世界
まともな食事も水もなく夜がやってきた
「虜囚ってこの世界ではこんな対応なの?」
<それはこの国が今色々ピンチだから特別なのよ>
「ピンチ?」
<この国はねぇ長い事人種差別と国民至上主義を謳っててね、他国の者や人ではないものに殊更厳しかったワケ。とうとう隣国のそれも大国と言われる国の王太子を捕らえてしまった時から、世界中から切っ先が向けられたの。
だから今、この国に近寄る者は危険人物として捕らえられるってわけ>
「・・・アホとしか言えないんだけど、その王太子をなんで捕らえたの」
<王太子が国境付近にいて、丁度目にとまった事件に関わってしまったんじゃよv>
「・・・サタン、唐突に出現するのはやめて頂戴」
<すまん。面白そうな話をしていたのでな。ついふらふらと。>
「・・・・・・・・・・はぁ・・・で事件って?」
<この国の中で丁度獣人族が処刑に合う所だったのよ。罪状を聞いた瞬間、駆けだして乱入し、獣人族を逃がした。
国王は怒り心頭で捕まえちゃったわけ。>
「嫌な予感するけど、罪状って?」
<税金を支払わなかった罪。この国ではこの国の民以外にはびっくりするぐらい課税されるんだよー。10倍?だったかな。獣人族になると15倍。>
「・・・・・・・・それで乱入して捕まった王太子は?」
<隣にいるが?>
「・・・・・・・・・・はい?」
<ここは王宮の地下牢だと伝えたろう?王太子は隣の魔術の掛けられた牢で目隠しされ芋虫状態で転がっておるぞ>
「王太子が芋虫・・・」
頭抱えたくなった。
<カナエが助けたいなら助けようか??>
こてん・・・と首をかしげるセラフィムにぜひお願いします。と伝えたのは当り前だろう
あっという間に隣の牢のあると思われる石壁に消えたセラフィム
「魔術って精霊の関する事ではないの?」
<力の弱い奴なら阻めるぞ?じゃがセラフィムぐらいの実力が有れば問題ナイナイ>
<カナエ、魔封じの術がかけられてるみたいなの。私が送る分には送れるんだけど、彼が受け取れないみたい。
こっちの牢に転がしても良い?>
「普通に連れてきてください」
どうして精霊はこうも野蛮なんだ
<主、野蛮なのではない。我々精霊は主人以外に欠片の興味も抱かないのだ。>
フェニックスのセリフにそうですか・・・と疲れたように息を吐いた
・・・どうして言葉に出してないのに通じちゃうんだか
セラフィムが連れてきた曰く王太子は本当に芋虫状態だった
おまけに衰弱しているのか身じろぎする動作がひどくゆるい
「とりあえず出来る範囲で応急救護ね」
王道ですね・・・