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いつか君の名を喚んで ~題名のない物語シリーズ~  作者: はつい
第Ⅰ章:かくして彼は立ち上がる。
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かくして彼は現実逃避する。

良かった・・・また投稿できました。

もうグラフがガタガタで怖いですねぇ・・・Ⅰ章大丈夫ですかねぇ。

 角を曲がった先に一人の少女がいる。

拓弥より背の小さな茶色のセミロングの少女。

その少女が髪と同色の瞳でじっと自分を見ている。

その顔には驚きと喜びがあった。


「瑞穂さん?」


 拓弥と一緒に来た少女が目の前の少女に声をかける。

何がなんだが、拓弥には話しが掴めない。

目の前にいなくなったハズの幼馴染がいて、それに声をかける少女。

別れた頃より成長はしているが、泣き虫の瑞穂を拓弥が間違えるハズもなかった。


「瑞穂!」


 鋭い叫び声がして、瑞穂の後ろから銀髪の少女が駆けてくる。


「やはりここに居たのか!」


 銀髪の少女は昨日、拓弥に道を尋ねて逆ギレさせた少女だ。

同じ場所を尋ねられたのだから、彼女がここにいても何ら問題がないのだが。


(どうしてアイツが・・・。)


「オマエは!」


 銀髪の少女が声を荒げる。


「ははっ・・・。」


 何がなんだかわからないと混乱していた拓弥から、乾いた笑いが漏れる。

混乱の度合いはピークに達していたが、余りにも混乱すると人は笑い出すのだと聞いた事がある。

本当だな、と拓弥は思った。

ただここまでの行き当たりばったりの拓弥の言動を見てきた人間なら、誰でもこの後の彼の言動は想像出来るだろう。


「なんなんだよっ!いい加減にしろッ!!」


 案の定、逆ギレした。

もう付き合ってられない、こんな茶番とばかりにその場から走り去る。


「たっくん!」


「あ・・・。」


「待て!」


 三者三様の声を上げるが、知った事か・・・もうどうでもいい!

何も見たくない!

聞きたくない!

それだけが彼の心と頭を占め、彼は全力でその場から逃げ出していた。




「おぅ、拓坊。サボりか?ちょうどいい、蔵の中のモンの陰干しを・・・。」


「もうやっておきました!」


「うぉっ!」


 拓弥の勢いに思わず源は身を引いた。

結局、拓弥は学校に行く気にもなれずにバイト先で仕事をする事に。

タダ働きでもいい。

頭に血が上り過ぎて、他に行く場所が思いつかなかったというのもある。

今も爆発寸前だ。

全く現代っコと来た日には・・・である。


「そ、そうか・・・。」


 店の番台に憤然として座っている拓弥を眺めながら、そろそろと裏の工房に続く出入り口まで後退する源。

そこから、そぉっと壁越しに覗き込んで拓弥を観察する。


(昨日も機嫌悪かったが、今日の比じゃねぇな。)


 噛み付きっぷりが半端じゃない。


「源ジジ、何をしておるのだ?」


「しぃ~、しぃ~っ!」


 後ろから声をかけてきた芽衣に向かって人差し指を立てる。


「何だ?気持ちが悪いの。お?何じゃ、オマエ、学校はサボりかえ?」


 拓弥を見つけた芽衣は何の考えもなく、彼に近づき声をかける。

源は、しまったとばかりに目を閉じるしかなかった。


「ちょうど良い。今から・・・ふっ、風呂に入らぬか?昨日は邪魔されたしの。それとも稽古にするか?」


「そんな下らない事する暇があるなら、自分の仕事すれば?仕事溜まってるんでしょ!」


「なっ?!」


 対芽衣用ツンモードでも言わない言葉と冷たい眼差しで撃墜される。

直撃した芽衣は、すごすごと涙目で源の横まで後退する。


「何じゃ、アレは。」


「だから、静かにしてろって言おうとしたのに。」


 拓弥には言い返せないので、源に言い返す芽衣。


「今日は、坊は完全にプッツン状態みてぇなんだよ、これが。」


「うぬ?し、しかしだな、あんなのは初めて見るぞ?」


「だから、オメェ、こうやってそぉ~っとだな・・・。」


 視線が再びこっそりと拓弥に向く。

今度は二人揃ってだ。


「二人共、こんなトコで気味悪いわね。あ、拓ちゃん、何々~反抗期?学校サボるなんて。」


 二人の空気を全く読めない早苗が、二人の横を通り過ぎて颯爽と拓弥に声をかける。


「あ、ヲイ。」「バカっ。」


 二人は止めようと試みたが遅かった。


「早苗さんこそ、さっさと伝票持って三須摩様の所へ行って。ちゃんと仕事も出来ないの?」


 キッと音がしそうな鋭い視線で睨まれた早苗は、そのまま固まる。


「あ、あははは、うん、行くよ~。」


 固まったままの状態で、器用に源と芽衣の所まで戦略的後退。


「何?!アレ、本当に拓ちゃん?!」


 二人に喰ってかかる早苗。


「全く、オマエという奴は空気も読めぬのか?」


「芽衣嬢ちゃんだって、同じ事しただろが。」


「だから、アレ、どうしたのよ?」


 三人が喧々諤々やっている間も拓弥は、自分の憤然とした衝動に更にイラだつというスパイラルを繰り返していた。


「なんなんだよ・・・。」


 出会った少女は、確かに幼馴染の瑞穂だった。

間違いない。

自分と別れる事を選んだ少女。

なのに・・・。


(何で、あんな悲しそうな、嬉しそうな表情すんだよ・・・選んだのは自分じゃないか!)


 握り締めた拳がぷるぷると震える。


(一度も帰って来なかったクセに・・・それなのにあの表情は何だよ!)


 会いたかったと言わんばかりの顔。

勿論、そんな言葉をその顔で吐かれたら、怒鳴り散らしていただろう。

何を言うかもわからないくらいに、憤りをぶつけていたはずだ。


「あぁぁぁぁぁーッ!!」


 拓弥は力一杯、番台の机を叩いて立ち上がる。


「何?!どうしたの?!」「どうしたのじゃ?!」「どうしたってんだ?!」


 拓弥の後ろでグダグダ言い合いをしていた三人が、拓弥の行動に驚いて声を上げる。

反応する三人を睨みつける拓弥。


「帰ル!帰って寝ル!!」


 決定事項と言わんばかりの強い口調で言い放った拓弥に三人は何も言えなかった。 

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