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CASE 0 間宮 優夜
夕暮れの講堂に一人きりで座っている彼は、静かな表情で手元の文庫本をめくっている。ページを繰る手元には薄い綿の手袋がはめられていた。
細面は神経質な感じを受けるが、柔和な表情が上手い具合にそれを打ち消している。色素の薄い毛が日に透けて儚い。
八尋に向かって、彼は微笑を刻んだ顔を上げた。
――どうしたんですか、斉藤センパイ。
ええ、誕生日の事件なら僕も雪月ちゃん……おっと、彼氏さんの前では少々馴れ馴れしすぎますかね……姫路さんから相談を受けました。
僕が犯人の可能性? 動機は?
……ふむ、雪月……姫路さんに横恋慕ねえ?
僕が潔癖症で、生身の女の子に触れもしないことは知っているんでしょう。
そうですね、僕と姫路さんは……単なるクラスメートですよ。