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いつか君の名を喚んで ~題名のない物語シリーズ~  作者: はつい
第Ⅱ章:こうして彼は一歩を踏み出す。
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序。

祝!新章突入!

果たして学園編なのぞ、私に書けるのか?!新キャラは皆に受け入れられるのか?!

「何か・・・理不尽だ。」


 神社での出来事からはあっという間だった。

瑞穂は凛に促されて学園に帰って行ったのは良かったと拓弥は思う。

ただ、帰り際まで一言も話さなかったのには拓弥にとってはヘコむ事だったが。

まさか、同じように彼女がヘコんでいたとは全く思わない拓弥だった。


「あら、大人になったわね、拓ちゃん。世の中は理不尽で溢れているものよん。」


 さらりと拓弥の愚痴を流す早苗の声に彼は、持っていた荷物を落としそうになった。

何が大人になっただ。

理不尽さを演出してのけたのは、自分じゃないか。

と、思っても口には出せなかった。

出した所で何が変わるワケでもなかったから。


「何時の間にオマエは大人になったのだ?早苗と二人で帰って来た時か?!」


 芽衣が何時もと同じような反応をしてきたのが、疲れる反面、何時も通りで少し嬉しかった。

疲れる事には変わりはなかったが。


「早苗"さん"に虐められただけです。」


「早苗"さん"?」


 案の定、早苗が噛み付いてくるが、それは拓弥にも予想内の範囲だった。


「僕のお姉ちゃんは、芽衣お姉ちゃんですから。」


「なっ?!」


 どうせ、こういうやりとりも学園に行ったら無くなるんだ。

拓弥はそう思っていた。

言われた芽衣は、顔を赤くして戸惑っているのがわかる。


「ほほぅ・・・いい度胸じゃないの、拓ちゃん。」


 少し目が据わった早苗が、指を鳴らしながら拓弥に迫ってくる。

これも彼の予想範囲内であった。

それ程、親密に過ごして来たんだから。


「芽衣お姉ちゃん助けて~早苗さんが虐める~。」


 わざとらしく声を上げて、拓弥は芽衣と腕を取り、そしてそのまま彼女の背に隠れるような仕草をする。


「くっ?!」


 拓弥のこの行為はどうやら早苗にとっては予想外だったようだ。


「うむ。姉としては弟を虐める輩は懲らしめてやらんとな。」


 上機嫌になった芽衣が、早苗の前に立ちはだかる。

無い胸を目一杯張って。


「拓ちゃん卑怯よ!芽衣も拓ちゃんにデレ過ぎ!」


「姉と慕って頼って来る者を邪険には出来ぬものだ。」


 ふは、ふはははとちょっと壊れた笑いを漏らしながら、早苗を睨む芽衣。

芽衣の背後でそんな彼女の様子を見ながら、拓弥は彼女を後ろから抱き締めた。


「ど、どうした?!」


 突然後ろから抱きしめられた事に、ちょっとしたパニック状態になっているようだ。


「僕は・・・絶対帰って来るからね・・・。」


 拓弥は残される者の寂しさを知っていた。


「拓ちゃん・・・。」


「僕にはお姉ちゃんがいるから。ちゃんと芽衣お姉ちゃんのところに帰って来るから。」


 きっと芽衣は自分がいなくなったら、悲しむ。

何だかんだ言って、自分に優しくしてくれて色々な事を教えてくれたから。


「何を言っておる。姉の所に弟が顔を見せるのは当然の事だ。何時でも帰ってくればよい!」


 後ろを振り向かずに芽衣はそう言った。


「ありがとう。」


 何時も彼女達は自分の望む言葉をかけてくれた。

それが拓弥にとって、どれ程救われた事だったか。

拓弥は芽衣の温かさを味わった後、彼女から腕を離し早苗の前に出る。


「早苗お姉ちゃんも、僕のコト忘れないでね。」


 今、自分はきっと笑えている。

それだけは確かだ。

それが、皆と一緒の時間を過ごした価値を物語っている。


「何処の世の中に弟を忘れる姉がいるのよ?そんな薄情な姉に見えるっての?」


 早苗は笑った。

何時もと変わらぬ笑顔だった。


「それじゃ、ま、ダラダラと行ってくるよ。」


「コラコラ、待ちなさいって、まだ餞別あげてないんだから。」


 苦笑しながら、早苗が拓弥の手に何かを押し付ける。


「これは?」


「私達特製の護り刀。」


 一振りの小太刀。


「大丈夫、学園内じゃ銃刀法云々関係ないから。」


 にっこりと笑う。


「これを僕に?」


「あくまでもお守りじゃ。」


 芽衣が拓弥の背中越しから声をかけてくる。


「そか・・・うん、ありがとう。」


 "自分の為だけの"という存在が、とても嬉しい。


「あと、もう一つ♪んっ♪」


 早苗が拓弥の唇にキスをする。


「うわっ?!」


「昔から、乙女のキスは旅の祝福って言うでしょ?」


「だからって・・・。」


 乙女?と、突っ込んだら、死が待っているだろう事が容易に分かったのでヤメた。


「そうなのか。ならば仕方ないな。んむぅっ♪」


 後ろから伸びた手が、無理矢理拓弥を振り向かせ、唇が塞がれる。


「っぷは!芽衣さんまで!」


「我が大切な弟の"拓弥"に祝福を。」


 ニヤリと笑った芽衣の顔は真っ赤だった。

そう言えば、初めてキチンと名前で呼んでくれた事に気づく。


「もう・・・なんだかなぁ・・・。」


 でも、恥ずかしいというより、嬉しさの方が強い。

悔しいけれど、この人達が大好きだ。


「じゃ、行ってくるね、お姉ちゃん達。」


「「いってらっしゃい。」」

 

 かくして彼は立ち上がり、一歩を踏み出した。

次回、学園で拓弥に待ち受けるモノは?

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