目覚めの瞬間
王太子の衰弱具合は酷いもので、ある一定の治癒はセラフィムがしてくれたものの完治とはいえない
「何か食糧があればいいのだけれど」
<取ってこようか?>
「・・・お願いします」
精霊に人間の心の機微や思いを汲み取るのは無理なのか、それとも私と彼らの繋がりが浅いからなのか彼らは此方から言いださなければ動かない・・・・言っても拒否されることのあるのが精霊の使役の常識らしいがそれは後々知ることになる・・・・・・
<カナエ用にパンと、水、果物。王太子用にハイレン持ってきたよ>
「ハイレン?」
<治療に使われる果物。栄養価も高いぞ>
「どうやって使えばいいの?」
<あら、簡単よ。絞って飲ませるの>
「なるほど。」
<一個まるっと使うとよいぞ?そ奴ほど衰弱してるなら量の規制は不要じゃ>
<主、ハイレンは固い。私がつぶして飲ませよう>
「有難うフェニックス」
<私は王太子の治癒能力を上げて回復を促しとくわ>
「セラフィム有難う。」
<じゃあ儂はこの王宮の者に感づかれぬよう細工をしとくからの。>
「助かるわサタン」
<礼には及ばぬ。カナエは王太子が回復しないと心向け続けるじゃろ?儂等は儂等の方を見てほしいからさっさと治すんじゃ>
気が利くと思ったら、そういうことだったらしい。ちなみにファヌエルとバエルは情報収集に出ている
そうこうしている内に色々あったからか、あらがえず何時の間にか牢の壁に寄りかかり眠っていた
夢を見た
当たり前の生活を送っていた時の事
なんとなくで入学した学校は思っていたより楽しくて、将来はこの方向で進むのも悪くないと思っていた
あと数カ月で2年間の学び舎を卒業し、就職していくはずだった
友達だっていたし親兄弟だっていた。生憎恋人も好きな人もいなかったけどそれなりに日々満足して生きてきた
当たり前の生活が崩壊するのは、自分が思っていたよりショックだったようで、そんな夢を寂しく見ている客観的な自分がいた
―責めて良い―
-見守り続けていたからわかる。お前は飛ばされるべきではなかった-
―アレ(・・)だけ飛ばせばよかったのに、お前を巻き込まざるを得なかった―
―すまない・・・だが出来るなら、幸せになってくれ―
響いた声に不思議と驚きはなかった。夢だから、なのかもしれないし、最早驚き疲れたから動じなくなったのかもしれない。
―アレってのが激しく気になるけど、仕方ないよ来ちゃったものは。それに最悪でもない。
楽観主義が私の代名詞だから、ダイジョウブ。時が来たら嘆いたり、するのかもしれないけど・・・今は前向きになるしかないもの。大丈夫よ。幸せになるわ。
幸せなんて高望みしなければその辺に転がってるものなのよ―
―そういうそなただから、平穏であれと望んでいたのだよ。また(・・)会おう―
目が覚めた時どなたかに見下ろされていた。
「どちら様でしたっけ?」
「・・・・・お前が助けてくれたのだろう?」
「あぁ・・・王太子サマ?
寝てる女を見下ろすなんて結構な趣味ですね」
「今、起こそうと思っていたところだったのだ。他意はない」
どっこいせと起き上がる
<じゃあ皇太子を元の牢に戻すぞー>
「あれ戻すの?」
<治療は終わったんだもの。妥当でしょー。はい水>
「有難うセラフィム」
<戻したら、そろそろこの牢から出ましょう。いい加減主にこの世界を見て頂きたいし、何より主を牢に入れ続けるなど言語道断>
「無口はどこへ言ったの?フェニックス」
<でも同感よぉ・・・湯浴みもしたいでしょ?カナエ>
「それはしたい」
「一寸待ってくれ」
「?」
「先ほどから、君が連呼してる名前が精霊の名前なのか?」
「・・・見えてないんですか?」
「生憎私は生まれた時から魔力の量が少なくて魔術師の訓練は受けなかった。
しかしもしその精霊の名前が本当なら、君はとんでもないな」
「・・・・・・言葉交わして数分の人間にとんでも扱いされたの初めてだわ」
「気に障ったなら謝罪する。
しかし、光の精霊の3大精霊の名前と闇の精霊72柱の中でも力の強い精霊の名が出たら、誰もが驚く」
王太子の言葉に何よりまず思ったのは、闇の精霊72柱についてだ。まさしく地球にあるソロモン72柱のようではないか。・・・地球とは似かよった所が有るのかも知れない
三大精霊というのはとりあえず聞かなかった事にしておく
「そのような精霊を使役する貴女に御願が有る。
どうか私も連れ出して頂けないだろうか」
まぁ妥当な願いだ。王太子残して脱出するのもどうかと思うしとサタンを見る
<面白くはないがこ奴を残してカナエが後々責められることになったら嫌じゃな。>
<仕方ないわね。途中で捨てましょう>
「それでも十分私恨まれるから。普通に送りましょう」
<主が望むなら>
<まぁ俺らカナエ様の僕だし。異存はないよー>
<ご主人様が望まれるのでしたら。>
予想通りの展開ですよね・・・・