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いつか君の名を喚んで ~題名のない物語シリーズ~  作者: はつい
第Ⅰ章:かくして彼は立ち上がる。
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かくして彼はまどろむ。

いやぁ、また会えましたね、良かった良かった。

綱渡りなのも、自分の文才の無さなんですけれど・・・元々無いんですがね。

 身体の痛み。

それで拓弥は目を覚ました。


「あぁ・・・そうか。」


 ぺきぽきと身体の骨を鳴らしながら、昨日、気力も体力も0状態で何度目かの逆ギレで少女を泊めた事を思い出していた。

『今回は襲わないでいてアゲル。』の言葉通り、完全爆睡していたようだ。

身体のアチコチが痛い。

気付くと毛布が一枚、自分にかけてある。

昨日の少女がかけてくれたのだろうか?


(もういないか・・・そりゃそうだよな。)


 正体不明の男の家に泊まる事自体有り得ない事なのだから。


「おはようございます。」


「?」


 ぬぼぉっとしたまま、その声を聞く。

聞き流す。


「お目覚めですよね?おはようございます。」


「はぁ・・・。」


 目の前に純白のワンピースの少女。


「何でまだ居るかなぁ・・・。」


 拓弥的には今日は今日で、一日切り替えて過ごしたかった。

昨日が散々だっただけに。


「え?」


 思わず出てきた言葉が予想外だとも言わんばかりの表情をされた。


(なんなんだ・・・。)


 そう言えば、昨日彼女に道を改めて教えるとか何とか言ったような・・・。

だからと言って、知らない男の家に居続けるというのはどうだろう?

それが正直な感想だった。


「はぁ・・・君は本当、お人好しだね・・・言われない?」


 がっかりだ。

溜め息を一つついて、洋服ダンスの引き出しを引く。


「・・・とりあえず、シャワーでも浴びてきたら?これ着替え。」


 適当にGパンと大きめのニットの上を投げつける。


「あの?」


「僕はもう少し現実逃避するから、出たら教えて。」


 そう言うと拓弥は聞く耳持たずといった状態で、ずるずると布団に向かうと横になった。

仰向けになっただけで、関節がビキビキいっている。

現実逃避=二度寝。

動かなくなった彼を確認すると、仕方なく少女は着替えを持って浴場を探した。




 小さい頃。

それが当然の事のように彼女は自分の隣にいた。

何時も自分の横に。

何処に行くのにも一緒で、コイツは自分がいなければダメなんじゃないかと思うくらい。

兄妹に間違われた事なんて、数え切れない程ある。

一度、何も言わずに男友達と外が暗くなるまで遊んだ事があった。

たまにはそういう時があってもいいと思っていたから・・・。

家に帰った時、玄関前で泣きはらした彼女を見た時は困った。

"コイツは俺がいないとダメなんだ。"


『しょうのないヤツだな。』


 笑いながら、彼女を必死に慰めたものだった。


『たっくん、私、転校するね。』


 その一言を聞いた時、どれ程に衝撃を受けたか。

そんなに"マイトの道"の方がいいのか?

オマエは力がそんなに欲しいのか?

最初はそう思った。

途中からは、自分と彼女はそれだけのモノだった。

自分が感じていた、思っていた事はただの自分の思い込みで、彼女は自分の事なんか何とも思っていないんだと。

"裏切られた"とまでは思わなかった。

ただ自分は、"選ばれなかった"だけだと。

単純に彼女は、自分よりもより未知でスリルがあって未来のある"力"を選んだ。

それだけのコト。

納得すると早かった。

彼女が自分に寄りかかっていたのではなく、自分が彼女に寄りかかっていただけ。

それからは全てが面倒で、馬鹿らしくて、滑稽で、自分が情けなかった。

"力"なんて大嫌いだ。

そんなモノがあるから、こんなコトになるんだ!


「ふざけるなッ!」


「キャッ!」


 目の前に尻餅をついている少女。


「・・・全く、夢まで散々だ。」


 拓弥はすぐに現実を把握して呻いた。

そして、じぃ~っと少女を見詰める。

たっぷり数十秒。


「全然似てない。」


「はい?」


「全く、これっぽちも似ていない。寧ろ、君のが美人、うん。」


 夢までロクデモなかった拓弥は、目の前の女性が幼馴染に似ているから助けたという路線を消した。

精神的安定を得る為に。


「うんうん。じゃ、地図の場所に行こうか。途中でおにぎりか何か買って。」


 シャワーを浴びて着替え終わっている少女に今度は、スーパーのエコバックを渡す。


「脱いだ服は、ここに入れて持って行けばいい。」


 彼女の意見は聞かない。

聞いたとしても全部却下。

きっとイライラするだけだから。

あんな夢を見なければ、もっとマシな扱いは出来たのかも知れないが。


「大丈夫ですか?うなされていたみたいですけど?」


「あぁ、あのね・・・君と僕は他人。気にする必要ないよ。」


 結局、イラだってまたこんな言葉を吐いてしまった。

目的地に早く着きたくて、彼女の返事も聞かずに家を出て、おにぎりを買い、ずんずんと歩く。

ずんずんと言っても、彼女の歩幅に合わせてだ。

昔から自分についてくる幼馴染がいたから、その辺りは無意識で出来るようになっていた。


「それよりも、あんな場所に行って何を探すんだか・・・昨日は言ってなかったけど、あそこ更地だよ、今。」


「え?!そ、そうなんですか?」


「うん。3年くらい前から何もない更地。」


 困ったような顔をして、拓弥の事を見詰める少女。


「ま、いいけど。何を探してるのか知らないけれどね。」


 大体、行った事ない場所に探し物を見つけに行くという理由自体、胡散臭いのだから。


「はい、連れて行ってください。」


 どうせあと10分程したら、この少女ともお別れだ。

目的地についたらそれでお終い。

そう考えると楽チンだった。

あとは無言で歩いていく。

10分の無言もそんなに苦ではない。

そういえば、無言で女の子と一緒に歩くなんて。


(思い出してどうするのさ。)


 全く以て、非生産的だ。


「そこの角を曲がった所が地図の辺りかな。」


 指をさしながら角にさしかかり曲がる。


「ほら、そこだよ。」 「たっくん・・・?」 

次回!怒涛の急展開!・・・だといいなぁ・・・。

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