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いつか君の名を喚んで ~題名のない物語シリーズ~  作者: はつい
第Ⅰ章:かくして彼は立ち上がる。
10/36

かくして彼の全24時。

またもや新キャラ登場。今章新キャラはあと一人。

果たして続くのか?!(トオイメ)

「もぅ・・・なんなんだよ・・・。」


 数年前からの彼の口癖になりつつある言葉を吐きながらの帰り道。

ここまで来ると女難の相とか言われても信じる。

突き詰めれば一人の少女のせいなのだが、それを言ってはお終い。

流石にそこまで責任転嫁は出来ない。

もう一度言っておこう、"慎重と臆病紙一重"

これが彼の特性。


(今日はさっさと寝よう・・・。)


 結局、帰っても一人なので、帰宅後は大抵すぐに寝てしまうのだが。

しかし彼は忘れている。

ツイていないという今日一日(全24時間)は、まだ終っていないという事を・・・。


「あの、少し道をお尋ねしたいんですが?」


「あ゛?」


 デジャブ?

脳内に浮かんだ眼つきの鋭い少女を思い出して、また沸々としたものが・・・。

お陰で彼は、もの凄い形相と悪態で声の主に振り返ってしまった。


「あ・・・の、すみません・・・。」


 振り返った先にいたのは、漆黒の髪に同色の瞳をした少女だった。

白い肌に、それよりも白いワンピースの少女。

一言で表すと"可憐。"

頭の中で例の"銀髪つり眼"(拓弥的印象)を想像していた拓弥は、全く違う可憐な少女に戸惑ってしまった。

それと同時に悪態に近い反応をしてしまった事を悔いた。


「どうしても、この地図の場所に行きたくて・・・その、すみません。」


(落ち着け自分。)


 アレとコレは別。

しかも、この少女はとても恐縮そうにして謝っているではないか。

全くもって別者。


「て、あれ?」


 だが、それも彼女が見せた地図を見るまでだった。

目的地は・・・あの銀髪のつり眼、"通称:銀パッツン"(拓弥命名)と同じで・・・。


(なんなんだよ・・・。)


 流行ってるのか?と思った。

もしかしたら、拓弥が知らないうちに更地に何かが建って観光名所になっているとか・・・。


(そんな馬鹿な。)


「あの?」


「いや、えぇとこの場所なら知ってるけど、探し物か何か?」


「そんな所です。知っていらっしゃるんですか?」


「いや、でも探し物探すの?こんな夜中に?」


 だってあそこは更地・・・とは言葉が続けられなかった。

この可憐な少女は、その単語だけでショックを受けて気絶してしまいそうだったから。


「確かにそうなのですけれど・・・そのなるべく早く見つけたいので・・・。」


「そか・・・ここから20分くらいかかるけれど、大丈夫?」


 どちらかというと防犯という意味で。


「はい、大丈夫です。」


 -キュゥゥ~-


「はい?」


 返事と共にちょっぴり高い音がなる。

音源は・・・。


(お腹?)


 彼女のお腹とふっくらした胸を凝視する。


「あっ・・・。」


 自分のお腹から鳴った音に赤面して少女は俯く。

胸を思い切り凝視してしまったのは、指摘されなかった。


「ふぅ・・・おいで、コンビニ、すぐソコだからさ。」


 物凄く面倒だった。

今日、この少女と出会うまで散々だったから、結局このヲチも散々な事になるんだろうな。

そう思ってはいたが、だからといって赤面してハラペコな可憐な少女を置き去りにするのもどうかと思った。

主に防犯的な意味で。


「あ、でも・・・お金・・・。」


 更に俯く少女。

その仕草を見て、笑い出しそうなのとイラつくのと半々。

だが、何というか既に気力ゲージは0を割っている拓弥である。


「いいからついて来る、パラペコさん。」


 関わってしまったのなら、さっさと処理するに限る。

この一点に尽きた。




「頂きます。」

「どうぞ。」


 サンドウィッチを食む少女を横目で見ながら、拓弥は何故だかほっとしていた。

昔。

昔といってもそれ程に昔ではないけれど、こうやって自分の隣ではむはむと食事をしていた少女を思い出していた。

その時間が楽しくて・・・永遠に続けばいいと・・・永遠なんてないのはわかっていたけれど。


(昔から捻くれ者の天邪鬼だったしな、僕は。)


 何時も自分の横で笑っていた少女の顔が浮かんできて、ちょっとイラっとした。


「あの?」


「ん?」


 少女がサンドウィッチを一切れ差し出してくる。


「あぁ、いいよ、全部食べて。食べたくて見てたワケじゃないから。こういう顔つきなんだ、僕は。」


 幼馴染の少女がいなくなってから。


「そう・・・ですか。」


「しかし、無一文でよくこんな夜中まで・・・。」


 呆れる。

もしかしてお嬢様なんだろうか?世間知らずってヤツか?と勝手な判断。


「交通費しか持っていなかったもので。」


「どんだけだよ・・・。」


 あからさまにワケアリな匂いがしてきた。

途端に深く突っ込んでいいのだろうかと、例の紙一重スキルが発動しかかったくらいだ。


「ごちそうさまでした。」


 綺麗に食べ終わって、ゴミをコンビニのゴミ箱に入れる少女。


「行くの?」


「はい。」


「・・・あのさ、こんな夜中に行っても探し物は見つけられないんじゃない?暗いし。」


 真っ暗闇状態の更地で、大きさにもよるが探し物を探すのは至難の技だ。


「でも・・・。」


「行き方を教えてあげるから、今日は宿に帰るかして明日にでもさ・・・。」


 これは忠告だ。

しかし、そういう忠告を最初の銀パッツンの時もして、ロクな事にならなかった。


「それは・・・。」


 また俯く少女。

拓弥の中で半々だったイラつき度合いが、6割を超えた。


「まさか、無一文って何処かに泊まるお金もない?」


 そういえば、彼女は荷物らしき荷物を持っていない。

近い距離から来たのか、よっぽど無計画なのか。


「いぇ、その・・・。」


 イライラゲージが7割、8割と上がっていく。

この少女のはっきりしない所が、堪らなく嫌になってきた。


「ウチに泊まれば?」


「はぃ?」


「襲わないでいてアゲルから、そうしな。」


 もうこの少女の返事を待つのも、聞くの煩わしい。

面倒。

もう勝手にする事にした。


「ほら、早く来ル。」


 拓弥は少女の手を取ってぐいぐいと引っ張って行ったのである。




「狭いけど、文句は言わないように。」


 拓弥は自分の沸点が低いのは良くないと今更ながらに思う。

イライラゲージが下がってきたからだ。

冷静に考えて年頃の独り暮らしの男の家に、可憐な少女をあがらせているのだ。

冷静にならなくても問題だった。


「人は誰もいないから、気にしないで。どうせ寝るだけだからいいね。」


 イライラゲージが下がった途端に精神的疲労、気力ゲージ0の状態を再認識する。


「誰もいらっしゃらないのですか?」


「両親は海外赴任でね。それに色々とあってちょうどよかったんだ。」


「ちょうど良かった?あ、おじゃします。」


 無防備な少女だな。と拓弥は思った。

意外と家に呼んで正解だったかも知れない。

だから防犯的意味で。


「うん。独りがね。自分は独りなんだって認識する時間が必要だったんだ。」


 結局、早苗達に拾われる事になったのだが。

拓弥はさっさと布団を敷き始めた。


「自分独り。あぁ、自分は独りで今は誰も必要としない存在なんだなってね・・・。」


 意外と振っ切ってみようと思うまでの工程は、そんな感じだったら簡単だった。

そうやって自分を追い込んで蔑めば、意外とすんなり納得出来る。


「それは!」


 少女は急に声を荒げる。


「気にしなくていい。さ、布団敷いたし寝るといいよ。」


 一組しかない布団を彼女にすすめる。

独り暮らしなんだから、布団なんて一組しかないに決まっている。


「あぁ、大丈夫。さっきも言ったけど、"今回は襲わないでいてアゲル。"次はきちんと計画立てて旅行しなよ?」


 そういう発言が早苗にからかわれ、芽衣を爆発させる要因になっているという事を今日も学習しない拓弥である。

彼は言うだけ言うと、壁に背をもたれさせながら座りそのまま目を閉じた。

公園で一夜を明かそうと決意した辺りから、わりと何処でも意外とすんなり眠れるようになっていた。

寝ている間は、変な思考の迷宮に入り込む事もないから・・・。

どんどん拓弥が情緒不安定ボーイになっていく・・・この主人公大丈夫か?

ひたひたと打ち切りの足音が聞こえてくるようだ・・・。

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