かくして彼はツンデレる。
新話投稿日(24時間以内)のユニーク集計が、ある一定を下回ったら打ち切る事決意しました。
ジャンルの学園は・・・多分、16話以降くらいになると思うよ(爆死)
それまで続いてればなっ(トオイメ)
「どこからこうなったんだろう・・・。」
風呂場まで引き摺られて行った拓弥であったが、先に入浴を済ませて涼んでいた早苗に脱衣所で阻止され事無きを得た。
「どこからも何もねぇ、アタシにはアレがどうしてああいう行動に出たかがわらないわ。」
肌を朱色にほんのり染めた早苗が、問いに答えるが答えになっていない。
「昔からアレは、予想の斜め42度を行くのよね・・・。」
アレというのは現在(一人で)入浴中の芽衣だ。
「普通45度じゃないの?」
素朴な疑問。
確か、よく聞く言い回しはそうだったよな?と心の中で確認しつつ・・・。
「45度を8セットだったら、一周出来るでしょ。」
「あぁ・・・。」
つまり、一度ズレたらどうやっても修正出来ない角度という事らしい。
「ん?42度でも180セットなら7560だから、25周すれば戻ってこられるんじゃ?」
「拓ちゃん、暗算したの?25周回るまで耐えられるならいいわよ?」
「うぅ・・・ごめんなさい。」
暗算しただけ労力の無駄だった。
「ま、わかる事は拓ちゃんのせいだわ。」
チラリとそして楽しそうに目線を向ける。
「え?」
「同性・同世代で同じ職人。昔からアレはアタシに張り合ってた節があるからね。」
「それと僕がどういう・・・?」
「拾ってきた犬が、張り合っているアタシにばっか懐いて、自分に懐かなかったらムカつくじゃない。」
「はぁ・・・て、それは僕のせいじゃなくて、早苗さんのせいじゃ・・・ふがっ。」
言い返そうとして、早苗に鼻を摘まれた。
「そこをどうにかするのが男の甲斐性じゃない?」
責任転嫁だ。
拓弥はすぐにそう思った。
どう考えても原因の割合は早苗の方が多い。
第一、自分は芽衣にも早苗以上の敬意を払っているし、きちんと受け答えもしている。
更に言うなら、敬意の量は早苗の比ではない。
と、すればどう考えても早苗のせいではいか。
その考え自体が既に問題で原因なんだという事は、全く考えが及ばない。
「か、甲斐性なんてあるワケないでしょ。こんな僕に。」
あればもっと勇気が持てただろう。
少なくとも悲しそうに見送られた少女に、『行くな。』とか最低でも『頑張れ。』とかは言えたハズだ。
「あらら、何にでも決め付けは良くないわよ。先入観と同じで躓くモトよ?」
実は貴女と出会った事が人生躓き始めたモトだったんじゃ・・・と一瞬だけ浮かんだ。
「ふぎゃっ。」
今度は鼻を指で弾かれる。
「何を?!」
「今、何かカチンと来る事考えたでしょう?」
(ぐぬぬ・・・。)
「本当、こんなにわかりやすくて素直なコなのに、何でアレは曲解していくかなぁ?」
芽衣と一緒に入浴。の会話の流れを聞き出した早苗は、しきりに首を傾げている。
「猪口才な・・・。」
「「?」」
背筋から、何やらドス黒いオーラを感じる。
実は新たな力に目覚めたか?!と、拓弥が錯覚しそうなオーラだ。
「人を一人で入浴させおきながら、二人でそのように仲睦まじくしおって・・・。」
何やらよくわからないオーラとか炎が燃え盛っているのが何となく拓弥にもわかったが、その引き金が何なのかイマイチわからない。
「芽衣さん、何を言ってるんですか?」
突っ込むポイントが良く理解出来ていない拓弥は、とりあえず原因究明をしようと試みる。
だが、彼はついさっきの会話を忘れていた・・・25周しないと原因究明など不可能なのだ。
理解できようハズがない。
少なくとも拓弥にとってはだが。
「オマエもオマエだ!何故、早苗ばかりなのだ!何が私と違うというのだ!」
丁寧語自体も芽衣にとっては油に等しいという事を拓弥は全く理解していない。
「な、何がって全然違うじゃないですか。全く別者です。」
「なっ?!」
「あちゃぁ。」
芽衣はピタリと硬直し、早苗は手で顔を覆う。
早苗にとってはよく理解出来る事でも、拓弥にとっては全く理解出来ないのだ。
拓弥の意図するところは、"早苗は早苗、芽衣は芽衣、違って当然で比べようもない存在。"
しかし、これを芽衣の解した意図(通称:芽衣フィルター)では"早苗と芽衣では比べる以前の格差があって話にならない。"
と、こうなる。
「う・・・。」
「う?」
「うぅ・・・。」
気づくと芽衣が瞳いっぱいに涙を溜め始めている。
(え?えーッ?!)
何で?!
これが正直な拓弥の脳内である。
構図としては、15歳の少年が片手以上は年上の女性を泣かせている状態。
「あーあ・・・。」
眺めている分には面白かったが、まさかここまで拓弥の脳内と芽衣の脳内が噛み合わないとは早苗も思ってなかった。
きっと、今の芽衣には"拓弥=早苗ばかりを慕って、どんなに愛情を注いでも見向きもしてくれないが嫌いになれない男"
これが拓弥という人間像になりつつあるのだろう。
(面倒だなぁ、コレ。)
早苗は頭が痛くなってきていた。
「ちょっと、拓ちゃん?」
「はい。」
仕方なく早苗は彼を近くに呼び耳打ちをする。
「え?!そんなんで?!」
「いいから、早く。泣いたら取り返しつかないから。」
「は、はぁ・・・あ、あの、芽衣・・・お姉ちゃん。」
恐る恐る早苗に言われた通りにそう呼んでみた。
「ぐすっ・・・今、なんと・・・?」
「いや、だから芽衣お姉ちゃん。」
「お姉・・・ちゃん?」
「はい、"僕の"芽衣お姉ちゃん。」
"僕の"がミソでトドメだった。
そのフレーズが彼女の脳内をぐるぐると駆け巡り染み込んでいく。
後に、早苗曰く"芽衣に対してツンだった拓ちゃんがデレた瞬間"と新たにからかわれるネタになった事件の顛末。
別に拓弥の場合はツンデレでも何でもないんですけれどね。
あ、25周の話は、最小公倍数かどうかは自信がありません、ゴメンナサイ。