5 茄子ばっかり!
妙なスイッチの入った結花はスーパーの買い出しから帰ると、冷えても美味しい茄子料理から始める。
油で揚げてお出汁につける、揚げ浸し!
絞れば水が出そうな水茄子をザックリ切って湯がいて、生姜醤油に漬け込む。
細かく茄子を刻んで、お出汁でサッと煮ると、豆腐をチンしたのと白味噌と和えて、茄子の白和え!
ズッキーニ、パプリカ、茄子をオリーブオイルで炒めて、トマトの水煮缶をドバッと投入してカポナータをつくる。
麻婆茄子の下準備をした頃には夕方になっていた。
「あっ、ご飯を仕掛けなきゃ!」
炊飯器のタイマーをセットした途端、結花のスイッチが切れた。
考えたら朝から味見だけで、昼食も食べてない。
その上、料理に慣れてない結花が使った台所は悲惨な状態だ。
何個もの鍋、フライパン、ボール、が山になっている。
結花は溜め息をついて洗い物を終えた。
台所にはエアコンを付けていたが、油で揚げたりして、なんだか油臭い。
結花はまだ兄が帰ってこないだろうと、シャワーでサッと汗を流す。
そのまま、ベッドで少し休憩するつもりが、うとうと寝てしまった。
『なぁ~なぁ~! 俺ら、食べ残されるの? こんなに茄子ばっかり、誰が食べるんや?』
今度は麻婆茄子や、茄子の漬け物、カポナータに追いかけられる夢を見て、結花は目覚めた。
ジャラジャラと麻雀の音がする!
「しまった! もう、皆来てるんや!」
さっと着替えて軽く化粧すると、下に降りる。
「お兄ちゃん、もう麻雀してるん?」
座敷には南部も来ていたが、ワザと無視して兄に尋ねる。
「ああ、声を掛けたけど、寝ていたからなぁ」
チッと舌打ちしたくなったが、お客の前なので愛想笑いして、ご飯ができたら声をかけると言って台所へ急ぐ。
炊飯器にはご飯が炊けているし、味噌汁は出汁を温めて茄子を入れて炊けたら味噌を解かせば良い。
ダイニングテーブルに冷蔵庫で冷やしておいた、揚げ浸し、生姜がけ、カポナータ、白和えを並べて、真ん中にはこれから作る麻婆茄子を置くスペースを空けておく。
ビールグラスに、お箸、取り皿をセットすると、麻婆茄子を作り始める。
油をフライパンに入れて、みじん切りのニンニクを弱火で油に香りがうつるまで炒める。
挽き肉を入れて塩コショウをふると、豆板醤を鍋肌に入れて炒める。
一旦、挽き肉を取り出して、油で薄切り人参、茄子、椎茸を炒めて、挽き肉を戻した。
鶏ガラスープを入れるとピシャピシャと油が跳ねる。
少し和風に味噌を解き入れて、味見をする。
「まぁ、こんなものでしょう!
後は花山椒を少し、水解き片栗粉でとろみをつけて、仕上げに胡麻油をほんの少し!」
夢中で料理して、兄達を呼んだが、なかなか腰を上げない。
「早く食べてよ! 冷めちゃう!」
やっと麻雀の一局を終えて立ち上がった兄を結花は殴りたい気持ちだ。
『折角、作ったのに!』
その上、テーブルの上を見ての一言に結花はキレた!
「なんやぁ? 茄子ばっかりやないか!」
「お兄ちゃんは食べなくても良いわ!」
「別に作ってくれとは言ってない!」
兄弟喧嘩を南部が止めた。
「美味しそうやんか、結花ちゃん、ありがとう」
他の友達も席についたので、兄も冷蔵庫からビールを出して食べ始める。
結花は何でこんな事を自分がやっているのか馬鹿らしくなった。
水茄子の漬け物と、茄子の味噌汁、ご飯を出すと、二階の自分の部屋に入った。
「何もかも茄子のせいや!
ボケ茄子! オタンコ茄子!」
結花は自分が南部に良い格好したかったのだと気づいて、叫び出したくなる程の恥ずかしさを感じる。