津波到達~山田編~
2019/12/1
2:30頃
研究者であり普段から考える事に慣れていた山田は
いままで経験のしたことがないくらい頭をフル回転させていた。
豊洲にある研究所は大丈夫だろうか?
自分の備えは十分だが他の家は大丈夫だろうか?
東京がこんな状況になって日本は大丈夫なのか?
海抜が低い所が多い東京で津波はどこまで到達してしまうのだろうか?
もしかして地震で地盤が下がってしまっているのではないか?
2011年の東日本大震災ではどんな事が起きていたか?
と、考えていた時に電気が消えた。
マンションに備え付けられた非常用電源が切れたのであった。
「切れたか・・・」
電気が消えて急に寒くなる部屋
なぜだか外に灯りが見える
「ヘリコプターか、なんでこんなに?」
寒空の中、ベランダに出て周りを見渡すと
ほとんどのヘリコプターがライトを南の方角に向けていた。
一部は周りを旋回し周辺の状況を確認しているような動きをしていた。
「火事の現場でも報道番組が撮っているのか?」
そんな事を思いつつ強い眠気に誘われたため
ベットに倒れ、ヘッドフォンをし好きな曲を聞きながら眠りに入った。
ズドドドドド
ズドドドドドドド
ズドドドドドドドドドド
まだ眠りも浅い中、振動に気がつき目を覚ます。
「また地震か?」
何か感覚が違う・・・
ドドド
ズドドド
何かがマンションを叩いている感覚だった。
また嫌な予感がし外を見る。
空にはまだヘリコプターがいて周辺を照らしていた。
だが、照らしている方向がこちらに向いているのに違和感があった。
ふと下を見ると蠢く物体がそこらじゅうにあった。
「なんだこれは?」
まだ夜であり、しかも曇っている事
停電しているため灯りが無い事
部屋が30階である事などの条件が重なり下の様子がわからない。
「少し下がってみるか」
様子を確認するために下の階に降りる事にした。
下の階に降りるために廊下に出ると同じ階の住人であろう女性が下を眺めていた。
「こんばんわ、下の様子わかります?」
と、山田が女性に聞くと
「いや、わからないです・・・だけど嫌な予感しかしませんね・・・」
「ですよね・・・」
予想通りの回答が帰ってきた。
「自分は下に状況を確認しに行ってきます」
「私も連れて行ってください」
そんなやりとりをしつつ地上を目指していった。
下の階に行くにつれ他の住人にも会いだんだんと状況をつかめてきた。
「津波がここまで到達しているというのか・・・」
そんな信じられない状況を下の階に近づくにつれ、音で感じることが出来た。
いたる所から聞こえる悲鳴やサイレン
物が当たる音
水に物が落ちた時に発する音
3階2階から降りようとした時には水が迫っていて
自分たちはそれ以上降りることを断念した。
「まさかここまでとは・・・」
「ですね~この後どうなっちゃうんでしょう?」
「救助が来るまで部屋で大人しくした方が良さそうですね・・・」
「救助すぐ来ますかね?」
「被害が広範囲なのであまり期待しない方がいいと思いますよ・・・」
「そんなぁ~・・・いいダイエットになるか・・・」
「備えはないんですか?」
「野菜とかお米はあるんですが電気がなくて・・・」
「確かに・・・よければ災害用品の食料をお分けしますよ」
「本当ですか!?お願いします!!」
こんなやりとりをし、山田達は30階に戻るのであった。