ジャイアントキリング 1
お久しぶりです。大変お待たせ致しました。生きてます!
見捨てないで、待っていて下さった皆さま、ありがとうございます!
更新再開します!
ずいぶんと日が経ってますが、ニコ生なろう公式ラジオで、異世界居酒屋「のぶ」と一緒に、窓口が朗読されました!
なろうコン最終選考中という話題の作品と並べて嬉しかったです!
詳しい感想などは活動報告にて、させて頂きますね。
さて、王宮編スタートです。
俺は貼り付けた笑顔が、早くもはがれそうになるのを、なんとか我慢した。
特任練兵顧問だなんて大層な役職をもらってから、初の出勤である。
偉そうな名前ではあるが、簡単に言うと、軍属ではないアドバイザーみたいなものだと俺は解釈している。
軍属だと、どうしたって上下関係があるから、言いたくても言えない事が溜まって行く。
抱えている困った体質は、騎士団とそう変わらないだろう。特に伝統がある近衛兵団ともなれば、さらに闇は深そうだ。
俺の存在は、そういう部分を改善したいと言う王の希望にもってこいだったのではないだろうか。
これまで目に見えなかった基準ができた事で、王はその闇を大胆かつ、効率よく晴らす気だ。
その分、反発もあるだろう。その為の役職である。軍属ではない俺の直接の上司は、兵士長やら隊長を飛ばして、さらにその上、頂点である国王陛下と言うことになる。
王直属の親衛隊は特別だが、隊長とは立場上では同等。言いたい放題、やりたい放題。そのくせ、いざ戦いとなれば、責任は負わない。軍属ではないから。
こうして考えると、なんとも美味しい立場のようだが、現実はそう上手くいかないものだ。
今まさに、近衛兵達に射殺さんばかりに睨みつけられている俺が言うのだから、間違いない。
俺の性格上、まずやりたい放題、言いたい放題できるわけない。なるべくなら、穏便に良好な関係を築きたかったが、あちらは全くその気が無いようだ。
近衛兵の訓練場は、王宮の敷地内にあった。アリスを連れて、訓練場に入った途端、皆が一斉に動きを止める。隊長の掛け声により、近衛兵達が目の前に集合した。
事前に訓練場を見せてもらえるよう連絡はしていたが、集合してもらわなくても良かったのだ。
俺は貼り付けた笑顔で挨拶しようと口を開きかけて、閉じた。
近衛兵達の殺気だった視線は、はっきり言って怖い。腰が引けそうになる。
だがここは我慢だ。なにも彼らは今ここで俺に襲いかかってくるわけじゃない。
威張るつもりもないが、必要以上にへりくだるつもりもない。これはギルドで苦情の対応をするのに似ている。
ある一定のラインを越えてしまえば、バランスが崩れて、相手の言う事を全て認めざるを得なくなる。
その関係は、ズルズルと後にまで影響するのだ。ここで舐められたら終わりである。王が与えてくれた立場も、名前だけのものになってしまうだろう。
「ノア・イグニス・エセックスといいます。彼女は従者のアリス。本日は近衛兵団の訓練の様子を、見学させてもらいに来ました」
俺が精一杯笑顔で挨拶すると、ヒゲの男が歩み出てきた。ケルベロスを騎士団から横取りしようとした、あの兵隊長だ。
「ああ、特任練兵顧問殿。なにやら舌を噛みそうなお名前だ。聞いた所によると、ギルドの窓口係をされていたとか」
「はい、そうです」
「ふむふむ、ではこのような場所には慣れていらっしゃらないでしょう。話しがある場合はこちらから連絡係を寄越しますので、自室でお待ち頂く方が、双方にとって有益なのではないでしょうかねぇ?」
なんとも人の神経を逆なでする口調だ。用があれば呼ぶから自室にこもっていろ、と。近衛兵団としては、自分達のやり方に口を出されたくはないので、最初に俺を黙らせて主導権を握りたいのだろう。
「いいえ、エセックスの城や、メンシス騎士団にお世話になっていましたので、お気遣い頂かなくて結構です」
俺がそういうと、兵士長は自慢のヒゲをひくりと動かした。
「これはこれは、失礼しました。ああ、少しよろしいですかな?」
「なんでしょう」
「例のスキルとは、一体どのようなものなのですかな? つまり、どの位信用できるのですか、そのスキルの基準とは。全く前例の無いスキルだと聞きました。例えば、精度は?」
俺が説明しようと口を開くと、ヒゲがたたみ掛けるように言ってきた。
「あなたが気に入らない者がいたとして、適当な数字を言えば、その者の価値は決まってしまう事になる。確かめようにも、私どもには確かめる術が無い。これは不公平ではないですか?」
来ると思っていた。その疑問は誰もが持っているだろう。しかしそんな姑息な方法は思いつかなかった。
俺は窓口係で、相手に提供するものは正しい情報ではないといけないと、無意識に思っていたようだ。まず、相手を騙そうとか、力を使って人を陥れようとは思わない。
マジックアイテムを使って、俺が読み取った数字を、そのままカードに焼き付ける仕組みだ。その辺りの説明はされているはずだが、今ここで話しても聞く耳を持ってもらえるかどうか。
彼らの気持ちも分かる。戦いを知らない一般人に、誇り高い近衛兵が口出しされ、基準に満たなければ退団させられるのだ。
だが、ここでこの問題をなあなあにすれば、後々困る事になるだろう。
ただ王の命令に従うのではなく、俺のスキルを皆が有効であると認め、各自で強くなりたいと思ってもらわなくてはならない。俺のスキルが、直接彼らを強くする訳ではないのだから。
俺のスキルを実感してもらい、有効だと認めてもらわなければならない。それで初めて、彼らも俺の言葉を聞いてくれるだろう。
俺はヒゲの兵隊長に、ある提案をした。
「ひとつ提案があります」
「なんだね?」
俺はヒゲの真正面に立って、勝負を持ちかけた。俺のスキルを理解してもらう為だ。
「俺が選んだ三人と、あなたとあなたが選んだ二人で、一対一の三本勝負をしませんか? マジックアイテムは無し、魔術はあり。二勝した方が勝ちという、いたってシンプルなルールです」
「ほう、なかなか面白い」
ちらりと後ろを向き、他の隊長格とアイコンタクトを交わしたヒゲは、鼻で笑ってみせた。自信に満ち溢れ、いかにも強そうな自分の部下をヒゲが二人選ぶ。
「そちらのメンバーは?」
俺はというと、スキルを発動させて兵達を見回す。集合しても、端の方にいた三人に声を掛け、側に来てもらった。
ヒゲは嘲笑いを隠そうともせずに、本当にそいつらで良いのかと確認して来た。
「構いません。少しだけ時間を下さい。といっても、三日あれば充分です。三日で彼らの力を引き出してみます」
「いいだろう。その勝負、受けようじゃないか。そいつらは、各隊でも落ちこぼれでね。試験を受けても、顧問殿の基準を満たせたかどうか……退団が三日後に早まっただけかもしれないが」
俺の選んだメンバーは、顔を真っ青にしてしまった。
「では、今回の勝負で勝てれば、この者は無条件に試験に合格という事でどうでしょう?」
俺がそう言うと、ありえないという顔を隠そうともせずに、ヒゲは鷹揚に頷いてみせた。
「我々が勝てば、顧問殿には大人しく自室にて待機して頂く事になると思いますが、それでいいな?」
「ええ、構いません」
俺は、戦う順番はこちらで決めさせて欲しいと言う事と、親衛隊の誰かに審判を頼みたいと言った。
その条件は、簡単に承諾された。親衛隊に審判を頼みたいのは、隊長や兵士長に頼むより、公平だろうと思ったからだ。あわよくば、ロバートであればという打算もある。
彼は王の進める近衛兵強化の方策をわざわざ不利にしないだろう。もちろん、大勢の証人がいる前でやるのだから、ズルをするつもりは全くない。むしろ正反対と言っていい。
仲間を馬鹿にするヒゲのおかげで、逆に余裕が出てきた俺は、いつもの笑顔を取り戻した。
これだけ侮ってくれた方がやりやすいし、結果が出た時の効果は高い。
俺が選んだメンバーには、少しの間辛い思いをさせるが、彼らも仲間を見返すチャンスだ。
ヒゲが、俺の選んだメンバーに向かって、あごをしゃくった。言葉にするとしたら、分かっているな、お前達という所だろうか。
所属する隊に、彼らをしばらくの間借りる許可をもらい、訓練場から少し離れた中庭にやって来た。
太っちょでのんびりした口調のマイク、どこか落ち着かず、ずっと下ばかり向いているワット、小柄な体型のアッシュだ。
自己紹介をすませ、彼らに俺の考えを伝える。
正々堂々、小細工なしの勝負でこちらが勝つのは難しい。彼らはもちろん、あちらもそう思っている。だからこそ、俺は正面突破をしてもらいたい。
例えば、何らかの奇策を用いて、結果勝ったとしても、近衛兵達は納得しない。騎士らしくない、と言われる隙を与えたくはない。
「む、無理です」
マイクがそう言うと、ワットが激しく首を縦に振って同意した。
「無理じゃない」
俺は三人から目を逸らさず言った。
「無理じゃない。君たちには才能がある。俺は今から三日間、その力を引き出す手伝いをする」
「無理だ。兵隊長も言ってただろう。俺達は近衛兵の中でも、落ちこぼれだ。なんで俺達を選んだんだ? はっきり言って、迷惑だ」
アッシュが冷たくそう言い放った。
俺はそれに関しては、少し申し訳ないと思いながらも重ねて言った。
「無理じゃない。なあ、悔しくないか? 仲間にあんな風に言われて、笑われて。見返したくないのか?」
俺がそう言うと、マイクとワットは黙ってしまった。彼らは怯えていた。
俺はあの兵隊長の言いなりにならないような者を、あえて選んだ。兵隊長に媚びへつらう者を選べば、きっとわざと負けてしまって勝負にならない。
怯え、それでも悔しいと思い、眠った才能のある者。それが彼らを選んだ理由だ。
「これはチャンスだよ。俺を雇ったのは陛下だ。君たちはアルビオン王国の近衛兵団だ。その陛下を信じてくれ。特にアッシュ、君は何か他に問題を抱えているようだ。俺でよければ、助けになるよ」
その言葉に、アッシュが勢いよく顔を上げた。兵隊長が送っていた合図に、アッシュが一番顔を強張らせていたからだ。
陛下を信じてだなんて、ちょっとばかり大げさな言い方をしたが、他の兵士達にもこう思ってほしいのは確かだ。
その言葉のお陰か、三人はやっと俺の言葉に耳を傾ける気になったようだった。
勝負は三日後。それまでに、できる限りの事をしよう。
2015/01/12 修正




