こうして彼は食事する。
「しっかし、本当に良かったんか?」
「ふぁには?」
「・・・飲み込んでからでえぇ。」
拓弥達3人は、今、学食で昼食を食べている。
資本が国で、最先端の技術を学ぶ施設だけあって、この学食は基本無料だそうだ。
それを聞いて、こ踊りした拓弥は現在オムライス(2杯目)に挑戦中。
今までは、生活費全般は本当に節約して節約して使っていたから、これには涙がちょちょ切れる。
しかも、食べたオムライスの卵の半熟トロフワ具合と言ったら・・・。
というコトで2杯目なのである。
「んぐっ、で、何が?」
「教室に置いてきぼりで。」
飛鳥は、拓弥の食べる速度の早さに呆れながら、片肘をついている。
「ん?誰を?」
「・・・拓弥、本気って言っとるんか?」
半ば呆れたように猫目を細めて睨んでくる。
「本気と言われてもなぁ・・・。」
「言われても?」
ぐぃっと乗り出してくる花鈴。
相当、興味があるらしい。
「楽しそうだね、花鈴。」
「何を言ってんだか。オンナノコは恋話は大好物なの。」
目がキラキラしているのを見ると、本当に興味津々らしい。
「あんま追い詰めんなや。」
「何よソレー、さっきまで自分だって聞いてたくせにっ。」
今度は飛鳥に喰ってかかる。
「オマエのは野次馬根性やろ?ワイは心配してるだけや。」
何処までもイイヤツなのかも知れない。
既に二人の会話をスルー気味に拓弥は3皿目のハヤシラシスを食べている。
「男同士でイカガワシイぃ。」
「アホかっ!」
「うまー。」
ハヤシライスも絶妙な味だったらしい。
「「で?」」
「ん?」
一人で素っ頓狂な声を上げていたのを見咎められて、二人一緒に喰ってかかられるハメに。
「んー、オムライスにハヤシのルーかけられないかな?」
「だぁっ!」
食券を買うワケじゃないんだから、実は頼めば出来るんじゃないだろうかと、真剣に考えていた。
「あんなぁ・・・。」
完全に呆れている。
「それはそれで美味しそう♪」
「オマエも乗るなや!」
こうやって飛鳥は毎日のように花鈴に突っ込んでいるんだろうか?
体力よくもつなぁと、拓弥は一人で感心する。
「というか、人違いだったんじゃない?僕、うつ伏せだったし。」
「・・・言うに事欠いて人違いかい。」
「もっとマシな嘘をついたら?」
二人して突っ込まれた。
どっちかボケをカマして欲しかったのにと心の中で思う。
「・・・ね、二人もさ、そういう事にしておいてくれないかな?あの人は僕の知らない人なんだ。」
嘘をついているワケじゃない。
今の瑞穂は、本当に自分の知らない瑞穂なんだ。
この学園にいる間は、全く知らない少女。
自分を置いていった少女のままなら、それでいいと拓弥は思っていた。
その方が、対処も面倒にならないし、楽だし、何より彼女を責めたてたりは少なくともしないだろう。
「答えになっているようで・・・。」
「答えになってない気がするね。」
意外と相性いいな、この二人。
そう思って、二人がパートナー同士だという事を思い出した。
「たー君がそう言うなら、聞くのは止めとくけど。」
「まぁ、そうやな。無理に聞くなんて、ドアホのするこっちゃ。」
二人共意外とあっさり引き下がった。
いや、引き下がってくれたのだろうという事を拓弥は心の中で感謝した。
「んでも、多分、アレ、ランカーやろ?」
「らんかー?」
ランカーというとランキングでもあるんだろうか?
(確か実力主義だったな・・・。)
「何?成績優秀者?」
つまりはそういう事なんだろうと思って聞いてみると、二人共頷いていた。
「へぇ、それってどうやって選抜されるの?」
別段、自分が選抜されようとは思わないが、多少の興味はある。
どうせ面倒な事をやってのけないといけなのは、聞かなくてもわかりきっている。
「それなら、私が教えましょうか?」