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如月先輩  作者: みゅう
3.手紙
8/16

3-2 理想のプロポーズ

 風呂から上がった俺が自室に戻ると、ベッドの上にうつ伏せに寝転び、きー姉が雑誌を読んでいた。

 モコモコとしたショートパンツから伸びる長く白い足が、パタパタと上下する。

「あ、まーくん、お帰り」

 顔だけをこちらに向け、きー姉が俺を出迎える。

「ただいま」

 初めこそ、こういう事をいちいち注意していた俺だったが、今では注意しても無駄と諦めている。

 ベッドはきー姉に占領されているので、勉強机の椅子に腰掛ける。

「んふふふーん」

 何がそんなに楽しいのか鼻歌混じりだ。

 いや、この人はプライベートでは、大抵楽しそうにしているか。

「何読んでるの?」

「プロポーズ特集」

 ……聞かなきゃ良かった。

「ねぇ、まーくんはどんなプロポーズしたい?」

「どんなって言われても……」

 別にしたいプロポーズ等、俺にはない。

「私はどんなプロポーズでも、その人の一生懸命さが伝わればOKだよ」

「さいですか」

「んー」

 俺の反応が不服だったようで、きー姉が頬を膨らませてみせる。そんな仕草もまた可愛い。

「大体、プロポーズなんて、まだ先の話過ぎて実感沸かないって」

「そんな事ないわよ。まーくんも後二年もすれば、結婚出来る年齢になるわけだし」

「なんか夕方と言ってる事違わない?」

「そうだっけ?」

 ま、いいけどさ。

「とにかく、今からどういうプロポーズをするか考えておいて損はないわけ。なので、今の内に練習しておきましょう」

 なるほど。この流れに持っていきたかったわけか。おそらく、プロポーズ特集を読んでいたのも偶然ではなく、ここまで持ってくるための布石だったのだろう。

「さぁ、どうぞ」

 ベッドの上に正座をし、何かを待つきー姉。

「いや、言わないから」

「えー? なんで?」

「だって、別にしたいプロポーズとかないし」

「そうじゃないでしょ。したいしたくないじゃなくて、いつかするの!」

 怒られてしまった。俺が悪いのか?

「はい。じゃあ、気を取り直して」

「はぁー」

 こうなったら仕方ない。きー姉のお遊びに少し付き合ってやるか。

 こほん、と一つ咳払いをし――

「結婚して下さい」

 きー姉の目を見てそう宣言する。

「――!」

 俺の言葉に、きー姉が衝撃を受けたようにその場で身悶える。自分で要求したくせに、オーバーな。

「いい。いいけど、ストレート過ぎるわね。プロポーズは一生に一度の大切な物なのよ。もっと気持ち込めて」

 うわぁ。面倒くさ。だけど、言わないと終わらないしな。

「年下で頼りない俺だけど、これからはいつも側で支えて欲しい。結婚しよ」

「……はい」

 今度は神妙な面持ちでゆっくりと頷くきー姉。何とも言えない空気が室内に流れる。

「いやいやいやいや」

 その空気に呑み込まれそうになり、慌てて雰囲気を絶ち切る。

「練習だから。遊びだから」

「遊びでもいい。結婚して下さい」

「いや、それ、意味違ってくるから」

 どこのイケメンだ、俺は。

「はっ。それとも、まーくんにはすでに心に決めた人が……」

「いないから」

 即答する。

「じゃあ――」

「はい。終了。この遊びはここで終わり」

「えー」

 不満げな声を挙げるきー姉だったが、この辺で終っておかないと、とてもじゃないが俺の精神が持たない。

 もちろん、悪ふざけだという事は重々承知しているが、だからと言ってドキマギしないかと言うとそうではない。しかも、今のきー姉は風呂上がりでパジャマ姿。意識するなという方が無理な話だ。

「ん? どうかした?」

「……どうもしない」

 せめてもの救いは、意外にもその威力に当の本人が気付いていない事か。

「ねぇ、このままここで寝ていい?」

「ダメです」

「ちぇー」

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