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いつか君の名を喚んで ~題名のない物語シリーズ~  作者: はつい
第Ⅰ章:かくして彼は立ち上がる。
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かくして彼は吐露する。

第Ⅰ章も大詰め!

お願いあと2話!

更新予定等は活動報告にて記載しております。

「で、何で君がいるの?」


 憤然としながら帰宅した拓弥は、目の前に起こっている現象に唖然としていた。

目の前に見覚えのあるニットとGパンを身に着けた少女がいたからだ。


「あ・・・この街、地図の場所と、ここと駅しか知らないから・・・。」


「答えになってないよ・・・。」


 だが瑞穂がここに居るよりは、断然マシだ。


「・・・あがんなよ。」


 少女を家に招き入れて、拓弥は扉の鍵を閉めた。

昨夜のリピート・・・と、いっても2回目だが。

2回目?

そのフレーズが拓弥の頭に浮かぶ。


「昨日、言ったコト、覚えてる?ちゃんと言ったよね?"今回は襲わないでいてアゲル"って。」


「あ・・・。」


 ゆっくりと少女に近づく拓弥。

少女の顔は引きつっているのがわかる。


「もう"2回目"だよ?」


 拓弥の手がゆっくりと少女に伸びて・・・。


「痛ッ。」


 少女の額に早苗がするようにデコピンをひとつ。


「女の子なんだから、そういうの気をつけた方がいいよ。」


 そう言うときょとんとしている少女を尻目にふらふらと敷きっぱなしの布団へ歩いていく。


「で、何?瑞穂の事なら知らないよ?僕だって久しぶりに会ったんだからね。」


 そのままパタリと倒れ込む。


「・・・そう言えば、名前を聞いてなかったな。」


 うつ伏せになりながら、横目で少女を見る。

元々、深く関わらないつもりだったので、あえて聞かないようにしていたのだ。


「私は・・・雨音。箕嘉村みかむら 雨音あまねです。」


「僕は月臣 拓弥。で、君も"マイト"とか"キャスター"なの?」


 拓弥にとっては、余り好きではない存在の名を挙げる。


「その・・・。」


「ま、どうでもいいけれどね。興味ないし、関わりたくないし。」


「すみません・・・。」


 関わりたくないのに道案内させた事を謝罪したらしい。


「・・・ただ理解出来ないだけだよ、そういう人達を。」


「理解ですか?」


 珍しく饒舌に喋れた。

もしかしたら、久々に"違う"マイト・キャスターらしき人間を前にしたからかも知れない。


「何で、マイトとかキャスターにならなきゃいけないのかな?そんなに"力"とかって必要?大事?」


 ずっとずっと思っていた。

どうして瑞穂は、その道を選んだのか。

だからと言って本人には決して聞けない事。


「そんなのになる必要なんてないだろ?そんなの無くても瑞穂は瑞穂で、雨音さんは雨音さんだ。」


 ごろんとうつ伏せから仰向けになって、頭の後ろで手を組む。


「そんなモノがなくても、名前を知らなくても道案内だって、泊めてだってあげられる。」


 言っていて拓弥は悲しく、惨めになってくる。


「拓弥さんは、マイトとかキャスターに憧れてるのですか?」


「憧れる?」


 余りにも突拍子もない反応がきたので、思わず起き上がってしまった。


「あはははっ、全然、その逆。そんな者には絶対なりたくない。どうして皆、力に固執したがるんだろうね。」


 それを求め続けて、その先に何があるというのだろう。


「私は・・・自分が・・・そうなる事でしか、家族を守れなかったから・・・。」


『誰かを守れる力なら素敵じゃない。』


 何度も思い返した言葉。


「価値観の違いだってのは理解してるよ。僕は力は恐怖、瑞穂は力は盾で、雨音さんは代償って感じかな?」


「瑞穂さんがどうか知りませんけれど、私はそれに近いと思います。」


 切なそうな顔で俯く。


「そか・・・。で?何で瑞穂を捜してたの?」


「ある人に頼まれして・・・もう一人の方もきっと私と違う方に頼まれたのだと思います。」


「もう一人?あぁ、あの銀パッツンか。」


「ぎ、銀ぱ・・・?」


 どうやら今二つ程ウケが良くなかったらしい、拓弥のネーミングセンスは。


「瑞穂さんは、学園を無断外出しています。そしてそれを私は追っています。」


 学園。

現代の魔法使いと揶揄される"マイト"や"キャスター"は、稀有な存在でその個体数が少ない。

そのせいか、彼等を正しく育てるという"名目"で、国が管理する学園に"収監"されるのだ。

"収監"というのは、比喩ではない。

犯罪を助長する可能性もある為、ほぼ全員が一度はその学園へ通わせられる。

だから拓弥は"鳥籠"と呼んでいた。

能力者は国に飼い慣らされるようなものだ。

彼はそう思っている。

完全管理教育だろうと、彼女は瑞穂はそれを選んだのである。

それ故、行き先を把握出来ない無断外出は、違法行為の何ものでもないのだ。


「あのバカ・・・。」


 拓弥は親指と人差し指でこめかみを揉んだ。


「私は、本当は誰よりも早く彼女を見つけなければなりません。それが命令ですから。」


「・・・じゃあ、何でこんな所に居るのさ。」


 周りくどい言い方は嫌いだ。


「命令ではです。私は本当は・・・そんな事したくない・・・。」


「?」


 泣きそうな顔で言われたので、そこから先の言葉が浮かばなかった。

言葉を考えていると、拓弥の尻が振動する。

正確には彼のズボンの後ろポケットだが。


「ちょっと、ごめん。電話で・・・。」


 雨音には悪いが、基本的に知り合いの少ない拓弥の携帯への電話は、緊急か早苗の暇潰ししかないのだ。


「はい?あぁ、早苗さんなら、え?違う?本当ですかっ?!」


 拓弥はその場で勢い良く立ち上がり、そのまま雨音の手を取る。


「すぐ行きます!ども、はい。」


 携帯を切って、雨音を鋭く睨む。


「瑞穂を見た人がいる。行くよ。」


 電話の主、三須摩の居る三須摩神社へ・・・。

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