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フィクション  作者: 神風紅生姜
37/41

チーム

背後から迫るものに気付いた時は既に遅かったのかも知れない。


咄嗟に左腕のビームシールドを展開して振り向く。


衝撃と共にシールドに触れた物体がビームの高熱とプラズマで溶解する。


「デブリ?」


モニターが映すプラズマの光が落ち着くとデブリが飛んできたその先に黒光りする物体が続いて迫る。


再度シールドを展開しそれを受け止めた。


シールドがそれに触れると先のデブリ以上にモニターが輝き、押してくる力も大きかった。


宇宙の暗闇に馴れた目は眩しく光がほとばしるモニターが一体何を映し出しているか判別するのに時間が掛かる。


受け止めた何かを横へ受け流し、それが向かう進行方向へと直ぐさま視線を流す。


それはまるで彗星の如く尾を残しながら前進を続け、私と刃交えていたマーク・ジュディゲル駆る黒いパヴヂガンの所へ至ると静止した。


「真打ち登場だぜ!」


無線が鳴らした太い声は小気味良くそう宣言する。


「…もう一人の黒い鷹か?」


「おぉよ!」


連邦軍現役最年長パイロット、ディー・ビィーツ大尉。


「久しぶりに行くぜ相棒!」


「了解!」


お互いの合図を交わした目前の黒い2機のMSは素早く両翼へ展開しデブリ群の中へ姿をくらました。


「何年ぶりだぁ〜?」


「忘れましたよ」


「しかしまぁ身体は覚えてるもんだな」


「よく言いますよ」


二人の黒い鷹は無線で言葉を交わし合ながら宇宙を翔ける。


それを聞きながら私のゼノも二人を捕捉しようとデブリ漂う宙を泳ぐ。


「…この違和感は何だ?」


慣れ親しんだ宇宙という戦場が別の空間へ変異した様だ。


これが二人の黒い鷹を相手に戦うという事なのか?


「んじゃお先に!」


ディー・ビィーツ大尉の声を合図にデブリ群から閃光が一直線に迫る。


シールドを使うまでもない攻撃であったので機体の姿勢を制御し回避したが、続いて第二第三の閃光が私の進行方向の目前を走りゼノの動きを封じた。


やむなく閃光の放たれた方へ向き直り反撃を仕掛けようと銃口を向ける。


だが…


ライフルを構えた瞬間、明後日の方角から放たれた別の閃光がそれを一瞬でただの鉄屑へと溶解させ爆散させる。


「…ッチ! 大したチームだ」


「お褒めにあずかり光栄だぜ!」


目前からディー・ビィーツ大尉の機体と思われる奇っ怪な黒いMSが迫る。


その機体は左腕に持つサーベルを展開し私のゼノに切り掛かった。


咄嗟の判断でゼノのビームシールドを形成させ受け止めたが。


先程から連続してシールドを使っている為ビームを発生させる基部への負担が大きく、これを受け止めたらしばらくシールドを冷却しなければならない。


しかも今受け止めているものがただのビーム弾でなくサーベルとなるとシールドに掛かる負荷も大きい。


私の頭に過ぎったその思考は受け止めた斬撃を押し返さずに受け流すという動作をゼノにさせていた。


「これでは次の一撃が…」


「御名答!」


間髪入れず反転した黒いMSはゼノへビーム弾を放つ。


紙一重の差でサイドステップをしたが、閃光は左肩の装甲を消し飛ばした。


「何だと!!」


「悪いな」


被弾の衝撃に機体が震えていた時マーク・ジュディゲルの声が響いた。


すると遠方から鋭い殺気が駆ける。


「いかん!!」


素早く体勢を整えた次の瞬間、超高速の弾丸がゼノの頭部右側を掠める。


「近距離で高速機動する機体は陽動で、本命はスナイプか!?」


「どうかな?」


更に右腕にもサーベルを装備させたディー・ビィーツ駆る黒いMSが再度ゼノへ二本の光剣で仕掛ける。


黒いMSの放つ斬撃は鋭く素早い。


それの総ては的確に敵を葬る為に放たれた一撃を連ねた必殺の剣であった。

これが陽動とは到底思えない。

「…なるほど」


必殺の斬撃と必中の狙撃で敵を討つ二段構えか。


どちらが主でもなく、単純に敵を殲滅する為に互いの長所を駆使したコンビネーションアタック。


見事だ。


…だが此処で墜る訳にはいかない。


目前のMSが放つ斬撃を紙一重で避けながら私は遠方から狙撃する彼へ向けペダルをいっぱいに踏み込んだ。


「…!? 今は俺が相手だろうが!!」


ビィーツ大尉は私を追い右腕の武装をサーベルから機体背部にマウントしていたビームライフルに戻した。


向かう前方からは鋭い砲火がゼノへ浴びせようと放たれているが。


弾速の速いスナイパーライフルではビームライフルよりも連射性能は劣り、尚且つ狙撃体勢を保つ者は標的と直線上で相対しながら迫る敵には有用でない。


的確過ぎる狙撃は対象に相対されると想像以上に安易く避けられる。


またスナイパーは距離を詰められてしまえば狙撃側の方が圧倒的に隙だらけになってしまう。


そして射線上を位置する私の後ろには追随する味方機も控える為、下手な照準の狙撃を放てば後続の味方に命中する。


それがこのコンビネーションアタックの短所だ。


今私がそれを示した。


ならばどうする黒い鷹よ。


「“鷹”の名を侮るなよ」


その声は私の心を見透かしたかの響きであった。


迫り来るゼノを前にして臆す事無くマーク・ジュディゲルはスナイパーライフルを放置し両腕へビームサーベルを装備させ突進してきた。


「…殺る気は十分か!」


鷹達の戦士としての振る舞いに敬意を払い、私もゼノが左腕に装備するブランドマーカーが形成するビームをシールドからランスへと切替、高密度に集束されたビームを発振させた。


マーク・ジュディゲルを迎える可く。


互いのサーベルの間合いに入った瞬間、私が最初の一閃を放った。


だがそれは空を切り、マーク・ジュディゲルの黒いMSは昇天し私の背後へ回り込む。


素早く反転しマーク・ジュディゲルの斬撃と切り結んぶ。

互いの機体は力強く押し合う。

「ただのシールドかと思いきや面白い武装だな」


攻守一体のブランドマーカーを目の当たりにしマーク・ジュディゲルは感想を述べたが、それは冷淡に呟かれていた。


すると切り結び鎬を削り合っていた目前の黒いMSは突如翻した。


「何だ?」


「こいつだよ!」


マーク・ジュディゲルの駆る機体がサイドステップするとその後方に控えていたディー・ビィーツ大尉の機体が私へ向けビーム弾を放った。


迫る閃光は何とか緊急回避出来たが、前衛と後衛を入れ替えるこの連携攻撃は私の予期せぬものだった。


「だから俺が相手だと言ったろ」


「…なるほど」


「はっ?」


「前衛と後衛を分担しつつそれの専任を定めず戦闘中に入れ替え相手を翻弄」。


機体の機動を止め私は語る。


「……」


目前の黒いMSもまた静止し沈黙したまま言葉を聞いている様子だった。


「またマーク・ジュディゲルが敢えてスナイプ主体の機体に乗る事で相手はマーク・ジュディゲルを後衛専任と決め付け隙を突き易くなる」


「…おい」


「だがその実は二人のオールラウンダーからなる戦術的技巧派。“能ある鷹は爪を隠す”の如くか」


だが彼のその姿は私の語りを聞く為の姿勢ではなかった。


「くだらなねぇージャンル分けすんな!!」


ディー・ビィーツ大尉の怒声の後、黒いMSの砲火が放たれた。


閃光は彼の言葉同様に怒りの色を含んだ殺意だった。


「…!」


何とかそれを避ける事は出来たが、続いてディー・ビィーツ大尉の駆る黒いMSが迫り幾多もの斬撃をゼノへ浴びせんとする。


「そんなくだらねぇもんが戦場で何の役に立つ! ただ俺とお前とで殺り合う。それだけが戦争だ! 理屈も訳も関係ねぇ! さっさと本気出せや我コラ!!」


彼が私の言葉に耳を傾けたのはそれが己が信ずる信条に反したからだった。


黒いMSから振るわれる斬撃は先程のものと比較すると乱雑である。


しかしそれでも私を仕留めるに足る的確な斬撃を軽業の如く連続で振っている。


刹那が生死を分かつ場に長く身を置いた者と垣間見れるその斬撃は、私を軍神の息吹に抗ってるかの如く錯覚すら与える。


この猛襲をいつまでも受け続けられるとは思えない。


「オラオラどうした!?」


これ程の剣技を振るいながら敵を捉え続け的確にゼノの光剣を薙ぎ払い次の斬撃へ繋げるか!


「忘れられては困るな」


「…!?」


今度はマーク・ジュディゲルから後方7時からの砲撃。


このコンビネーションは流石に辛い。


ペダルを一気に踏み込んでゼノを最大推力で飛翔させたが、ディー・ビィーツ大尉とマークジュディゲルの姿を捉え続けようと意識し過ぎた私はゼノの進行方向のデブリに気付かず激突してしまった。


「ヒュー… ここまでみたいだな」


私とした事が不覚…


「…天空の王者二人が相手では不様を曝すか…」


「それがお前の最後の言葉として受け取っておく…」


マーク・ジュディゲルは激突の衝撃で硬直したゼノへ銃口を向けた。


「待てよ相棒」


しかしディー・ビィーツ大尉は彼がトリガーを引くのを制した。


「この得体の知れない奴は本気じゃねぇ。そいつを見たくねぇか?」


「最早此処は模擬宙域ではありません。この者はただの敵。戯れ事は止めましょう」


「硬い事言うな」…










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