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フィクション  作者: 神風紅生姜
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若さ故に

「抵抗しろよ!!」


己の内から溢れ出す怒りに身を任せ機体を操りパヴヂガンの鋼鉄の脚を目前の標的ハンドレットへ打ち付ける。


衝撃は自機のコクピットへも伝わり、モニターは金属がぶつかりあって発した火花を鮮明に映し出した。


「さっきの威勢はどうした!? あんだけいい根性した挑発ぬかしてその様かよ!!」


無線で繰り返しキショウ中尉へ呼び掛けるが、応答はおろかハンドレット自体も身動き一つ見せずそれらしい反応は無い。


どういう意図で呼び掛けに応じないのか解らない。


だがそれは確実に俺の苛立ちを高める。


「すかしてんじゃねぇ!!」


両脚のスラスターを吹かし、距離を取って銃口を向ける。


「なんとか言え!!」


グリップのトリガーを引きビームを連射。


放たれた細かな閃光達はハンドレットを包囲する様に迫り、幾つかのビームは機体に触れる事なく掠めていったが、他はハンドレットの機体に直撃。


閃光が被弾した箇所の装甲は赤く発光しビームの熱量を物語るが、それも一時に留まり時が経つにつれて赤く発光していた装甲もハンドレットの元々の機体色オレンジに戻っていく。


パヴヂガンが装備するビームアサルトの火力ではハンドレットの特殊セラミック装甲の対熱性能限界を超える被害を与えられないのだ。


「なんて装甲だクソッ! クソッ!!」


このパヴヂガンの性能を持ってしても旧式のハンドレットに敵わない。


従来機を超える機動性。


小型機特有の運動性。


特殊セラミック装甲のビーム兵器に対する防御能力。


パヴヂガンと違い生産コストを勘定に入れず造られた機体故、8年以上倉庫で埃を被っても尚、最新機に勝る性能を持っている。


しかしハンナさんがその機体に相応しいと判断した当のパイロットは黙り込んで指一本動かせられない。


ましてそのパイロットは艦長に次の新型まで任されるだと!?

「…ふざけるな!!」


俺はコンソールを操作しパヴヂガンの右腕にサーベル握らせハンドレットへ急接近し切り掛かる。


…だがサーベルを振り下ろす間も無くコクピットへ激しい衝撃が伝わった。


「うわっ!」


その衝撃で機体も体勢を崩しオートバランサーが緊急制動を掛ける。


「今度はなんだ!?」


ハンドレットからではない。


彼女の機体は相変わらず身動き一つせず、ただ両腕で機体の胴を隠しパヴヂガンからの攻撃を防ぐ体勢を保って漂っている。


モニターは機体各所のセンサーが感知した状況を図と文字で表示した。


見ると被害は大した損傷ではなかったが、それはパヴヂガンが背部に被弾したという模様を伝えた。


「…真後ろだと!?」


全天モニター越しに自機の振り上げた右腕マニュピレータを見るとそこには黄色い飛沫が付着している。


「ペイント?」


直ぐさま機体を180度旋回させコンソールパネルを操作し弾道を計算。


そこは先程キショウ中尉が向かおうとした宙域と思われる場所とほぼ一致していた。


「そこまでだパーソン中尉」


強制的に開かれた無線回線がヘルメット内に声を響かせる。


「…マーク・ジュディゲル?」


姿の見えない隊長の声を無線越しに聞きながら俺は彼が居ると思われる宙域へ怒りの篭った眼差しを向ける。


「ちょっと目を離した隙にこれか? 大概にしろロビン」


あんたまでコイツを贔屓するのか!?


「煽ったのはこの尼の方だ!」


俺はただ軍の規律ってもんをコイツに身を持って教えたに過ぎない!!


「そんな事はどうでもいい。シナリオ変更だよ」


なんだと!?


「お前がキショウ中尉の機体に気を取られてる間に艦は新にMSを出撃させお前の退路を断つ、そして逃げ道を失ったお前に対して長距離射撃の一撃を与え行動不能に追い込みThe endってな。仮にも戦艦が自分達の防衛に一機しか出せない状況はほぼ無い、お前さんの役は罠に嵌まった訳だ」


急遽出された隊長のシナリオに納得いかなかった。


ただ小娘の身が危険に曝された今の状況を利用し、自分達の都合の良い様にシナリオを書き換えたとしか思えない!


「コイツは一時は行動不能にまで追い詰めた敵を目前にして止めも刺さず逃亡しようとした!!」


「…確かにな。だからと言ってMSを使って“可愛がり”をする必要もなかろう。お前がそれに対して執る可き行動は感情に流されず艦長からの指示を仰ぐ事ではなかったのか?」


正論だった…










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