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場面.2  笑って欲しいと、俺は貴方に言った。  





 それから、冬休みが終わって、学年末テストとか卒業式の練習が始まった頃だったかな。

義理の兄・・・一番上のファラン姉ぇの婚約者のそのアニキにこう言われた。

『裏の方にもう少し深く嵌らない?

 クラッカーとして、その分析力と激情は、一流の条件だと思うけど?

 あ、下衆なCじゃなくて、Kのほうだよ、Cとしても一流になれると思うけどね。』

 一応、とはつくけど、当時、中坊を誘うなって、正直思った。

 サラ兄とシャー兄は、二人揃えば、人間どころか戦艦を相手に出来るほどだった。

 裏じゃ、結構すごかったらしい。

 だから、かな・・・解っていたのかもしれない、俺が、裏稼業に染まるってことをさ。

 それでも、その頃は全然考えていなかったけれど。

 ・・・・・・・・・もう少し考えれば、何変わっていたのかな。



「よう、ラビ。」

「遅かったな、ヴィル。」

「言うなって。

 で、あれからどうなったんだ。」

「あれからは・・・・」

 ヴィルが少し遅れて、やって来て。

 料理を頼み、それが出揃う頃、また話し始めた。

 あの頃は、まだ楽しかった。

 すごくすごくね、永遠を願ってしまうぐらいに楽しかった。





   場面.2   笑って欲しいと、俺は貴方に言った。  





「久しぶり、ラビ。」

「あ、確かにね。一月、振りだっけね。

 元気にしてた?」

「うん、元気よ。

 ちょっと、検査ばっかでうんざりしかけてたけど。」

「・・・・検査?」

「あ、うん、検査。」

 一ヶ月近く、リーチェと顔を合わせなかった時だ。

 その前も、一週間近くとか、顔を見せない時があったけど、そこまで空くのは珍しいと思ったんだ。

 ・・・・・・あ、ネットゲームだから、時間合わない時もあるとか思わないでね。

 ちょうどその頃だったかな?

 双子の妹が誘拐されたの。

 そう、一学年下のね、誕生日数日違うだけで学年も違うんだもん。

 ちょっと脱線するけど、俺たち姉弟は、全員地元のエスカレータ式の学園に通ってんの。

 一番上のファラン姉さんは、外の大学を受けたらしいけどね。

 初等部から中等部、中等部から高等部は、もちろん、制服が変わるんだ。

 二学期の終わりに、採寸して、一月の終わりぐらいからに指定された店に、取りにいくシステムだったんだ。

 でも、ここ数年で、それも変わったね。

 今じゃ、校舎内で、受け渡しするってシステムになってるし、その日に限っては迎えに来てもいいことになってんもん。

 それは、初等部の生徒が攫われたから。

 それが、俺の妹だったの。

 ちょっとおどおどしてるけど、笑うとすごく可愛いんだ。

 兄姉の中で俺だけ、名前呼びなのは、ちょっと生意気だとは思うけどさ。

 当時、市内の公立小学校の子が誘拐されて、そういう(・・・・)悪戯されて、殺される事件があったんだ。

 身代金目的じゃないから、難しい難しい、体液も残ってないんだもん。

 残ってる縄や毛布なんかも、ディスカウントストアで、まとめ買いとかじゃなく、都度買いだからさ、足取りがつかめない。

 それの最期の犠牲者で、唯一の生還者がナツメなんだ。

 生きて帰って来れたから良いってもんじゃないね。

 男だったら、親兄弟でも、怖がるんだ。同じ部屋にが入っただけでね。

 それで、当時は神経が細かったのか、引きこもりになっちゃったの、俺は。

 だからさ、ほぼ一日、このゲームに居たわけ、学校のほうは宿題とレポートで進級したけどさ。

 強制排出時間の数時間は睡眠時間だったけど。

 だからさ、リーチェが、入ったって言ったけど、ウソだってことが解る。

 知ろうと思えば、この【Amazing Earth】で解らない事はない。

 当時、数少なかった 『賢者』のマスタークラスで、『忍者』のマスタークラスを持ちながら、軽戦士をやっていたのだ。

 ゲーム内で、情報屋もどきもやっていたし、情報に対して、賞金をかけたのだ。

 それでも、目撃情報はなかったのだ。

 あ、うん、そう言う意味じゃ、《魔導師マジスタラビ》の原点かもしれない。

 今でも、ログインすると挑んでくるペーペーがいたり、挨拶して来たりする人が居る程度には、有名な伝説的プレイヤーなんだ、自分で言うのもあれだけど。

 日本サーバの『十二騎士』の中の三強の一人に数えられたと思う。

 ともかくね、それでも、俺はリーチェには何も聞かなかった。

「ともかく、笑ってよ。

 リーチェの笑顔好きだからさ。」

「ありがと、ラビ。」

 基本、俺自身の事聞かれても、話せないしね。

 ネチケって以上に話せないもん。

 だから、リアルの方で、サラ兄に、ファラン姉の写真をエサに調べてもらった。

 結果はさ、すんごく腹立った。

 リーチェ・・・本名・ベアトリーチェ=ステファノティスはさ、とある企業のモルモットになっていた。

 詳しい経緯も、吐き気がした。

 だけど、俺は手出しはしなかった。

 助けてとも、言われないのに、助けるのは、その時は、おせっかいだと思っていたから。

 ・・・それに、リアルじゃ只の中学生だったから、その時は。

 ああもう、今となっちゃただのいいわけだね。

 それからね、シャルとか、カルロスとかにも、リーチェに引き合わせた。

 リーチェは、《歌唄い》から、《吟遊詩人》になっていた、所謂、二次職だね。

 シャルは、シャルロット=ルルーシュ。

 濃いオレンジ色の波打つ髪をポニーテールにしていて、濃い緑の瞳で、白いドレス姿の二十歳半ばのクリスマスカラーの似合うアバターの女性だ。

その当時は、紋章師と魔術師の最上級職で、《魔章師》ってのに付いていたね。

 紋章っていうのは、攻撃力とかステータスを上げたりすると、普通のジョブスキルー『魔法』とか、『盗む』とかを付与したり、特別なスキルー『再生』とか、『隠者』とかを付与するために、必要なもんでさ。

 組み合わせ次第じゃ、その魔章師ってのが、一番強いんじゃない?

 全種類の紋章扱えるし、上級魔術も使えるから、成長は遅いけど、組み合わせ次第じゃ《龍殺し》よりも強いんじゃない?

 もちろん、その分、扱いが難しいんだろうけどね。

 カルロスは、カルロス=アリエスト。

 若草色のつんつん頭に、焦げ茶色のの瞳に、褐色の肌で、樹みたいにひょろっとした感じで、軽装の二十歳後半のアバターの男性だ。

 その当時は、盗賊と軽戦士とギャンブラーの上級職の《トレジャーハンター》ってのについていた。

 洞窟だとか、塔だとかの、探索には連れてきたい職業だね。

 探索も楽になるし、中衛戦力にもなるし。

 二人とも、《十二聖騎士》で、カルロスの方が、俺とシャルよりも、古くからいるし。

 言葉の端々から、結構オジサンがやってるのかなって人。

 オジサンっても多分、二十代後半なんだろうけど、オトナって人だった。

 二人は、ゲームじゃ良くつるんでる悪友同士って感じで、俺も含めて、最強トリオとかって言われてたね。

 俺が避けタンク系のダメージディーラー。

 カルロスが、後衛護衛系の中衛。

 シャルが、移動砲台&移動救急車ってとこかな。

「はじめまして、シャルロット=ルルーシュよ。」

「カルロス=アリエストだ。

 よろしく頼むよ、別嬪の吟遊詩人さん」

「よろしくおねがいします。」

「で、ルーティ、この子。

 お前さんのこれか?」

「ち、違うって。」

 カルロスが、小指を立てて聞いて来た。

 下世話だけどね、『お前の女か?』と聞いて来たんだ。

 持っていた剣で、殴りつけた。

 鞘付きだけど、マスタークラス二つ持っている軽戦士系を舐めるなって感じだ。

 リーチェも、シャルと結構、ウマがあっていたみたいだった。

 それからさ、よくその四人で、洞窟とかに挑戦したりしたよ。

 んで、そのパーティは結構有名になった。

 純粋戦士系の上級職が居ないのと【十二騎士】三人に、一般人のが一人って言う構成のせいもあってね。

 夏休みが来る頃には、リーチェも、歌唄い系四次職で最高の《トゥルバトール》になっていたし、俺も、《魔法戦士》の職に就いていた。

 あの頃が、一番楽しかった。

 シャルも、カルロスも、リーチェも、一緒に笑って居られたから。

 だけど、すぐかな、夏休みが終わる頃に、リーチェは突然消えた。

 

  『助けて。

    私を助けて。』


 その手紙だけを残して、ある日突然、登録を削除した。

 本当、突然だったよ。

 数時間前に、『少し寝てから、【オルレンの塔】に挑戦しような』って言って別れたばっかだったから。

 強制排出時間を過ごして、必要なものを買って、待ち合わせに来ても、リーチェはこなかった。

 その頃にはさ、リーチェは、大切な存在になっていた。

 当時は、『恋心』だって勘違いするぐらいに。

 今思えば、近所のお姉さんに幼稚園児が恋するようなもんだったんだろうけど。

 アコガレだね。まぁ、尊敬と恋心は不可分なんだろうけどね。

 シャルも、カルロスも、すごく慌てた。

 もちろん、俺もね。

 んで、リアルのサラ兄とシャー兄のケツを蹴り上げる勢いで、リーチェ・・・ベアトリーチェ=ステファノティスの行方を探ってもらった。

 とある企業の実験動物になってるのは知っていたけど、何処のかは知らなかったしね。

 そこまで詳しく調べてもらった。






「アルト?」

「あ~、とさ、ヴィル。

 もう少し時間くれない?」

「・・・・・・わかった。」

「んじゃ、一週間後にな。」

 ヴィルは、それだけ言い残すと、お金を結構、置いていった。

 食べた料理よりも、多いぐらいのお金を。

 そのレストランの個室に一人残されたラビは、こう一人呟いた。

「まだ、想い出にできれてないんだな。」




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