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いつか君の名を喚んで ~題名のない物語シリーズ~  作者: はつい
第Ⅰ章:かくして彼は立ち上がる。
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かくして彼は佇む。

更新予定等は活動報告に記載してますので、そちらをどうぞ。

ところで、芽衣ってプロットの段階で存在しなかった事に今更気づいた(爆死)

 結局、拓弥は"芽衣お姉ちゃん"というフレーズを芽衣に請われるままに夕食まで言わされ続けたのである。

早苗はその間中、ニタニタと笑っているだけだったし、夕食当番でその場にいなかった源さんは疑問符が頭に浮かび続けていた。


「ごちそうさまでした。」


 夕飯の後片付けは拓弥の担当だった。

夕食まで頂いてバイトでお金を貰っていると、流石に夕食後の後片付けくらいはしなければと思った末の立候補だった。


「こ、今宵は私がオマエに稽古つけやるからの。ちゃ、ちゃんと懇切丁寧に。」


 皿を洗っていると、デレデレに惚けた芽衣が声をかけてきた。


「稽古?結構ですよ、面倒だし。」


 あっさりと"対芽衣用ツンモード"(早苗命名)で却下する。

稽古と言ったら、聞こえがいいが只の説教である。

技術など、トライ・アンド・エラーで見よう見真似で得てゆくもので、芽衣が言っていた手取り足取りなんて言う簡単な事はない。

基本的に心構えのような精神修養と歴史的な話がほとんどだ。

別に思考するという事は嫌いではない拓弥だが、歴史というのがやはりどうも・・・。

それに今日はほとほと疲れていた。


「・・・面倒じゃと・・・?」


「別段、職人になるワケじゃないし。」


 元々そのつもりで始めた修行じゃなかった。

それとは別の目的で自分は早苗達に修行をつけてもらっていたのだから。


「あ、拓ちゃん道場の掃除してくれた~?」


「あ!忘れてました!」


「こらぁ~、神棚の掃除だけはして来てよ。」


「はい、只今~。」


 さっさと皿洗いを終えて、固まっている芽衣の横をダッシュで通り過ぎる。


「全く、何でもソツなくこなせる割りには抜けてるんだから、拓ちゃん。」


 芽衣の横を通り過ぎ、台所にある冷蔵庫から牛乳パック(1リットル)を口飲みする早苗。


「早苗ぇぇ~っ。」


「何よ、芽衣?そんな人を呪い殺しそうな目ぇして。」


 喉を鳴らしながら、牛乳を飲みまくる早苗の胸が小刻みに揺れる。


(アレか・・・あの乳で拓弥を甘やかし、あまつさえ誑かしておるのか・・・。)


 確かに早苗の胸の大きさに比べたら、芽衣の胸は月とスッポン状態だ。

どちらが月で、どちらがスッポンかは推して知るべし。


「私が、私がどれ程に心を砕いておるかわかっておるのか!」


「んぁ?拓ちゃんに?そんなのバレバレじゃない。もう拓ちゃんが可愛くて可愛くて毎晩添い寝したいくらいなんでしょ?」


「なっ?!」


 誰もそこまでとは言わないが、そこまでのレベルでバレバレなのかと愕然とする芽衣。


「も、もしや・・・?」


「ん?拓ちゃんに?さぁ~どぉ~だろぉかなぁ~?」


 先程の芽衣と拓弥のやり取りを見ていたせいか、早苗は彼女をイジるのが久々に楽しくて仕方ない。


「知ってるかも~。もしかしたら『芽衣さんを傷つけずに断るのはどうしたいいんだろう。』とか思ってああいう態度なのかな。」


 実際はただのド天然なだけなのだが。

何故か、それが芽衣に対してだけはツンデレ状態で伝わってしまう。

早苗自身に被害が無いからこその楽しさだ。


「そ、そんな事は!」


「無いとも言い切れないでしょ?拓ちゃん優しいから。」


 それ以前に気づいてすらいないのだが。


「・・・なんてね、冗談よ。でもね、芽衣?私達は彼をまだ愛しちゃいけないのよ?」


「それが良いのか否かなど、後々当人同士が決める事であろう?!」


 突然にシリアスになる早苗に芽衣は声を荒げる。


「拓ちゃんは、これから先に必要になるモノを取りに来ただけ。自分が自分で居続ける為にここに来たのよ?」


「だから私等はそれを与えるだけ与え、指を咥えて見続けておれと言うのか!」


「拓ちゃんが自分で決めて、自分で後悔無くやれる所までね。どの道、拓ちゃんはここから出ていくと思うわ。」


「いずれ必ずな・・・そうであろうな。」


 自分達は、彼の止まり木で彼の踏み台。

そうでなければ、ここまで自分達が彼に拘る事は無かっただろう。


「ま、でも。出て行こうが何しようが、拓ちゃんは私をお姉ちゃんって呼んでくれるからね~。」


 にっこりと微笑む早苗。


「そ、それは私もだ!」


「アンタは辛うじて。でしょ?」


「ぐぬぬ。」


「さ、拓ちゃんが居る間に沢山甘やかしてこよーっと!」


 早苗は飲み終わった牛乳をゴミ箱に投げ捨てると、道場に向かって走りだした。


「ちょっ、卑怯な!早苗待て!それか!その乳で甘やかすのか貴様ッ!そうなのだなっ!させるかっ!!」


 脱兎の如く走り出した早苗をこれまた全速力で追いかける芽衣なのであった。




「よし、神棚掃除終わり。掃除するの忘れてて、どうも申し訳ありませんでした。」


 神棚に向かい拍手を打ち礼をする。

一応、二礼・二拍手・一礼。

別段、拓弥はそこまで信心深いワケではない。

科学が発達した現代で、宗教なんてと思う所もある。

でもマイトとキャスター、現代の魔法使いなんてフレーズがあるくらいだ。

もしかしたら、神棚にも何か宿っているのかも知れない。

そうちょっぴり思ったりもしている。


「ふぅ・・・。」


 道場のど真ん中で座禅を組む拓弥。

何故か道場に来ると気持ちが引き締まる。

精神的に落ち着く。

きっと、この場所に源さんがいて、早苗さんが居て、芽衣さんがいたから。

皆に色々と教えてもらった場所だからなのだろう。

ここには自分という存在が染み付いている。

何処にも居場所が無かった自分の。


「ハッ!」


 座禅から立ち上がり構える。

源さんに教わった構えだ。

出来る限り自然に出来る限り最初の一歩をスムーズに動ける構え。

目を閉じる。

左手を心持ち引く。


「此に恭しく奉る。」


 芽衣に教えてもらった精神修養の基本。

受け入れ、自分を介在させ、己の全てを注ぎ、次に受け継がせる。


-パンッ!-


左手と右手を合わせ溜め・・・


「セイッ!」


 右手を突き出す!

最後は早苗に教えてもらった精神修養だ。

力は力であっても力にあらず。

それに流れを与えて何かを成すには、己の心が必要でそれを研ぎ澄ませねばならない。

静寂。


「結局さ・・・自分以上の力なんて誰にも出せないんだよね。」


 それがここに来て学んだ事。


「何時でも、どんな場所でも、平常通り自分の力を出し切るってコトか・・・してなかったよなぁ・・・。」


 何時も中途半端で・・・諦めてばかりで・・・鬱屈して・・・。


「だからダメなんだよ・・・。」


 ここに来て、自分の心の中で多少の整理がついた。

自分が自分らしくあろうとしなかったから、こんな事になった。

それは理解した。


「でもさ・・・やっぱり力なんて要らない。そんなものがあっても何も変わらない。そんなモノで変えちゃいけないんだ。」


 もう一つの結論は、"自分は自分が大嫌いだ"という事だった。




「甘やかすのでは無かったのかえ?」


 道場の入口で拓弥を見詰めていた早苗に芽衣は声をかける。

勿論、拓弥が気付かない程度にだ。


「拓ちゃんはさ、それでも"力"を使わないんだね。」


「アレはアレで相当頑固だからな。じゃが、そういう考えも甘いが嫌いではないぞ。」


 溜め息を尽く早苗。


「まぁ、一つの考えっちゃ考えだよね。」


「それでもアレは追い詰められたら、泣きながらでも這いつくばっても戦うな、きっと。」


「相手を傷ける事に痛みを感じながら?」


 微かに震える早苗の腕を芽衣が掴む。


「なんじゃ?今更後悔しておるのか?優しさ故に傷つき泣くのならば、拓弥は力に溺れたりはせんというコトの証。」


「違うわよ・・・力に溺れないから、力に祝福されるのよ。」


「わかっておるではないか。だから私等は喜んでアレの傍におるのよ。」


「そうね・・・さっきの話だけれど、アタシは最後に拓ちゃんが選んでくれるなら、喜んで受け入れるわ。」


「ふむ、それも今更じゃの。斯様な事は私も同じ。では、私は甘やかしてこよう。」


 暗くなるのがわかっていたので、強制的に会話を打ち切り芽衣は道場の拓弥に向かって走り出した。


「何をダラダラしておるのだ!こんな所にずっとおっては風邪を引くぞ!おぉおぉ、こんなに冷えて。」


「うわっ、芽衣さん、くっつかないで!暗いから危なっ!」


「芽衣さんではない!芽衣お姉ちゃんであろう!!」


 暗闇の道場で、ドタバタと足音だけが聞こえる。


「チッ!ヤラれたわ・・・こぉ~らぁ~二人で何をトダバタしてるの!!」


 二人がいる場所に向けて慌てて早苗も走り込む。


「お姉さんも混ぜなさ~いっ!」


「って、早苗さんまで!危ないって!」


「早苗お姉ちゃんでしょー!」


「くっつかないでって、ちょっ、何処触ってんの!今の誰?!」

もう学園編にさっさと行きたくなったので、足早に場面転換していきます。

がっくり。

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