救助が来るまで~山田編~
2019/12/02
12:00頃
あれから2日目の昼が来た
まだ救助は来ない
腹は減っている感覚があるが、あまり食べる気分ではない
理由を言わなくてはいけないのであれば「この状況だから」で理解してもらうことが出来るだろう。
津波で流され、水に飲まれる人
火事で逃げるが、流される人
逃げずに煙で倒れそのまま燃えてしまう人
流されてきた家屋や車に衝突しそのまま水に飲まれる人
強力な引き波に足を取られ転び、頭を打ち起き上らない人
落とし穴と化したマンホールに吸い込まれる人
水が引いた後、家屋へ生き残った家族を救助しに行ったが家屋が崩れ潰される人
地震の揺れでベランダから落ちる人
どの人も一生懸命生きようとしていたが死んでしまった。
そんな様を俺は安全な所から見下ろしていた。
生きていていいのだろうか?という罪悪感に苛まれている。
「気持ち悪い・・・」
吐き気を感じ、トイレに向かう
トイレは水が流れないので、嘔吐した物体がそのままである。
もう何度吐いたからであろうか、胃液しか出てこない。
きっと食事をしても、すぐもどしてしまうだろう。
気晴らしに外へ出かけようにも外の方がひどい状態だ
瓦礫で道が存在しないし、魚の死骸などの匂い
まだ回収されていない死体、マンホールや地盤沈下で出来た落とし穴
2日前に戻れるなら戻りたい状況である。
「とにかく、救助を待つか・・・」
空を見ると複数のヘリコプターが救助を行っているのが見える
「みんなは、助かっているのかなぁ?」
2日前に会った自身の家族・研究所のメンバ・2日前に会った友人の小林などの顔が頭をよぎる。
そんな時、家のドアが開いた
「すいませ~ん」
「は~い?」
「昨日、お世話になった水島です!入ってもよろしいですか?」
「あぁどうぞ~」
水島さんは昨日マンションの下へ一緒に様子を見に行った女性である。
あの悲惨な状況を見ても笑顔を絶やさないのを見て少し恐怖を覚える。
「どうしました?」
「実は今マンションの方々と協力してそれぞれの部屋の状況を確認しているんですよ」
「それはいいですね」
「ありがとうございます、それで~まだ救助も来なさそうなので
みんなで協力して救助されるまで過ごそうと話している所です」
「そういう事ですか」
「山田さんも協力してくださいますよね?」
「わかりました、協力させてください」
ここで断っても現状が変わるわけでもないし
何かをする事で時間が過ぎるのが速くなるであろうと思った。
「では、とりあえずマンションの他の部屋の状況を確認するのを手伝ってください!」
「了解です」
その後は、この計画を指揮している25階の龍崎さんへ状況確認し
俺は28階と29階の全室を確認する役目を与えられた。