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フィクション  作者: 神風紅生姜
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剣技

「中尉はこの大きな力を感じないの!?」


「何の事だ! 外は俺達以外誰もいない!!」


この女、気でも狂ったのか!?


「そんな子供騙し!」


俺はパヴヂガンに組み付いたハンドレットを強引に振りほどき、左腕に装備されたライフルの銃口を至近距離で向けた。


目前のハンドレットはシールドに身を潜めたがこの距離ならビームアサルトはシールドを貫通させる火力がある。


構わずトリガーを引いた。


しかしライフルからビームが放たれるまでのコンマ数秒、シールドが迫りライフルに接触。


厚い装甲が銃口を密着状態で塞ぐ。


「…!!」


左腕部から機体全体へ鈍い振動が伝わる。


シールドで出口を塞がれたビームが銃身を焼きライフルが暴発したのだ。


衝撃は伝わった振動以上に強かったらしく数十m程後方へ機体が飛ばされた。


「あいつ馬鹿か!? 模擬出力でも十分に暴発する火力だぞ!!」


ライフルは失ったが機体に損傷は無し。


まだまだ戦えるが、それはシールドを失っただけのハンドレットも同様。


「もしや狙ったのか!?」


奴は瞬時にライフルを暴発させる事を思い付き、シールドに姿を隠し防御を装った。


そして発射寸前に盾を棄て急上昇、巻き添えを逃れた。


「ずる賢い頭と技術だよ!」


良い様に見れば相手はシールドを失い回避一択に絞られた。


「回避だけで乗り切ってみろ!」


勝利への僅かな希望が見えた。


以前シールド装備の機体に乗るパイロットは盾に頼る傾向があるというデータを見た事がある。


盾を失った4割以上が取る傾向は後退しながらの砲撃戦とそれには書いてあった。


俺はモニターに映るハンドレットをロックオンしパヴヂガンの頭部バルカンを放つ。


ハンドレットは当然の如くそれをスラスター全開で右横へ回避行動。


もちろん俺もこんなものが当たると思っちゃいない。


「避けろ避けろ!」


俺の目的は相手の回避行動そのもの。


攻撃を遮るものを失った敵は距離を取るしか手段が無いが、回避に気を取られ相手はこちらを視界から外す。


そうなればジャミングとダミー隕石やデブリの浮遊する環境で再度敵を捕捉するのは困難。


視界から外れてる今、こちらは相手の死角へ周り込み背後から接近。


サーベルの一太刀で制圧するというのが一つの戦術。


それを実行すべく近くのダミー群へ機体を隠しながらハンドレットの背後へ回る。


「戦術マニュアルってのは読んで損の無いもんだぜ」


相手は視界から消えたパヴヂガンを探し機体頭部を左右に振っている。


だが既にパヴヂガンはジャミングの強い背後のデブリ群に回り込んでいるのでレーダーでも捕捉出来ない。


俺はハンドレットが俺の機体を探しに動くまで息を潜める。


やや間を置いてその時が来た。


背後から見たハンドレットは前方へ進もうとしている。


「もらった!!」


それは完全に隙を突いた攻撃だった。


失ったライフルの代わりに左腕にもサーベルを装備させペダルを一気に踏み込む。


瞬間、俺の身体は加速Gで椅子に押し付けられたが、怯まずペダルを深く踏み続けパヴヂガンの両腕に装備した二本のサーベルを振り下ろす。


「…!?」


スムーズに流れる動きのはずがパヴヂガンの両腕を操るグリップは俺の腕の動きに反発し押し返してきた。


モニターにはパヴヂガンの使う二本の光る剣と、もう一本。


背面を向けたままの姿でハンドレットは左腕にサーベルを装備しこちらの斬撃を頭上で受け止めていた。


「一本ならまだしも、サーベルを二本使う時の様はなってませんね」


ハンドレットからの無線。


それは明かに俺を見下した語り口だった。


ハンドレットはサーベル一本でこちらの二本のサーベルを受け止めたまま後ろ蹴りを放つ。


それは腰部へ直撃しパヴヂガンは後方へ蹴り飛ばされた。


「うわっ!…」


姿勢制御し再び次の攻撃を仕掛ける。


「コイツ!」


「甘い」


右腕のサーベルで横一文字に切りつけたが、ハンドレットは軽くスラスターを吹かし後退しながら機体の上体を反らして斬撃をかわした。


流れる様な動きでハンドレットはパヴヂガンの右脇へ回り込み斬撃を放つ。


「…!」


振動と共にコクピットへアラーム。


ハンドレットの模擬出力のサーベルがパヴヂガンの右腕を使用不能にしたのだ。


「クッ!…」


模擬出力ビームに機体を損壊させるだけの威力は無いが、お互い模擬戦モードでそれが機体に接触するとMSのPCが実戦出力に換算し損傷ヶ所や度合いで自機の機能を自主的に制限する。


今の斬撃を右腕に受けた事で実質パヴヂガンは右腕を失った事になる。


「クソッ!」


スラスターを吹かしハンドレットと距離を取り、残された左腕の武装をサーベルから背部ラッチのライフルに持ち変えビームを乱射する。


「当たれよ!!」


連射される閃光を軽々と避けながら迫り来るハンドレットに恐怖を抱いた。


「奴と俺とで何が違うと言うんだ!?」


あっという間に距離を詰められ残された左腕へ斬撃が触れる。


両腕を失ったパヴヂガンは駄目押しに頭部バルカンを至近距離で放ったが当たらず、斬撃が頭部を襲った。


モニターに『バルカン使用不能』の文字が表示される。


もう反撃の手段が無い。


「実力の差かよ…」


抵抗の術を失った俺はただハンドレットから最後の一撃が放たれるのを待つ事しか出来なかった…










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