0001.生涯の交差点
ナツさんの活動報告で、この企画の存在を知り、試しに書いてみました。
百合なのは、僕の趣味です(真顔)
名前の理由に関しては、後書きをご参照下さいませ。
そして、口調が難しいです……^^;
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「……あれ?」
私が任務対象を殺そうとした時、まるで不可視の壁に弾かれたかのように、その攻撃は防がれてしまったのだった。
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人間達は、『死神』という存在に対して、どのようなイメージを持っているのだろう。
黒い服を纏い大鎌を持った、骸骨?
黒いノートを持った異形の悪魔?
あるいは、大量殺戮者を思い浮かべる人も、いるかもしれない。
別にそれらは、間違ってはいない。
間違ってはいないのだが……。
「ナンセンスだわ」
「んー? 私がどうかしたー?」
私の独り言に反応する友人を見て、そういえば名前が酷似してるなと内心苦笑しながら、疑問を話してみる事にした。
多分彼女なら、『どうでもいい』の一言で斬って捨てるだろうけど。もしかしたら気まぐれで、付き合ってくれるかも知れない。
「ナムセヌス、貴女の事じゃないわ。ただナンセンスだと、少し思っただけ。……ねぇ、どうして人間って、死神に対して特別な『何か』を求めるのかしら。大鎌だとかノートだとか、確かにあれば便利だけど、まるでそれが無いといけないかのように、思うのかしら。そういった人達って、鎌やノートが発明される前は、どうやって死神業を行っていたとか考えないのかしら」
「なはは、セシリスは相変わらず人間が好きだねぇ。別にそんなの、どーだって良いじゃん。神話とか色々作ってるくせに、『最初の神がどこから来たのか』って、考えない連中だよ? まぁ最近はそうでもないかもだけどさ、どうせそこまで考えてないよアイツらは」
「人間が好きだってのは、別に否定しないわ。逆に貴女は、相変わらず人間嫌いみたいね」
「当たり前じゃん、そんなの。だって私、『絶滅種系』の死神だもん。私の種族を根絶やしにした人間には――うん、憎悪しかないね。だから死神やってるんだし」
『絶滅種系』。その言葉を聞いて、私は失言に気付かされた。
そう、普段の明るい、ポケポケな性格からは想像出来ないけれども、彼女は確かにそうだったのだ。
かつて人間に滅ぼされ、抹消された種族達。そういった種族達の、『種としての魂』を、浮かばれない負の感情を元に生み出された死神、それが『絶滅種系』の死神だった。
生存競争の果てに敗北し、絶滅したというのなら、諦めるしかない。強者が生き残り弱者が滅びるのが、世の理なのだから。
だが自然の摂理などではなく、愚かな人間の欲望によって滅ぼされてしまった種族達が、何故に諦められるというのか
自らが生きる為に滅ぼすのではなく、娯楽によって滅ぼされた種族達の魂が、どうして怨まずにいられるのだろうか。
故に、主神は彼の魂たちを元に、新たな死神を作ったのだ。
死神として人間を殺す事により、いつかその苦しみが癒えるように。
そして、いつの日かまた、恐らく違う世界になるだろうけれど、新たな種を生み出す命の息吹となる為に。
……もっとも、万一人に見られてしまった時の為とはいえ、人間型の身体を与えられてしまってる以上、癒える日など来ないのではと、私は思うけど。
稀に私達が視える人間がいるから、必要な処置と言えばそれまでだけどね。
世界が違えど、人は人。
許されるならば、直ぐにでも人間を滅ぼしたいと、彼女は思っているのだろう。
それをしないのは、単に主神が禁じているからに過ぎない。
異世界生まれの彼女は、そう在りたいからポケポケしているだけで、その胸中に悪魔さえ殺す何かが住んでいるのを忘れていた。
許されるならば直ぐにでも滅ぼしたい程に、人間種が憎いけれど。
かつての純真だった魂を、少しでも覚えていたいから。
どこまでも冷たく、昏い炎を灯した瞳を見て、迂闊な発言をしたことを、少しだけ後悔した。
そして、ここで“少しだけ”なのが、私が『生粋の死神』で有る事の証なのかも知れない。
人間の命を奪い続ける死神の、言ってみれば職業病。
任務対象の心境など考えてしまっては、手を下せなくなってしまう。
故に、『他者』には、ドライにならざるを得ないし、そうなるように私達『生粋種』は創られている。
世界を渡り、一応最終目標として命の息吹を掲げる『絶滅種系』には、かつての温もりが、多かれ少なかれ残っているけれど。
『生粋種』は、世界を渡れずに、もし世界が滅びれば運命を共にするが故に、温もりなど『身内』相手だけで充分なのだ。
いずれ異世界に旅立つ『絶滅種系』は、“仲間”ではあるけれども、“友人”でもあるけれども、“身内”でも“家族”でもないのだ。
だから、私は。
「『生粋種』の私としては、よく分からないわね、そういう感情。だけど友人として謝罪しておくわ。迂闊な発言をしてごめんなさい、ナムセヌス」
さらりと流したその言葉で、失言の事を流してしまうのだった。
謝罪すらも、友人という立場故の事。
ドライで冷たいのは分かっているけれど、それが私――セシリス・アトラクト・カーパスの有るべき姿だから。
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「どうして……貴女は生きていられるのかしら? コレを受けて、生きていられる筈がないのに」
私は、愛銃アトラクトを手にしたまま、私の銃弾を弾いた彼女に問いかけていた。
それはつまり、私や愛銃が見えていて、尚且つ弾を弾くだけの何かを持っているという事だから。
均整の取れた6枚の白い花びら――愛銃に刻まれた私の固有マークを思わずなぞる私に、彼女も聞いてきた。
「えーと、1つ聞いてもいい? どうして私が殺されなきゃいけないの? 別に犯罪した訳でもないのにさ」
それは任務だから――そう言い掛けて、それでは人間の暗殺者みたいだと気が付き、言い換える。
「それは私が死神で、貴女を殺すよう上から命令されているからよ」
「死神なんて本当にいたんだ? しかも銃を使うって、非常識過ぎ」
「まぁ否定はしないわ。ただ便利だから、私はコレを使ってるだけ。ところで、私の質問にも答えてくれるかしら?」
「上とやらから聞いてないの? 多分遅かったんだね。私は既に『契約を終えて』いるから、それでじゃないかな」
私は彼女に愛銃の照準を合わせたまま、彼女は私に視線を合わせたまま、対峙する。
互いに、目の前にいるのが油断できない相手だと、気付いているが故に目を離せない。
同僚――ナムセヌス・テウクリウムが異変に気付いて駆けつけるまでずっと。
ただただ、私達は見つめ合い続けていた。
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私は知らなかった。
彼女が『どういう存在なのか』を。
そして、私が彼女――天宮カレンを、愛するようになるという事を。
ラプラスの悪魔ではない私には、分かる筈も無かった。
死神:セシリス・アトラクト・カーパス。
契約者:天宮カレン。
私達の生涯は、あの日あの時をもって、交差したのだった。
お読み頂きありがとうございます。
さらりと某漫画ネタが含まれてますが、深い意味は有りません。
死神繋がりで、出しただけです。
今後の流れによっては、ノートは削除……もとい、割愛するかも知れません。
>名前の由来
【主人公:セシリス・アトラクト・カーパス】
*アトラクトカーパス・セシリス
http://cairns.nu/2013/10/Atractocarpus%20sessilis/
ケアンズ辺り固有の、アカネ科低木が名の由来です。
『セシリス』という名前が最初に浮かび、ググったら↑のページに辿りついたのですが、綺麗な花だとおもったのと、何となくイメージが合ったので、採用しました。
名前形式としては、『個人名・装備名・家名』となっています。
セシリスの場合は、アトラクトという愛銃を使っている為に、ミドルネームが有るのです。
勿論6弾タイプで、全体的に白い配色となっています。
個人マークの周辺だけ、つや消しのダークシルバーで地を作ってる感じです。じゃないとマークが見えないので。
【絶滅種系:ナムセヌス・テウクリウム】
個人名に関しては、『ナンセンス』に近いのをという、それだけの名前です(酷い
後者は、
*絶滅した植物一覧
http://ja.wikipedia.org/wiki/絶滅した植物一覧
の『再発見されたもの』項にある、
ファフィドスポラ・カバーナルムRhaphidosporacavernarum
テウクリウム・アジュガセウムTeucriumajugaceum
ハツシマラン
の中から取りました。
*絶滅したはずの植物135年ぶり発見
http://ouroboros.iwamosa.net/?p=162
にて、テウクリウム・アジュガセウムに関しては、写真を見ることが出来るようです。
画質がもうちょっと良ければと思ってしまいますが、そこは仕方ないですね。
まるで天女が着る服かのような、薄紫色の花びらが、素敵だと思いました。
だからこそ余計に画質がry
まぁ、カラー写真が見れるだけでも、ありがたいですね。
ちなみにナムセヌスさんは、絶滅種系、つまりは人間を憎悪している死神です。
だからかは分かりませんが、彼女は素手で魂を刈り取るようです。
裏設定として、別世界に存在した、風獣種だったというのがあります。
この世界でいうならば、羊的な存在ですね。
軽くて丈夫で温かい毛が取れ、また肉も美味である事から乱獲され、気が付いた時には十数体程度しか残っておらず、人工飼育も試されるも失敗、絶滅を避けられなかったようです。
【契約者:天宮カレン】
八属性の魔法がある世界なのですが、彼女は全ての魔法を使える稀有な存在です。
そこから何となくで、天宮という姓を決めました
カレンは単に響きで決めましたが、ギリシア語で『純粋』という意味の言葉が由来のようです。