地震発生後~聡編2~
「まじかよ・・・」
水元公園に避難しつつ、家の状況を確認しにいく道中
なじみの定食屋の前で定食屋の奥さんが泣き崩れている。
家から逃げる時もそうだが、道中で同じような人を何人か見ては
見なかったことにし、通り過ぎていた。
「さすがにここは無視できない」
と、定食屋の店先にいる奥さんに状況を聞いた。
「どうした、おばさん!俺だよ!」
奥さんは聡の言葉に気が付き、聡の方を向き現状を説明する
「主人が大事なものを取りに行くって戻ってしまって、全然戻ってこないの!」
火はすでに店舗兼住宅の3分の1を包んでいる。
あの元気な親父さんがすぐに戻ってこないとなると、中で倒れているのかもしれない
「いくか・・・!」
気合いを入れ、親父さんの救出に向かう
見慣れた店舗の奥にある階段は黒い煙に覆われていた。
煙をよけるために低い姿勢で階段を上がっていく
「あつい・・・」
階段を上がるたびに熱気が強くなってくる
気力を振り絞り2階へ向かう
なんとか2階へ上がることができた
と、安心しつつ
2階の状況を確認すると、親父さんを発見する事ができた。
やはり、倒れていた。
「親父さん!!」
「おぉ、お前か・・・煙にやられたのか、体がうまく動かせない・・・
これを取りに来たんだが、もう逃げれそうにないな・・・」
右手に位牌を持ってそう言う親父さん
だが、奥さんに親父さんを助けてって頼まれているのもあるが
心情的にも意地でも助けたいと思っている
「親父さん、少し乱暴に扱うよ」
「無理するんじゃねーよ、お前の命の方が大事だろうが!!」
体が動かないくせに口はよく動くらしく、もっともな説教をする親父さん
そんな説教を受けつつ、移動の準備をする。
背負いながら行こうと思ったが、体つきが良い親父さんの体は
力のない俺じゃ担ぐことすら出来なかった。
そんな親父さんの体を火の手がない窓際に引っ張っていく
窓を目の前にし心の中で親父さんに謝り
窓を開け叫ぶ
「いまから親父さんを落とす!!窓の下から離れてくれ!!急いで!!」
と、言いつつ渾身の力を振り絞り親父さんの体を持ち上げる
「まじかよ!!みんな避けろ!!」
知らない誰かが周りを誘導する。
親父さんの怪我が最低限で済むように足から落とし
鈍い音と共に親父さんの体が地面に衝突する。
「痛って~~~!!じゃねーか!!」
親父さんがそう叫ぶ
なんとか、生きているみたいだとほっとした途端
なぜだか急に力が抜けてきた。
「親父さんが言ってたのは、こんな感覚か・・・」
体が言うことが聞かない
そのまま俺は倒れこみ
火が燃え移る二階を見つめる
階段が燃えている
「起き上れても、俺も窓から落ちなくちゃな・・・痛いだろうな・・・」
熱が回ってきたのか至る所からガラスが割れる音や
物が落ちる音などが聞こえてくる
「天井ががたごと、言ってる・・・ここぼろいから崩れるのかな・・・」
と、考えつつ意識が遠のいていく
燃える店舗の2階で聡は気を失うのであった。