表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
74/82

謁見 2

こんにちは!

窓口も連載開始から一周年になりました。

2,300万PV、450万ユニークアクセス、本当にありがとうございます。

また、お気に入り登録者数も、現時点で3万人を突破しました。うおー感無量です。

これからも、当作品を、どうぞよろしくお願い致します!


本編にて、ケルベロスの名前の発表いたします。

あとがきにて、考えて下さった方々に、お礼を申し上げます。


 正面横の扉から、王が入ってきたのが分かった。


「面を上げよ。ついでに、直答を許す」


 イスに着くより先に、淡々とした声で王が言い放った。

 そもそも、俺は自分が住む国だというのに、王の事をよく知らなかった。

 王様とは、死ぬまで王であるイメージが強かったが、アルビオンは違う。

 先王が若くして、現王にその地位を譲った。

 どうやらそのサイクルには、暗黒期が関係しているらしい。

 顔をゆっくりと上げると、シンプルだが美しい彫刻のされた、石造りのイスに、ゆったりと腰掛ける王の姿があった。

 トリスタンの動きに従って、俺達も立ち上がる。


「久しぶりだな、トリスタン。元気そうでなにより。今回のケルベロス討伐は見事だった」


「陛下には益々のご健勝、拝察申し上げます。過分なお言葉を賜り、光栄に存じます。我らメンフィス騎士団……」


 トリスタンが、ツラツラとお堅い挨拶を続ける中、俺は不自然にならないように、しかしあまり見過ぎないように、王の顔を観察した。

 張りのある声の印象のままに、王は若々しく輝いて見えた。

 先王は柔和という雰囲気を持っている人だったが、王はハツラツとしていて、とても爽やかに笑う人だった。

 三十代になったばかりの王は、今が一番、肉体的にも精神的にも絶頂期のようだ。

 アルビオンは、死の土地に接してはいるが、それ以外は土地も豊かで気候にも恵まれている。

 ロトス帝国より総面積は狭いが、それでも大陸の中央にあるアルビオン王国の領地は広大だ。

 その大国を、この人が全て治めているのだ。


「で、それが件のケルベロスの子だな。ロバート、この男は魔獣士か?」


「はい陛下。カミュという名の魔獣士で、スキル持ちのようです」


 ふむ、とひとつ頷いた王は、カミュを見て言った。


「カミュよ、ケルベロスを俺の騎獣にしたいのだが、できるか?」


「……はい、時間を頂ければ、その様に調教してみせます」


「それは結構。最近翼種の馬を献上されて乗ってみたが、どうもしっくり来なくてな。国としても、スキル持ちの魔獣士は一人でも欲しいところだ」


 王がチラリとロバートを見た。


「カミュ、王は君を専属の調教士として雇いたいそうだが、どうだい?」


「……俺でよろしいので?」


「強制ではない、とは言わないが。ある程度の自由と金銭の融通はきかせよう」


「はっ。陛下のお心遣い、ありかたく存じます」


 カミュが、胸元のペンダントを握った。村に残してきたメリッサを思っているのだろう。

 だが、カミュの声に迷いはなかった。

 俺は王の即決即断に、内心驚いていたが、カミュはある程度覚悟していたようだ。


「ケルベロスの名前だが、プルガトリアというのはどうだ? いかにも強そうだろう」


「よろしいかと思います、陛下」


 目を輝かせる王に、ロバートが笑う。

 そうか、と一度頷いた王は、しかしとケルベロスを見つめ直した。


「こやつらには、頭が三つあるのだ。それぞれ見る方向も違えば、どうやら気性も違うようだな?」


 イスの上から、王が戯れに指を振ると、ケルベロスの三つ首は、それぞれ別の反応をしてみせた。

 王の質問に、カミュが答える。


「その通りです、陛下。真ん中が強気、右が慎重、左が弱気と、頭ごとに性格があるようです」


「さて、どうしたものか。トリスタン」


「はっ。炎を吐くのは、陛下もご承知の事とは存じます。さらにこのケルベロスの親は、霧を呼び我らを苦しめました」


 トリスタンが、ケルベロスの特徴を伝えると、王は報告にあったなと呟いた。


「ふむ。中央の元気な頭を、シャムス、慎重な右の頭をミストと呼ぼう」


 ケルベロスを見ていた王が、パチリと俺に視線を合わせた。これは来るぞ。


「ノア・イグニス・エセックス、だったな」


「はい、陛下」


 やはり来た。よし、声は震えてないな。

 大丈夫だ、深く息を吸って、吐いて、笑顔を忘れずにだ、俺。頑張れ俺。


「君が飼い犬に名前を付けるなら、何とつける?」


「……ハチ?」


 この時王の質問が、ケルベロスといってくれていたら、もう少しマシな名前を思いついたかもしれない。

 ハチって、よりにもよってハチはない。逆に珍しいくらいだろう。そもそも世界が違った。

 いやつまり、俺はとんでもなく緊張していたのだ。


「変わった響きだな。どういう意味を持つ言葉だ?」


「――古い言葉で、忠犬を差す言葉でございます、陛下」


 嘘は言っていない、よな?

 俺は冷や汗よ引っ込めと祈りながら、必死に笑顔で保った。


「ほう、いい名だ。では、左の弱気な頭には、私に忠実になるよう願いを込めて、ハチと名付けよう」


 採用されてしまった。

 シャムスにミストにハチ。なんともアンバランスだが、王は機嫌良さそうに、それぞれの名前を呼んでいる。


「皆、ご苦労だった。私はこれより、ノア君と内密な話がある。君たちも宴に参加してきたまえ」



「!」


 俺はピクリと肩を弾ませた。トリスタンも、無表情ながら少々戸惑っているようだ。

衛兵が、こちらです、とトリスタンやカミュを誘導するように脇を固めた。


「君も行くんだ、女騎士殿」


 ロバートが、アリスを連れて行こうとするが、彼女は決して足を動かそうとはしなかった。


「ロバート、お前も席を外してくれ」


「……陛下」


 ロバートが諦めたように、しかし納得がいかないという様な顔で、王に訴える。

 王はロバートに鷹揚に手を振って、彼の訴えを拒否すると、アリスに話しかけた。


「女騎士よ。これから話す事は、一度知れば、生きて帰れぬ秘密かもしれんぞ?」


「アリスと申します、陛下。私は、いつ何時でもノアの側にいると、自分の剣に誓いました」


「ア、アリス……」


 慌てる俺に、王は笑い飛ばした。


「ははは! これは度胸のあるお嬢さんだ。我が親衛隊にも女騎士がひとりいるが、彼女と気が合うかもしれぬ!」


 王が笑うのを止めて、じっとこちらを見つめて来る。


「ま、半分は冗談だ。残り半分は、ノア君次第といった所かな?」


 太陽の光のように強い視線に、俺が無意識に下がりそうになった時、ふいに手に温かいものが触れた。


「ならば大丈夫。私はノアを信じている」


 アリスが、俺の手を握って、そういった。

 アリスのどこから来るのか分からない自信と、澄んだ瞳に見つめられて、俺は落ち着きを取り戻した。

 カミュがプルガトリオを引き、トリスタンとロバートが退出した。

 衛兵も全てが扉の向こうに見えなくなり、謁見の間には、俺とアリスと王だけになった。


ケルベロスの名前、たくさんの方が、一緒に考えて下さって、とても嬉しかったです。ありがとうございました。

Aquaさんから、全体の名前のプルガトリア(煉獄)を。

JAN-UMIさんから、シャムス(太陽)を。

月兎さんから、ミスト(霧)を。

佐助さんから、ハチ(笑)を。

それぞれ採用させて頂きました。

もう本気でタマとかポチとかにしたかったんですが、あまりにも迫力がないので、皆さんに考えて頂きました。

星座とかニックのつづりの頭文字を利用するとか、全部採用したかったのですが、今回はこうさせて頂きました。

考えて頂いたお名前候補は、作中で他のキャラの名前として使わせて頂くかもしれません。

では、改めまして、本当にありがとうございました!


2015/01/12 修正

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ