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第1話 冒険者ロンド

 


朝の霧が、

石畳の通りをゆっくりと流れていた。


 


冷たい空気が肺に入り、

胸が少しだけ痛む。


 


ロンドは、

大きな木造の建物を見上げていた。


 


看板には、

剣と盾が交差した紋章。


 


冒険者ギルド。


 


ここへ来ると決めるまで、

何度も足が止まった。


 


だが、

生きるためには選ぶしかない。


 


「……行こう」


 


小さく呟き、

扉を押す。


 


中は、

熱気と騒音に満ちていた。


 


酒の匂い。

鉄の擦れる音。

笑い声と怒鳴り声。


 


屈強な男たちの背中を見て、

ロンドは肩をすくめる。


 


――俺は、場違いだ。


 


それでも、

受付へ向かった。


 


「冒険者登録を……」


 


受付の女性は微笑み、

水晶球を差し出す。


 


「手を置いてください」


 


淡く光る水晶。


 


「スキル、雷撃。

 レベル1です」


 


周囲から、

小さな失笑。


 


ロンドは、

唇を噛んだ。


 


それでもカードを受け取り、

掲示板へ向かう。


 


街道沿いのスライム討伐。


 


一番下の依頼書を剥がした。


 



 


街の外。


 


草が腰ほどまで伸びている。


 


ぬめっとした音。


 


青い塊が、

ゆっくりと蠢く。


 


スライム。


 


剣を抜く。


 


金属音が、

やけに大きく響いた。


 


距離、五歩。


 


心臓が、

暴れる。


 


スライムが、

突然跳ねた。


 


「っ!」


 


ロンドは、

反射的に後退する。


 


粘液が、

地面に叩きつけられる。


 


もし当たっていれば、

足を取られていた。


 


呼吸が、

浅くなる。


 


「落ち着け……」


 


一歩前へ。


 


スライムが、

再び跳躍。


 


ロンドは、

横へ転がる。


 


泥が、

服にべったり付く。


 


距離、二歩。


 


近い。


 


剣を振る。


 


刃が、

弾かれる。


 


柔らかいが、

奥は硬い。


 


手が、

痺れる。


 


スライムが、

体を伸ばす。


 


ロンドの足首に、

触れた。


 


「くっ!」


 


冷たい感触。


 


引き剥がそうとするが、

吸いつく。


 


視界が、

白くなる。


 


――死ぬ。


 


その瞬間。


 


胸の奥が、

焼けるように熱い。


 


指先が、

痺れ出す。


 


「うああああ!」


 


腕を突き出す。


 


バチバチッ!


 


雷が走る。


 


白い光が、

空気を裂く。


 


雷は、

スライムの中心を貫いた。


 


粘液が、

激しく沸騰する。


 


焦げた臭い。


 


スライムは、

痙攣しながら縮む。


 


ドロリ、と音を立てて崩れ落ちた。


 


ロンドは、

その場に座り込む。


 


息が、

止まりそうだった。


 


手を見る。


 


まだ、

微かに火花が散っている。


 


「……倒した」


 


実感が、

遅れてやってくる。


 


膝が、

笑う。


 


だが。


 


生きている。


 


それだけで、

胸がいっぱいになる。


 



 


ギルドへ戻る。


 


討伐証明の核を提出すると、

受付の女性が微笑んだ。


 


「初依頼、成功ですね」


 


銅貨三枚。


 


重さは、

軽い。


 


だが、

意味は重い。


 


ロンドは、

拳を握る。


 


怖かった。

本当に、怖かった。


 


それでも。


 


「……冒険者で、いよう」


 


誰にも聞こえない声で、

そう呟いた。


 


ロンドは、

まだ知らない。


 


その魂に、

雷神が眠っていることを。


 


物語は、

ここから始まる。


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