新たな生活
焼け野原を直してもらった後、寮に入寮する。
アイリス ラエビガータは全寮制だ。住む場所も頼る相手もいない私にとっては大変助かる。
というか、例によって例の如く、実に都合の良い話だ。
寮は、流石に王立の学び舎だけあって受け入れる生徒数も多いからか非常に大きな建物だった。
寮の入り口には恐らく同じ新入生だろうソワソワした様子の子達(同い年くらいの子に使う言葉ではないが・・・)が寮監による部屋の振り分けを待っている。ちなみに、入学時に荷物は全て預かってもらい、既に部屋に魔法によって飛ばされているらしく皆手ぶらだ。この辺、流石ファンタジー。超便利
<カナエほどの魔力保持者はいないな。勿論、既に精霊と契約しているものも。>
「(サタン、可愛い姿ね)」
<フェニックスが小鳥の姿でカナエの傍にいられるなら我とて化ける>
小さな掌サイズの白い蛇の姿に化けたサタンはにょろっと肩に乗っている。
私が爬虫類嫌いだったらどうするんだか。
普通の女の子だったら一気に嫌いになると思うけど。
<我がそなたの嫌悪するものになる訳が無かろう。>
左様ですか・・・例によって例の如く、思考が駄々漏れなんっすね
「入寮待ちの新入生!!これより部屋の振り分けを行う!!!」
大きく張り上げた声が聞こえた。
寮監の声なのか、若い男の声だ。
待っていた新入生の列が少しずつ動き出したので私も歩を進める
「・・・・・・・カナエ=カンヌキだな?4階のB-77だ」
「有難うございます。」
「・・・・・・ちなみにその小鳥と白蛇は?」
「・・・・・・・・・ペットです」
突っ込まないでほしい。
建物は5階建て。
1階にはホールと寮監室、食堂、浴場、購買
2階は4,5年生
3階は2,3年生
4階は1年生
5階は教諭室
という位に振り分けられているらしい。部屋は一人から二人部屋。
生徒の実力や生徒の家柄によって部屋が変わるらしい。権力というのはどの世界でも健在らしい。
ちなみに4階Bというのは4階の、B棟という。
AからDまである。
Aは剣術科
Bは魔法科
Cは商業科
Dは文学科
という位にクラスわけがそのまま寮の棟わけになっているのである
「さて、二人部屋かぁ・・・バレたらどうしよう」
部屋に入って唸る。
<流石に何時までも黙ってるわけにはいかないものねー>
<操術するのは?>
「同級生をなんで操るの・・・・・・」
あきれた声が漏れた時、扉が開く音が部屋に響いた
「あー、カナエ=カンヌキ?」
「そうですけど、貴方が同室?」
「一応。ルーファ=クライス。まさか異性と同室とはなぁ・・・・」
そう、同室者は男の子だった。え?有りなの?
「悪いな・・・書類ミスだ」
寮監はすまなそうに言う
「じゃあ部屋替えをしてください」
「さらに申し訳ないことに、無理だ」
「「はい?」」
「今年の魔法科は女子は皆、貴族とか有名な精霊使いの子女でな、全員一人部屋で、部屋に空きは無い。珍しいことでなぁ・・・」
「じゃあ俺をどこか二人部屋に入れて三人部屋作るとか。」
「無理だな。」
即答されてどうしたら、とルーファと顔を見合わせた
結局、部屋には鍵が掛かるということで、あれ以上粘っても仕方なく、とりあえず部屋に戻った
「改めて、ルーファだ。なんかゴメン」
「カナエです。謝る事じゃないよ。悪いのは学園側だし。」
「どうしようもないから、これから同室で生活する事になるけど」
「仕方ないよねー。改めてよろしく」
「もっと嫌がられると思ったのに・・・結構アッサリしてるな」
「不測の事態には結構なれちゃったからね」
この世界に突然飛ばされたことを考えれば異性と同室なんて小さなものだ
<全然小さなことじゃないぞカナエ様>
バエルが呆れた声を漏らす
途端、ルーファが驚いて目を丸くした
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんっつー強大な精霊連れてるんだカナエは」
バエルがしっかり気配を出したらしい。隠しているのは無駄だと思ったからなのか
<勿論、生活を共にするのに、隠し続けるのは無理だけど、牽制も込めてね>
その台詞に他のメンバーも顕現したらしい。
私にしてみればずっと同じ状態だから今一よくわからないけれど、ルーファの目の見開き具合で顕現したことがわかった
「カナエって何者?」
しっかり牽制した後、ようやく一息つくことになって、この世界にもあったコーヒーを飲む
「何者って言われても人としか言いようが無いわ。」
「・・・・言い方が悪かった。こんな強力な精霊と契約しているのに、なんで王立で学ぶ必要が在るんだ」
「私は世間知らずだからねぇ。学ぶ必要性大なのよ。」
「諸事情があるのか。まぁいいけどさぁ」
初対面ということで根掘り葉掘り聞かない良識を持つ同室者でよかった。
今日から共に新しい生活を送るのだから、気持ちよく暮らしていきたいものだ
ルーファ=クライス(20)
身分は一般人。魔力は上の中。ちなみに香苗は最上。
銀髪で結構美形。良い人。常識人