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悪役令嬢への転生は執念と共に

 

 私は当たり前の日常を過ごしていた。



 変わりない毎日を送っていた。



 努力し、なんとか安定させて送れるようになった、そんな毎日は、壊れるのは一瞬だった。



 日本人の一日での死亡数の平均は約四千三百人ほどであるらしい。



 その中で事故で死ぬのが約百五十人。



 結果的に言えば、私は。




 その、百五十分の一でしか無いのだろう。




「 い!  ないのか? お  !」


 誰かの叫ぶ声がする。呼びかけられる感触がある。


 なのに、動かない、動けない。


 声も途切れ途切れで、なにを言ってるのかわからない。


「 道橋の 段か 人が足を滑 せて、頭から落  ん よ!」


 なにかを、だれかに伝えている。救急の連絡だと思う。


 言っていることはわかる。さっき私が体験した事だから、歩道橋の階段から足を滑らせて頭から落ちたのだ。そして思い切り、頭をどこかに激突させた。


 なんて死の原因だろう。気を付けていたらどうにかできたかもしれないのに。


「  !   !  !」


 もう、何も聞こえなくて、あるはずの痛みが無くて。


 ああ。死ぬんだなって、分かってしまって。


 そこで本当にふと思い出した。私にとって最大の、死ねない理由を。



 私まだ、【ひかこい】の全ルートクリアできてない?



 恋愛シュミレーションゲーム【光輝く恋の魔法】通称【ひかこい】は私のここ最近の生きる意味だったのにそれを全クリできずに死ぬ?



 無理だ、話にならないぞそれ! くそ! 動け、私の身体! うぐぐぐぐ!! 


 うっごかない!! なにこれ!


 まさか、死ぬ? 一番好きなゲームの物語を読み終えずに?


 いやだ! いやだ! 絶対にそれだけは嫌だ!


 確かに普通の恋愛アドベンチャーで! 出てくる悪役令嬢が本当にただのゲスで評価悪いけど! 私は絶対に、死ねないんだ!! 


 だから、どうか! どうか後生です! 誰か! 私を助けて!!!








 

 閉じた瞳をゆっくりと開ける。


 そこは少し大きい部屋でまるで食卓のような風景。


 煌びやかな食事達。山羊の肉のソテーにシチュー、果汁の汁までもが食卓に並んでいる。とても美味しそう。


 私はふと顔を上げて、食卓に着席するメンバーを確認していく。


 上座に紫の豪華な服を着た強面の男、その一番近い席にこれまた紫の豪華な服を着た憂いを帯びた美女。


 えーっと??? なにこれ???


 頭が混乱している、なぜか二重で。


 ここはどこだろうと、周りを見渡しても見えるのは食卓、と言ってもどこか中世風だ。しかも貴族風で、部屋の真ん中に置かれたテーブルとそれにかかった白いテーブルクロス。


真ん中に置かれた蠟燭立て、食器も丁寧に並べられており、さながら高級レストラン。


 え、ここどこ? 再度あたりを見渡してみる。


「……あ」


 声がふと出た。あの強面の男に見覚えがある。


 そしてその既視感が頭で結ばれて、一つの結論がでる。近年のライトノベル文化的にも、ここ最近の私の記憶的にもその答えに帰結した。


 いや、だとしたら、ねぇ。そんな訳がねぇ?


 食卓の部屋を見渡すと姿見があった


 あれならば、姿が見れるのではないか?


 私は椅子から立ちあがり、とてとてとゆっくり鏡に向かう。


 あれ、なんか遅くない? というか体ちっちゃくない?


 いやな予感しかしない!


 急いで姿見の前まで行く、なんとか見れる位置にあり、今の私の姿が映った。


 「な、な、な。ななななな!!!」


 あまりに綺麗な紫の髪色、夕暮れ時の仄暗い空のようなそんな色の瞳、整った容姿に、とてもちんちくりんな小さい体。腰まで伸びる長い髪と横だけ結んでサイドテールにしているこの少女は。


「エルレッタ(悪役令嬢)ぁっ?!」




 【ひかこい】のラスボス、になる予定の悪役令嬢であった。

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