表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
「 I found you ! 」   作者: アザとー&美桜
CASE 0  間宮 優夜
4/40

……第一印象は『可愛らしい』だった……

 入試に青春をかけた反動なのだろうか、不器用な化粧が多い。白粉がどぎつく香る講堂の中で、肩までの黒髪を揺らす彼女の周りだけが楚々としていた。

「大丈夫? 顔色、悪いけど」

 突然話しかけられてどぎまぎしたことを、今も覚えている。

 だが、心配そうに差し出された手から、間宮は大きく身を引いた。

「さっ! 触らないで!」

 雪月があわてて手を引っ込める。

「あ、ちが……う、心配してくれたのは、ありがとう……ですけど」

 間宮は手袋で覆った自分の手を見せた。

「けっ……ぺき……なんです」

 黒髪がふわりと揺れて、彼女が首を傾げる。

「触らなければ、平気?」

「ああ、うん」

「じゃあ触らないようにするね。それより、具合は?」


……それがきっかけで彼女とは親しくなった。

 体が触れないように注意しながら、それでも隣で何くれとなく話しかけてくれる雪月の存在が、どれほど間宮を癒したことか! 

 自他共に認める友人の立場を、彼は手に入れた。だから他の男に奪われるまで気づかなかったのだ、雪月に対して抱いていた本当の気持ちに。

 夏季休業が始まるころ、雪月は一学年上の男と付き合い始めた。間宮にそのことを告げたのは、律儀にも親友としての義務だとでも思ったのだろうか。

「彼氏ができたの」

「へえ、オメデト」

 そっけなくしながらも、胃の辺りに何かがこみ上げる。

「けっこう積極的な人でね、きっ! キスとか、されちゃった」

「ふうん、それはそれは」

 なんだか彼女が汚れ物になってしまったようだ。他の男の唾液にまみれ、さぞや汚物じみた存在に……そう思いながら顔を上げれば、くるりと黒目がちな彼女の瞳が目の前にあった。

(ああ、汚れてなんかいない)

 恋する力というものなのだろうか。より優しく、暖かみを増した瞳。

(でも、僕にはできない)

 間宮の潔癖は悪質だ。自分の唾液ですら汚物のように感じて、時々吐き戻す。

 心では目の前の愛くるしい存在をどれほど欲していようとも、体が受け付けはしないだろう。自分の大事なものに唾液を擦り付け、排泄された体液で汚すなどという行為は……

 ならばせめて友人として傍に居ようと、間宮は決めた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ