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フィクション  作者: 神風紅生姜
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武者震い

彼との感応を解き今一度己の意識が一つの心体を中心に周囲の状況を一つ一つ知覚していく。


「間一髪と言った所か…」


最初に口から出た言葉は彼の心の中で知覚した紅蓮の竜巻に対する驚愕だった。


あれは彼を想う彼女の強い意志が焔の姿に具現化したものであろうか。


それが何であれ形態が“焔”故に内包する激しい感情の渦は触れた物全てを亡きものに出来るという絶対的な力であった。


もしあそこで私の意識体があの焔に触れていたならば、今頃私は廃人に成り果てていたやも知れない…


しかしそれはこれから刃を交えるやも知れないと思うと、怖れを感じる以上に想像を絶するであろう面白い死合が彼等と出来るのだと私の心を踊らせ、つい顔に微笑が現れてしまう。


彼女が身の内に秘める激しい感情を知る事が出来ただけでも、彼と心を通わせた甲斐があったものだ。


私は先程と変わらずデブリ群に機体を潜ませながら再び意識を拡大し、遥か彼方離れた地点から彼等の動向監察を続けた。


「…ほぉー」


まず感知したのは彼等の母艦近くで戦闘をする若い部下達だった。


しかし様相は先程と異なり、私へ向け精神波を放った若い娘は一方的に攻撃を受けていた。


あの方もその様子を察知し、争う部下達へ銃口を向け長距離のスナップショットを放つ姿が私の脳裏に描かれる。


スナイパーのロングバレルから放たれたペイント弾は攻撃を仕掛ける若い男の部下へ直撃し、その者は突如機体を襲った衝撃に何が起きたか直ぐ理解出来ずにいた。


若い男は上官である彼からの無線連絡を聞き、ようやく事態を把握する。


彼は部下へ彼なりの説法を下し説き伏せようと試みた様子…


だが部下は若さ故の高ぶりで上官である彼に不服を含んだ反論を見せる。


そやつの意見はどうあれ同僚へ実戦出力を放った時点でそれは個人的な感情論をぶつけた餓鬼の戯言でしかない。


「何処も同じく若い集には苦労をさせられ困るな」


つい彼への同情が言葉として漏れた。


さておき結果はと監察を続けた。


やはり若い部下に彼の理屈は通らず、意固地を貫く姿勢を示して再び彼女へ矛先を向けた。


だがしかし…


法を説く時間は彼女に武装を切替さすには十分過ぎ。


彼女の機体から強い殺気が放たれた。


察すると彼女は疾に武装を実戦出力へ切替、襲い掛かる者を返り討ちにし葬ろうとさえしている。


彼はそれすら見抜いてたのであろう。


スナイパーからは第二射が放たれ、若い男の部下が乗る機体を貫き行動が停止した。


よもやその機体は屍と化し、身動き一つ出来なくなっていた。


「流石は“黒い鷹”の異名を持つ者」


鷹は狩人の象徴。


狩人とは古より弓の名手であり、現代ではスナイパーを指す。


また鷹は天空の王者でもあり、それの舞う姿は覇者そのもの。


「名に恥じぬ仕事ぶりと言った所ですな」


私にも“鯱”という異名がある。


凍てつく海に君臨する獣。


宇宙は天とも海とも解釈出来る。


故にこの宇宙で狩りをする私をそう呼ぶのだろう。


ならば此処で我々が互いの力比べをすれば、宇宙が天か海かはっきりする。


そして今、その時が来たのだ。


一仕事を片付けた彼はスナイパーを手放し、シールド裏に忍ばせた小型のビームガンを機体に装備させ私の姿を探す。


にわか仕込みのニュータイプ能力まで駆使し、微かな私の気配を探るのだ。


曖昧にしか私の存在を知覚出来ていない様子であったが。


彼は着実に私の所へ歩みを進めた。


こんな形になってしまったが、貴方の技を身を持って知る事の出来る機会を得ようとは光栄の至り。


「我もいざ神妙に参る」…










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