。だってさ、
「お前に言われちゃしゃーねーだろうがぁぁぁぁぁぁ──っ!!」
俺は真っ昼間に天に向かって叫んだ。
言うまでもなく、周囲の視線や嘲笑を大量に浴びたことは、想像に難くない。
俺はその日、イシソレの都市に向かうことを、決断せざるを得なくなった。
最近突っ込み要素と『あっそ。』要素が多いような気がするのですが、楽しんでもらえていたら嬉しいです。
「これ、主人公幽霊にする意味あるの?」とか聞かれたら、俺はもちろん、
関 係 あ り ま す !!
って答えますけれどね。