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場面.4 望んではいないことだろうけど。と俺は貴女に言った。






 『・・・シャールの言った事当たりましたね。』

 『褒めるなって、サラ。』

 『褒めてないですよ。

  子どもを裏に染める手伝いは、あの二人だけで十分です。』

 『ありゃ能力上仕方ないだろうし。

  そう言う意味じゃ、アルト君も変わらない。』

『はいはい、むしろ、アレの欠片を持っている以上危ないんでしょ?

  《凍れるフリージング予見者・シーヤー》の悪名躍如と言うところでしょうか?』

 俺が、リーチェの復讐をしたいと言った時、台詞ほど呆れた調子ではなく、『ああ、そうなったか、』的な締念混じりにそう言われた。

 十中八九、間に合わないか、あの結末になると、そうしたら俺がそう言うだろうと、予測していたのだろう。

 シャー兄は、特に、複数系統の能力に目覚めてたしね。

 俺のは、無理矢理やるなら、念力系だし、瞬間移動も、念力系だ。

 モノを凍らせるのも、念力系なのに、シャー兄は、予知系の能力も持ってたんだ。

 ともかく、リーチェの実質的な死・・・・・・精神の死が、俺を《マジスタ》と呼ばれるほどの、クラッカーにのし上げた。

 そう言ってもウソじゃないくらいの大きなキッカケだった。







       望んでは居ない事だろうけど。と俺は貴女に言った。







 正直ね、それまで俺は、かわいげのないと言うか。

 良く言えば、大人びた子どもだったように思う。教師受けはいいけど、ってやつ。

 すぐ上の兄も、三つ違いだし。

 その上の姉は、五つ違いで、一番上の姉貴に至っては、十歳ほど年齢が違う。

 おまけに、兄も、下の姉も、上の姉の婚約者も、暴走族チームになんかに居たから、頻繁ではなかったが、チームの人を連れてくる事も、珍しくはなかった。

 その強面お兄さんとかに、遊んでもらった事もあるし。

 幼等部も、年少組年中組年長組の途中からしか通わなかったし。

 周りに、年上の人間が居ることが多かったせいもある。

 それに、今は行方不明だけど、アンドレッセンや、今は殺されてしまったけど、エリスやレイティスに、色々と教えてもらった事も関係しているのかもしれない。

 アンドレッセンには、基本的な体術・・・本当に、ガキ向けのを教えてもらった。

 その彼は、8年前から、行方不明なのだけれど。

 エリスやレイティスには、パソコンの楽しさを教えてもらった。

 その彼らは、6年前と3年前に、時国宗留に殺された。

 だけど、三年ほど前に、あの決断を下せたのは、関わって来た年上が、そうすべきだと教えてくれた。

 ・・・・・・リーチェは、決して望まないのかもしれない。

 ステファノティスー『清らかな祈り』の言葉を持つ花の名前を持った彼女の願いでないのかもしれなくても、だからこそ、成し遂げたいことだった。

 彼女の死が、キッカケで覚醒した能力はあいにく、情報収集に特化したモノではなかった。

 まぁ、使い方次第ではあったけど。

 あと、ディス姉ぇは、何も言わなかったけど、黎夜をくれたっていうか譲ってくれた。

 ・・・・・・止めるでもないけど、手を汚して欲しくはないと言うように。

 このデキゴトの少し後に、師匠役としてついた《エータ・ミレアム》には、『人間リニモ?』と言われた。

 あ、うん、あの《エータミレアム》。

 ディス姉に、歪みまくったと言うかひねくれまくった愛情を持っていた人。

 まぁ、情報屋としては、超一流だった。

 ディス姉はさ、どっちかというと運び屋系の仕事だったしね。

 ・・・・・・・で、リーチェの仇っていうか、あの研究所の出資者を捜して、小さいところから、ていうか、片っ端から潰していった。

 サラ兄たちも、手伝ってくれはしたね。

 あと、潰すと言っても、金銭的に立ち行かなくしたり、社長さんとかの重役の家族を人質にして、自殺を迫ったり、あとは、会社のデータを全部クラッシュさせたり。

 社屋ごと、壊したり。

 そんな感じ、直接、殺したのは少ないよ。

 えげつないって言わないでね。

 ああいう研究の出資をしていたんだし、覚悟はしてるでしょ?

 人に酷い事をするときは、される覚悟無しに、するもんじゃないと思うよ。

 あの研究所、リーチェ以外にも、年間十人ぐらいの死亡者を出すスパンで、研究をやってたみたい。

そんなに大きくない研究所でだよ?

せいぜいが、九部屋しかない三階建ての2LDKアパートと同じ床面積の地下が二階分のそんな面積の研究所で、年間十人・・・常時二十数人を犠牲にしてたんだ。

ともかく、順々に出資した会社を潰していった。

少なくとも、俺は、手を汚してないなかった。

手をかけなくてはいけない時でも、黎夜が、やってくれた。

・・・・・・・ディス姉ぇには、悪いけど、最後の【Amazing Earth】社の社長だけは、自分の手でやるつもりだった。

だって、ショックだよ。

好きなゲームだったけど、結局リーチェが登録したのも、あるいみ箱庭で実験させる為でしょ?

外に近い環境でのデータとる為に。

 最初から、ああ言う幕切れだってのは、決まってたみたい。

 ゲーム内の噂と言うか、都市伝説的なのに、消える予定も気もない人が突然登録削除するっていうの。

 あれって、あの研究のモルモット・・・リーチェも含めてね、それが原因なんだもん。

 んで、現実で、【Amazing Earth】社の室に忍び込んで、ヴィルと対峙したんだっけね。

 そん時だよね、ヴィルの本名が、ミカル=エイセルだってこと知ったの。

 会長名も、マイケル=エインセルって、英語系の感じだったしね。

「初めまして、【Amazing Earth】社・社長、マイケル=エインセル様。

 縁もゆかりもないですが、死んでいただきますので、悪しからず。」

「悪しからずってったってね。

 そう言われて、殺される人はいないだろうし。

 抵抗ぐらいさせてもらうからね。」

 ってのが、初めての言葉で、そのあと、金髪碧眼の30歳ぐらいの人が、いきなり、十代の外見に縮んだのは、びっくりしたね。

 『戦うのに、余計な能力使ってられませんから。』っていわれてもな。

 普通、小さくなれば、驚くし、その上あの攻撃方法だぞ?

 俺が、景気付けもかねて、力をその部屋の床に叩き付けて、波のようにしてから、そいつに向かわせた。

 水が噴き出すのが一番絵的に近いか。

 重力を床にぶつけて、波立たせるのにあわせてコンクリも波打ってるって奴。

 ・・・・・・・でもさ、避けるか、力ぶつけて相殺するかなら、解るよ。

 でもさ、社長サンがしたのは、自分の腕を思い切り切り裂いて、吹き出す血を壁になるように腕を横薙ぎにしたわけ。

 それで、止まんだよ。

 本気じゃないし、目覚めたばっかの能力だったっても、それなりに力込めたのを血の壁で止めるんだよ。

「さて、短期決戦しないと、貧血になってしまいそうですからね。」

 そう言いながら、笑顔でにじり寄って来て、尚かつそいつが十代で血塗れだったら驚くだろう。

 っていうか、正直怖かったぞ。

 んで、それからしばらくは、防戦のみだった。

 というか、思い切り動揺して、攻撃に移れないと言うのもある、

 こら、ヴィル爆笑するな。お前が原因だろうが。

 スプラッタ映画の新鮮ゾンビみたいな様相で襲ってくれば、誰だって驚く。

 っていうか、驚かないヤツの神経は、極太のナイロンザイルで出来てると言い切っても良い。

 それくらいだった。

 当然、何叫んでるかまでは自分も意識していなかった。

「・・・・・・・ベリューシオン研究所って、××××のベリューシオン研究所のことですよね。」

「ちょっと、待って。それは、会社としては関わってないよ。

 というか、まず、お話聞いてくれない?」

「・・・・・・・・ちょっとした実験だったんですって。

 《御伽噺》関連の。」

 とか言われて、最後の一言で、やっと止まれた。

 あ、実験云々ってトコじゃなくて、《御伽噺》ってとこね。

 でなきゃ、のど元を持って来たナイフで切り裂いてるところだった。

 詳しく話を聞けば、【Amazing Earth】の社長が、《運命演算三姉妹長女》で、現《賢き愚者》の息子で、ダンピールで。

 その自分が生まれた経緯も、800年前の《歌乙女》に似ているからと買われた母親が身ごもったせいで。

 身代わり・・・・・本人じゃなくても、そう言うこと出来るモノなのか解らなかったから、そう言う系統の研究所に、手当り次第に出資していた事。

 で、たまたま、その研究所が、多かっただけで。

 尚かつ、数多い出資者の中で、偶然多かったのも、そうであってそれ以上でなくて。








「・・・・・・・・・・で、今はこうして、友人やってるわけだ。」

「運命ってのは、解らないね。

 『過去』の積み重ねであっても。」

 誤摩化されてやるモノかとも思ったけれど。

 でも、実際に、あれからすぐではないけど、知人になって、友人になっていったんだ。

 あ、ちゃんと、【Amazing Earth】のゲーム内で、色々とアイテムを融通してもらったけどね。

 それから、《夢幻師》なんていう合成が好きな人用の販売系もやったりした。

 戦闘系ばっかだったから、結構あれは新鮮だった。

 ともかく、『過去』が『積み重な』って今ここに居るってことだけが、現実なんだし。






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