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いつか君の名を喚んで ~題名のない物語シリーズ~  作者: はつい
第Ⅱ章:こうして彼は一歩を踏み出す。
33/36

こうして彼は渡される。

「今度は何?」

 瑠璃会長の水を挿すような言葉に、イラだつ拓弥。

もう、決着がどうなろうと、さっさと終わりにしたいと思っていただけに。

「帳君、彼はまだこの学園に入って、日が浅いわ。」

 キッと、帳を正面にして明確に言葉を吐く。

「それは承知している。」

「彼はまだマイトがいないの。」

(だから、その話はしたじゃん。)

 とっくに終わった話題をここに来て、再度出された事にげんなりした。

「だから?」

「彼に私が一回分の力を創るのを許して欲しいの。勿論、貴方も一回分創っておいて構わないわ。」

 今度は拓弥が呆然とする番だった。

つまり、瑠璃会長がマイトとして、一回分だけの力の創造。

それだと帳が不利になるので、帳もあらかじめ一回分だけ力を創造してもいいという戦い方。

「勿論、私は立会い人だから、決闘が始まってそれ以降は、何もしないわ。」

 最初の状態は、とても公平な気もするが・・・。

(それって、確実に一発は打ち合いになるってコトじゃん・・・。)

 どういう戦い方をするかは別として、互いに一発は何時でもブッ放せる状態というは、穏やかじゃない。

穏やかな決闘があるかと言えば、ないのだが。

「何て、余計なコトを・・・。」

 思わず拓弥は呟いた。

「素晴らしい!なんと慈悲深い会長の心!」

(は?)

 完全に力が抜けた。

帳が涙を流さんばかりに(一人で)感動しているではないか。

「あぁ、でも、それじゃあ、前と同じで会長のお陰で勝てたとか言うんじゃ・・・。」

 そもそも決闘を決定づけたのはそんなような流れでは無かっただろうか?

拓弥は、帳の色んな意味での素晴らしさ加減にげんなりだった。

「では何か?キサマはこの会長の慈悲深き心を無下にしろと?」

 何故か帳に睨まれる。

「そんな事がこの私に出来ようか、いや出来ぬ!」

 見事な否定形の使いまわしに、呆れる拓弥。

わざわざ自分の確実かつ決定的な有利を不意にしようとする帳の気持ちは、拓弥には理解し難いモノだった。

「じゃあ、それでいいわね。」

「無論。」

「何故、今度はそんなあっさりと・・・。」

 帳の思考回路がわからない拓弥。

しかし、周りからしてみれば拓弥の思考回路も理解不能な事が多いというのは、自覚出来ないらしい。

「というワケで、何がいいかしら?」

 帳から離れ、拓弥に質問してくる瑠璃会長。

「何が?」

 瑠璃会長の発言の意味は理解している。

マイトとキャスターには、扱うに得意な属性と不得意な属性が存在するからだ。

それ故、扱える属性が多ければ多い程、引く手数多になる。

瑠璃会長の言い方、複数の属性が使えるという事に他ならない。

「ちなみに会長のお得意な属性は?」

 渋々聞いてみる。

「一応、"天属性"だけれど。」

(天って・・・。)

 拓弥は心の中で苦笑いした。

天属性は、そもそもが一つの属性を指しているというものではない。

風・雷・水の3つの属性をある一定以上のレベル使いこなせているという者が持つ総称の属性だ。

あらためて、瑠璃会長の優秀さを垣間見た気がした。

「んじゃ、雷で。」

「貴方、雷属性なの?」

「さぁ?」

 そう言えば、一度遠い昔にそんなような話題を芽衣さんとした記憶があると思ったのだが・・・。

思い出そうにも内容を綺麗さっぱりと忘れていた。

ので、あっさりと思い出す作業を放棄。

(使う気なんて無かったからなぁ・・・比べたり試したりした事ないしなぁ・・・。)

「多分、この場所では雷≧風>水の優先順位かなぁと。」

 何しろ場所も狭いし、拓弥自身の戦闘スタイルの問題もある。

「考えているのか、考えてないのか、随分と曖昧なのね。」

 苦笑いしながら、拓弥を見る瑠璃会長。

しかしそれは、拓弥と話した事がある人間なら、誰しもが一度は抱く感想だった。

次回!決闘完結!

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