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いつか君の名を喚んで ~題名のない物語シリーズ~  作者: はつい
第Ⅱ章:こうして彼は一歩を踏み出す。
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こうして彼は途方に暮れる。

さてさて、これからどうなって行くんでしょうかね?

皆様の閲覧がある限りは続けていきたいと思っていますが・・・。

国立東王紫銀学園こくりつとうおうしぎんがくえん】(高等部・中等部校舎)

デカデカとそう書かれた門構えの前で、うずくまる人影。

ご存知、やる気0の男。

月臣つきおみ 拓弥たくやだ。

「逃げたい・・・。」

 一昔の前のアニメで流行った気がした(当然、間違い)フレーズだなぁと思いながら、彼は既に挫けていた。

当然、脳内は何でこんな事になったんだ?という事に尽きる。

「学園ね・・・。」

 数年前、自分と大好きな幼馴染を引き離した存在。

そして今、自分と大好きな家族を引き離した存在。

良い気分などするはずがなかった。

自分はこれから、この存在の中で生きていくのだから。

「本当、理不尽だなぁ・・・。」

 ふと、そう言えば理不尽の原因は"幼馴染の瑞穂"のせいだという事に今更気付く。

更に例の"銀パッツン"(拓弥命名)も"ミスターナルナル"(これも拓弥命名)もこの学園に在籍しているのだ。

気が重くならないハズはない。

「何だ、ぐったりしていいんじゃん、僕。」

 そう思ったら、立ち上がる気力も根こそぎ奪われた。

ここまで来るのにだって、彼は相当の体力を使っていた。

特殊能力の養成機関も備えている学園は、その機密性と特殊性故に山間部に建設されていた。

勿論、全寮制だ。

学園の施設と寮以外は全部自然。

「・・・空が青いなぁ。」

 拓弥的には、大自然は嫌いじゃない。

寧ろ、好きな部類に入る。

どうせ学園や寮に入れば、設備は最先端のモノだし。

生徒を逃がさない為の自然も、自分とは相性がいいとも考えていた。

外出届とかの規定はわからないが、一日山で過ごすのも悪くない。

ただ・・・。

「何かムカつくんだよなぁ・・・門構えも偉そうだし。」

 一発ブチかましたり、破壊を試みようとか思わないでもない。

出来る出来ないは別として、疲れるのでやらないが。

「大体・・・進んで来たいワケじゃないんだから、迎えぐらいあっても良くない?」

 強制的に収監されるのだったら、ちゃんと迎えに来いと思うのは自分だけだろうか?

何というか、これからそういう常識的な考えさえ矯正されていきそうで嫌だ。

全力で断ろうと思っているが。

何故なら、別に拓弥は望んでいるワケではないのだから、成績も最低ランクで構わない。

一応、勉強して卒業すれば門に書いてある通り高卒の資格は取れるのだ。

なまじ本気で、通常の授業以外は寝たりサボったりして過ごそうとかも思ったりしている。

「悪い考えじゃないな。」

 大体、この校舎にいては何時また瑞穂に会うかも知れない。

同学年である以上、それは避けられない。

その時、どういう顔をして会えばいいのだろう?

拓弥の中では未だに許せない怒りの部分と、諦めの混じった諦観の部分がある。

いずれにせよ、振られた男の心境ってこんなんだろうなぁ程度の認識。

もう無関係の赤の他人でいいじゃないか。と思う自分までいる。

とうとう対人関係にまで気力ゲージで表示されてきたらしい。

「あ・・・彼女もここにいるのか・・・。」

 漆黒の髪の可憐な少女。

彼女の何処か寂しそうな、自分と同じように諦めたような表情が思い浮かぶ。

でも、彼女は自分と同じではない。

自分の話しを聞いてくれていた時、彼女は優しくて温かい目をしていた。

今の自分じゃ、きっとそんな目は出来ない。

きっと今の自分はとても濁った目か、さもなくば荒んだ目をしているんだろうな。

そういう自覚がある。

「何だろ・・・少し、会いたい・・・かな?」

 神社での出来事の後、彼女はすぐさま学園に帰ってしまった。

何でも自分の外出届けの期限が迫っていたらしい。

「雨音さん・・・か。」

 自分でも珍しいなと思っていた。

他人に興味を持つなんて、早苗や芽衣や源さん以来な気がする。

何がこんなに引っかかるんだろう?

そんな疑問が浮かんで、けれども答えがわからなくてイライラする。

「ま、いっか・・・。」

 結局、放置。

後ろ向きなのか、前向きなのか。

思慮深いのか、単純なのか。

学園に来ても拓弥の"慎重と臆病紙一重"は変わらないらしい。

「とりあえず、"ミスレイン"と命名しよう。」

 これまた一昔前にあった少女漫画のようなあだ名を命名して、一人納得する拓弥。

これで我ながらなかなかいいネーミングだと思っているのだから、目も当てられない。

どうやら、あだ名を考える労力<名前を覚える労力という図式らしい。

こんな状態で、彼はこの学園で生活していけるのだろうか。

それよりも、何時になったら校舎内に入る事やら。

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