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絶対に目立ちたくない元社畜おっさんの職人NPCスローライフ~推しモブに成り代わってしまったので代わりに夢を叶えます~  作者: 嘉神かろ
第2章

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第43話 モブサブのえこひいき!

 青葉の春を眺めたあの日から一週間ほどが経った。ケイン達のレベリングは、すこぶる順調だ。それこそ妙に詩的な言い回しを使いたくなってしまうくらいには。


「……よし、こんなものだな」


 ついさっきまで研いでいた槍を下ろし、大きく伸びをして魔力の濃い鍛治工房内の空気を吸い込む。上体を回して腰を伸ばせば、隅の方に置いた樽にたくさんの武器が入っているのが見えた。今日一日で作ったものだ。


 その中に槍を放り込むと、ちょうど入り口の扉のそっと開かれる。セフィアだ。


「今作業を終えたところだ」

「あ、お疲れ様です。夕食をどうするか聞きに来たんですが……ずいぶん作りましたね」

「まあな」


 ケイン達は順調だし、あれから悪魔族の話も聞かない。だから、この武器たちは念の為の、出番がない方がいいものだ。

 しかし最後の目撃情報が迷宮の近くだからな。備えた方がいいのは間違いない。


「装備、か……。いつまでもレベリング用なんか使わせてるわけにはいかないよな」

「ケインさん達のですか。あれらも十分高性能だと思うんですけどね」

「まあ、少し前までの状態からすればな」


 ぶっちゃけ、惨状と言ってもいい。

 五十階層に到達してた勇者パーティがあのランクの装備だからな。むしろよく行けたなと言いたい。


 これが組織や商売なら俺もあれこれ装備を作ってやる影響を考えるんだが、今の俺は自由にやりたいことをやってる立場だ。仲のいい奴らを贔屓するくらいなんてことはない。


「だがなぁ、素直には受け取らないだろうなぁ……」

「ですね。今の装備もけっきょく対価を貰うことになりましたし、それに、素材の供給もまだまだ不足しています」


 需要過多、か。

 その中で今のあいつらに丁度いいランクの装備一式を四人分となると、相場的に凄まじい額になるだろう。性能で言えばそれこそ最初にオークションに出した剣に近いくらいだし。


 だからって生存率に直結する装備を妥協したくない。強すぎる装備はシステム的に使いこなせないから、適正レベル内での最大値を目指すことにはなるが。


 でもそうするとどうやって受け取らせるかって問題が発生する。


「……いっそ自分で素材を取りに行かせるか?」


 傭兵用の高ランク装備の場合、原価で大きな割合を占めるのは材料費と技術料を主とした人件費だ。そこに輸送費やら販売費用やら何やらが入るが、材料費と技術料が高すぎて誤差でしかない。


 なら、素材を自力で取ってくれば受け入れてくれるんじゃないか?


「何が必要なんですか?」

「三十階層台のモンスター素材が主だな。それと、四十階層のボスドロップ……ああ、ダメだな。実力不足だ」


 今のあいつらのレベルと装備でいけるのは三十階層台前半ってところだろう。

 仮に四十階層まで上手くたどり着けたとしても、ケインじゃあれの大技は受けきれないしなぁ。


「四十階層ですか……。難しそうですね」

「レベル的には足りないってことは無いんだが、やはり装備がな」

「うーん……。あの、アルゴスさんが同行するのはどうですか?」


 たしかに俺が一緒に行けばどうにかしてやれるが、入り口を管理してる傭兵ギルドと教会の目をどう誤魔化すかが問題だ。


 いや、まあ、隠し通路から入って合流でもいいか。

 どうやって入ったかは秘密と言っておけばいい。傭兵なんだからそれ以上追求してこないだろ。


「そうだな。よし、とりあえず提案してみるか」


 ダメそうならまたその時考えよう。半分は俺のわがままみたいなものだしな。


 その提案は思いの外あっさり受け入れられた。即答と言ってもいい。了承してから慌ててカロック達に確認していたくらいだ。


 少しでも力が欲しいんだろう。悪魔族に復讐するために。

 利害は一致してるんだが……。いや、まあいい。


 途中から合流することについては、今更だと納得された。

 それもそうだ。これまでも色んな手札を見せてきたんだから。


 そうしてミラディス大迷宮の三十一階層、青い海に囲まれた南国の列島で彼らと合流したのは、思い立ってから二日後のことだった。


「本当にいるのはいいとして、なんだか、その、ずいぶん普通の格好ですね?」

「だろ?」


 ケインとしては見るからに凄そうな鎧や剣を期待したのかもしれないが、残念ながら見た目はそこらの傭兵が着ているのと変わらない。

 モブ傭兵に成り切るために見た目を変えたセットだからな。武器も含め、中身はゲームの最新ストーリーでも通用するような高ランク装備ではあるが、見ただけで分かるやつはいない。


「お前らの方は、大して消耗もなさそうだな」

「三十一階層の入り口に転移してきてるからな。戦闘は一度あっただけだ」


 ここから入り口まではそこそこ距離がある。海の浅瀬を渡らないといけないことを思えば、かなり少ない。


「ここからはアルゴスさんがメインタンク、でいいのよね?」

「ああ。ケインはサブタンクとして動きつつ指揮してくれ。攻撃も基本的にはしない。俺が殴ると一撃で終わってお前らの経験にならないからな」


 いわゆるキャリーがしたいわけじゃ無いからな。四十階層の転移解放については実質そうなってしまうが、適正レベルの装備さえあれば問題なくたどり着けるから問題ない。


「それと、俺の回復は考えなくてもいい。この辺りじゃまだ防御は抜かれない」

「うへぇ……。分かりましたー」

「正直なのは良いが、そんな引いたような反応をしないでくれ」

「ようなじゃなくて引いてるんですよー」


 いや、まあ、うん。

 実際、自分でも人外じみてるとは思うがな。


「と、とにかく、出発しましょうか。いつ悪魔族が現れるか分かりませんしね」

「そうだな。行くか」


 さて、久しぶりのパーティプレイだ。難易度的には物足りないが、少し楽しみだな。


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