第1話 俺、思い出しました。さて、物語を始めよう。
その日、俺にある手紙が届いた。
それが、全ての始まりだった。
俺は、当時あまり魔法が強くなかった。
ヌーテントでは毎回学年最下位で、毎日クラスの奴等にバカにされ続けていた。
こんな日々が続くのであればと、俺は自害をも試そうかとすら考えていたその時だったのである。
その手紙には、こう書かれていた。
『力が欲しいか?
そして、その力で、お前をバカにした奴等を見返したいか?
もし、お前がそう考えるのであれば、この地図に示されたところに来い。
お前に力をやろう』
俺は、その手紙に書かれていることに、望みをかけた。
力が、欲しかったのだ。
俺は、直ぐに準備を整えると、自転車を引っ張り出して、地図に示された場所へ向かって走っていった。
雪が降っていた。
何度か車輪を滑らせかけたが、ようやく俺は目的の場所についた。
そこは、今はもう、使われてはいない無人の倉庫だった。
俺は、その重い扉を苦労してなんとか自分が入れる大きさまで開けると、中に入っていった。
扉は錆び付いていて、その錆びが俺の手に付着していたのにも気にせず、その倉庫の中を進む。
真ん中辺りに、一人の女の子が、虫食いだらけの赤いソファーに腰を下ろしていた。
彼女の髪は、透き通るような銀髪で、肌が白かった。
いわゆるアルビノだった。
普通と違うのは、その格好と、左右色の違う瞳、オッドアイと、そのソファーに立て掛けてある、死神を連想させるような大きな鎌だった。
俺は、彼女が送ったのであろう、例の手紙を見せ、こう切り出した。
「お前が、この手紙の送り主か?」
「そうよ?」
透き通るような、はたまた、鈴の音のような、そんな綺麗な声が、彼女の口から肯定の言葉が紡がれる。
「力、欲しい?」
彼女が、俺の要件についての起句を紡ぐ。
「力を、くれ」
俺は短く、要件を言う。
「じゃあ、私と契約しましょ?そしたら、力をあげてもいいよ」
一瞬の沈黙。
「契約の内容は簡単。私があなたに力を与える代わりに、あなたは私に精気を分け与える。ついでにある人を殺してもらう。ね?お互い、利にかなってると思うでしょ?」
「ある人?」
「...私たち幽霊と人間、共通の敵。魔王よ」
魔王...。
2238年代に、突如現れた、大魔導師であり、モンスターを作り上げ、それらを操り、世界中にテロを起こしている、世界最大の敵。
「......わかった、契約を受け入れる。俺の名前は一記だ。よろしく」
俺は、少し悩んで、それでも力が手に入るならと、その契約を受け入れた。
「私はフツルギよ。よろしくね、一記」
そうして、俺とフツルギの、世界最強(凶)の敵を討つ物語が幕をあげた。