皿うどんの季節
初めては高校生のときだった。修学旅行で。ほとんどのヤツ、それは僕も含めだけど、経験なかった―
「リバースゥ」
「革命えええい」
「ドロー2の上にドロー4っていいの?」
「おっしゃ、革命がえしいいいいい」
「はい、UNO言ってないぃ」
行きの新幹線で、盛大に大貧民をやって、UNOもやった。すこし勝って、たくさん負けた。
大阪から新幹線で山口あたりまで。そこからはクラス単位でバス移動。デッカイ橋を渡って福岡、熊本。
福岡は、正直、よく覚えていない。たぶん、寝てたんだろう。バスのなかで。
熊本の阿蘇はえらくガスってて、城下町で制服ボウリングをした。いまでいう制服ディズニー、みたいな? だいぶ違うな。
「何やってんだろな、熊本まで来てさ」
「いんじゃん、こういうので」
なんだっていいんだ、高校生なんて。食べるものも、することも。
「質より量」
「思い出よりも、いまこのとき」
それを青春だとでも思っていたんだ。あのときは。
最後の長崎は、昼に皿うどんを食べた。パリパリの。なんでかな、それは覚えてる。
なんだってよかった修学旅行。長崎から大阪へ帰る飛行機。まだ乗ったことなかった。飛行機自体。
飛行機に乗り込むとき、微笑んだCAさんたちが迎えてくれた。みんなキレイで、話しかけられたのでもないのに、わけもなく下を向いてしまった。
飛び立つことへのいくらかの怖さと、知られることの恥ずかしさ。不自然に強がるのではなく、けど、どことなく、自然ではいられなくて。
無意味だ。でも、あのときは必要だった。きっと。
いよいよ、そのときが迫る。離陸へ向かっての加速がかかり、体がシートにきつくめり込む。
飛ぶのか? との不安。
飛ぶよ、との確信。
離陸の瞬間、
「いっけえええええ」
「テイクオーーーフ」
「よっしゃあああああ!」
浮遊感と高揚感にこらえられなくて、機内に野太い歓声が上がり、CAさんたちが遠慮がちに笑った。CAさんを笑かしたと有頂天のヤツもいた。僕も、控えめに「わああああ」とでも言ったんだった。
飛行機とともに僕たちの青春もふわり、宙に浮いて。紙吹雪は舞わなかったけど、僕には見えたような。
このまま飛んでったら修学旅行が終わってしまう。それでいて、引き返してくれなんて気持ちはなかった。空から長崎の夜景は、見られなかった。
―こういうのでいいんだな
―こういうのでいいんだよ
あのころ不安なんて、片っ端からぶっ潰してた。胸のなかにわんさとあった根拠のない自信みたいなのが、次から次に。それが妙にわくわくで、可能性なんて、それこそ―
胸のなかにたくさんあった根拠のない自信、ちょっと掘り返してみるかな。




