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フィクション  作者: 神風紅生姜
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見守る者達

ブリッジクルーは事の顛末を見届けようと艦から遥か離れた場所で行われている戦闘を大型スクリーンに投影していたが。


超絶という言葉が相応しい3機のMSは彼等を魅了し、時の流れすら忘れさせていた。


「…凄い」


もはや側で発せられた声すら彼等は誰のものか理解出来ない程に。


しかしそれでも尚、艦長のグレンは思考していた。


『こちらの二人も凄いが、その動きにたった一人で着いていけるとは』と。


そうだ。


敵はこちらのエース二人を相手にして追随している事を忘れてはならない。


“黒い鷹”の称号で彼等は間違いなく連邦で最高のパイロットなのだ。


その二人を相手にしてこれ程に対等に近い所で鎬を削り合える相手とは並の強化人間以上の存在としか思えない。


更には相手の機体も含めて関心を持つ。


鮮明さを欠く映像から細部を見ても明かに既製のMSとは異なる。


おまけに鈍重な印象を与える機体の割には機動性能、運動性能も良い。


各要所へ小型スラスターを配置しているとしたらそれを使用した際に光が漏れるがそれも映像からは見受けられない。


恐らくはあのMSは搭乗者の脳波で機体制御をしていが故に既製機体以上の細かな運動制御が出来るのであろう。


そしてスラスターの数的に通常では考えられないスピードはミノフスキークラフトの技術を採用した機体と考えれば不可能ではない。


ビームシールドも含めてあれは最先端の先を行く技術を用いて作られた機体だ。


そんなMSを何処の誰が多額の開発費を出して作らせた。


太陽系で最大の資本と勢力を誇る連邦軍ですら争乱の減少及び小規模化で多額の軍事予算を使う新型機開発を実質的に停止し、既製パーツのバージョンアップに留めて機体改修を繰り返し性能向上に努めている。


ならば基本資本が連邦の数十分の一に満たない地方自治のコロニーや衛星都市が治安維持の自衛力としてあれ程の力を持つ為に金を割ける輩が居る訳がないと思える。


事実コロニーや衛星都市は連邦軍の払い下げ品の二世代も型落ちしたMSを買い取り実戦配備し活用している。


自衛力としてMSを持っている事で体裁上の面目も保てるし二世代前であろうとMSという力が脅威な事に変わりないからだ。


しかしあれは完全にそれから逸脱した性能を持っている。


治安維持や自衛には過ぎる力だ。


言葉にすれば侵攻や侵略の域の代物。


支配の象徴と呼べる力だ。


「こちらハンドレット、ブリッジ応答を」


前触れもなくオープン回線からキショウ中尉の声が響き、激戦を繰り広げる3機を映し出すモニターの呪縛からクルーの皆が解放される。


「はいこちらブリッジ」


フィリアは迷わず応答する。


「今から私も出ます」


彼女達が他の言葉を続ける前に私はデスクの無線で彼女に釘を刺す。


「待て出るな! 命取りになるぞ」


「戦場で命も何も無いではありませんか」


「ディーから一度艦に戻れと指示されたから帰還したのだろう」


「はい」


「ロビンからあれ程やり込まれたばかりでは機体も君自身の身体も信用に足る活躍を見せると想えない」


「……」


きつい言葉であろうが、あれの相手が出来ると信用出来るのはマークとディー・ビィーツ大尉だけだ。


艦の運航と戦力差を考えれば洗練され過ぎたNTである彼女では奴に引きずり込まれかねない。


「ご心配は有り難いです」


何?


「おっしゃる通りかも知れませんが、今隊長達はたった1機のMSに手一杯になっています。 しかしあれだけのMSを持つ連中がたった1機のMSだけでこちらに仕掛けてくるとは考え難い。 艦の防衛と他の空域へ目を配る必要があると考えます」


「……」


一理ある。


武力としてあれ程のMSを有し尚且つそれを使い熟せるパイロットも持つ輩でならば、戦術的にあれが陽動である可能性は高い。


両翼へ戦力を分散し敵艦の両側面へ奇襲攻撃を仕掛けてくる可能性を否定する事は出来ない。


そして…


「パイロットはお前の他にアンダーソンもデイトリヒも居る。 にも関わらずお前を出さければならない理由は?」


「私がNTだからです」


その言葉は確かな何かを含んでいた。


事実彼女はニュータイプだ。


しかしそれに対して彼女自身の感じ方は『エンキトだから当たり前』と言わんばかりに飄々としている。


今の戦場で必要なのは的確な判断力と複数潜んでるやも知れない敵の正確な数と位置を認識出来る優れたNTパイロットであるのは本当だ。


その私の考えすら彼女は見透かした。


適材はユリ・キショウだという事を。


「…ビームアサルトとリニアライフルの二丁を持って行け、無理はするなよ」


「皆優しい言葉ばかり… では!」


ブツリと無線が切れると同時に私も指揮を振るう。


「カイトとヘレンは艦の火器管制システムを起こせ。 対空砲用意! キショウ中尉に当てるなよ!」


「試射も無しにですか!? 無茶です!」


「機銃ってもんは艦へ搭載前に試射を済ましてる。 その後の試射は管制システムの誤差調整の為で撃てない訳ではない。 わかったら早くやれ、敵が来るぞ!」


「敵って誰ですよ!?」


「知るか! 死にたくなけりゃやれ!!」


「右舷火器管制システム…、正常に働いてます」


「テメェ!」


「艦長命令だ従え!!」


私に気圧されカイトもヘレンに次いで火器官制システムの起動に取り掛かる。


「システムオンライン」


「こちらも」


「いつでも撃てる用意をしておけよ」…










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