場面.1 初めまして、と俺は貴女に言った
俺は、裄瀬有兎。
作家の雪詠蓮の次男ってことになる。
寝坊して、トーストくわえて、学校に遅刻しそうになったり、好きな子を探してみたり、部活やったりしてる。
また、友達と馬鹿やったり、体育の野球を楽しみにしたり、W杯の時ににわかサッカーファンをやったりなんかしてる。
もちろん、WBCとかの時も。
フツーの学生やってる、もうすぐ高校生になる男の子だ。
多少、髪色とかが変だけど、割とそこらのガキだ。
でも、裏稼業じゃ、《魔導師ラビ》っていう顔をもっている。
ネームバリューはそこそこか、それより少し上だ。 10人に聞けば、6人7人は知ってるって感じかな?
そこそこ、裏に居るような一般人でも、半分は知っていると思う。
フツーのパソオタクだったのに、なんでこうなったんだろう?
多分、リーチェと死に別れてから?
「ラビ、目開けたまま寝た?」
「そんなわけない。」
「じゃ、話してよ。」
ゲームの中で、友人ヴィルにせがまれて、過去を話し始める。
確か、四年前・・・・・・。
場面.1 初めましてと、俺は貴女に言った。
確か、三年・・・四年前かな。
13になる年で、中学校一年の冬休みだった。
その時の出会いが、キッカケだね。
うちの地元って、一応、カントー圏なんだけどさ、雪とかふるせいか、18日ぐらいから、1月の10日までが冬休みなんだ。
一応、太平洋側だよ。曜日とかで、多少の増減はあるけど。
詳しく言えば、12月21日かな。
大掃除とか、年賀状を書くっていう気も起きなくてさ、VDで、【Amazing Earth】に潜ってたんだ。
そう、ヴィルが『まずは、ハードの普及からです』って安売りしたそれね。
今ほど、整備されきってなくてさ、《始まりの街》でも、裏路地入れば、結構怖いとこもあったし、それにちょっと、アングラに繋がってたみただったし。
当時は、そういうのに関わらなかったよ、一応、パソコンオタクだったけど一般人だったし?
その頃でも、割とヘビーユーザーになっていた俺でも、十分楽しめたんだ。
疑似だけど、酒とか煙草とかも、嗜めるしね。
一応、設定年齢の制限があるけど。(ちなみに、外見十六歳以下は使用できない)
そのとき、あのゲームで、流行ってたのって、動物の耳とか、シッポを付けるのが流行ってたんだよね、現実風に言えば、動物柄が流行るのに近いかな。
俺も、薄茶のロップイヤー系の耳付けてたの。
そういう動物好きも、プレイヤーに取り込む意図、あったんでしょ?
一応、その時は、『賢者』だったし。 『忍者』の『忍者マスター』・・・最高ランクまで修めてたから、それなりに有名だったんだ。
『賢者』も、最高レベル間近だったし、所謂、珍しい避けタンク系だったしね。
それなりに、ゲーム内じゃ有名だったんじゃないかな?
一応、『記憶のロザリオ』も持ってたし。
その日は、《BAR ピンクの指輪》にいたんだ。
その地域の『始まりの街』に行けば、大抵そこに入り浸ってるチェーン店酒場。
情報交換場でもあるし、ムーディだしさ。
論理コードをはずして、そう言う目的に使う人もいたみたい。
実際、当時は二階はそういう目的の宿屋だったし?
でも、その日は違ったんだ。 「げへへ、姉ちゃん、ちょっと酒付き合えよ。」
「だぜ、だぜ。」
「嫌だよ、下衆野郎。」
女の子が、チンピラ二人に絡まれてたんだ。
よくある光景だよね、DQNに女の子が絡んでナンパってさ。
女の子の方は、ふわふわの綿菓子みたいな金髪に、キャンディみたいな蒼瞳で砂糖菓子みたいな雰囲気なのに、口調はスパイシーな16歳ぐらいの女の子だった。
ニュービーなかんじだったね、しかも、VR使用の。
その子が、筋肉ダルマーズに絡まれてんだ。
いかにも見かけ倒しのね、所謂、ボディビルダー的な、ステ振り的にも意味のない・・・だって、片方は、メイジ系の法衣着てたんだぜ?
【スキル・解析】で、INTとMDが高かったし間違いない。
一応、公式と言うほどじゃないけど、【Amazing Earth】では、『思考力』=『戦闘能力』だよね?
VD持っていない人もいるから、全てって訳じゃないけど、少しは関係してるみたい。
単純にステータスってのもあるけと、外見が筋骨隆々でも、俺みたいなやせっぽっちに勝てないってわけ。
それぞれ、二発づついれたかな。
一応、うっかり、PKやらないように、クリティカルアップのパッシブ切った上で。
「覚えてろよ!!」
「あ、アニキ、置いてかないでくれよぅ。」
っていう、サイコーに小悪党くさい捨て台詞をのこして、そのチンピラたちは、逃げてった。
ベタベタ過ぎて、言われたこっちが恥ずかしいって感じだ。
ってか多分、リアルじゃ、小柄な俺よりもひょろひょろな奴かもしれないね。
うん、170ないナードかな?
ニセモノの世界で、筋肉纏ってるって、自分に自身が無い奴なのかもしれない。
人間、やっぱ、中身だよね。
「大丈夫?」
「あ、うん、大丈夫。
私、リーチェ=テンレン。
お兄さんは?」
「ラビ=トレッチェル。
ルーティか、親しい人は、ラビって呼んでるよ。」
「兎耳だから?」
「ううん、登録名だってこともあるけど。
何でも知ってるから。」
今でも、覚えてる。
一言一句どころか、雰囲気とか、彼女の服装まで覚えてる。
外見は、
砂糖菓子みたいにふわふわで甘いのに、服装もそんな感じなのに。
性格は、スパイシーってほどじゃないけど、キツくて明るくて笑顔が素敵だった。
「へぇ、すごいね。
じゃあさ、このゲームの事とか教えてくれない?」
「いいよ、職業は?」
「『唄歌い』。
さっき、登録したばっか、だから、にぎやかなところ教えてくれない?」
「繁華街ってことだよね?」
「うん、しばらくは何処かに雇ってもらって、スキルとレベル上げなきゃ。」
「なら、スノートの親父んとこ紹介しようか?」
「いいの?」
「うん、こう言うのは助け合いだよ。」
DQNに絡まれた女の子と助けた男の子。
初心者な女の子とヘビーユーザーの男の子。 ただ、それだけで終わるはずなのに、終わってもおかしくなかったのに。
俺は、リーチェに会いに行ったし。
彼女も、俺がいるところによく現れた。
おまけに、よくチンピラに絡まれてた。
一応、あっち目的かな。所謂、下半身直結厨。
疑似でも出来るし、リアルでも会うから。
でも、リーチェはこういうのもなんだけど、特別美人だとか言う訳じゃないんだ。
そりゃ、現実じゃ美人の部類なんだろうけど。
【Amazing Earth】のアバターの組み合わせ次第じゃ、もっと美人もいる。
シャルみたいにさ。
『ウソ』つき放題ってことだね、性別も含めてさ。
でも、リーチェは性格に反してと言うか、外見に準じてというか、『加虐欲』ていうか、『支配欲』ってのを刺激するタイプなんだ。
だからなのかもね。
ともかく、それがキッカケに仲良くなったんだ。
「悪い、ヴィル。
俺,もう行くわ。」
「なんで、まだ話途中じゃん。」
ラビがそこまで話すと、大体、ラビが住んでいるところで、午前9時を指すところだった。
「リアルで、家族旅行なの。
すっぽかせねぇもん。」
「・・・・・わかったよ。
次は、何時来れる。
僕は、早くても、四日後なんだ。」
「なら、それくらいの今日と同じぐらいの時間にこの場所で、個室取っといて。」
「じゃあね。」
そういって、ヴィルとラビは別れた。
しばらくして、彼は気付いた。
丸々飲食代を驕らされた事に。
微妙に話を聞くだけにしては高い代金だった。