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絶対に目立ちたくない元社畜おっさんの職人NPCスローライフ~推しモブに成り代わってしまったので代わりに夢を叶えます~  作者: 嘉神かろ
第2章

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第40話 モブサブのデート日和?

 炉の光ばかりに照らされた中で何度も槌を振るい、軽くしなやかになるよう合わせた金属を細身の剣に変えていく。時々スキルを使って工程を短縮しつつ、そのまま研ぎ作業へ。


 金属の擦れる音が響き、剣の形の金属が少しずつ光を宿した。そうして出来上がった薄青の刃は低位の竜の鱗ならば容易く切り裂けるだろう仕上がりだ。


 うん。レベリング用としては十分な出来だな。


「ふぅ」


 柄を取り付け鞘を作るところまで終わらせて一息を吐く。狩り場を変えるならと慌てて取り掛かった作業がようやく終わった。


 今完成させたのは女性陣が剣士系の職を上げる時に貸す剣だ。彼女らでも使いやすいよう軽さと切れ味を追求した。柄も細めだから、握りづらいということもあるまい。


「他にやらないといけないことは……ないな」


 少なくとも急ぎの件は。

 つい仕事を探してしまいそうになるが、悪い癖だ。しっかりスローライフしなければならない。


 ともかく、汗を流してくるか。さすがに汗だくだ。

 のんびりするぞと心に決めて工房を出れば、眩しい朝の日差しに目を細めることになった。


 朝風呂を終え、リビングでダラっとしていると、セフィアの降りてくる気配がした。朝食を食べてから部屋で何やら作業をしていたようだが、終わったのか?


「あ、アルゴスさん。もう作り終えたんですか?」

「難しいものは作っていないからな。セフィアは何をしてたんだ?」

「何がどれくらい売れているかを纏めていたんです。商品のラインナップを調整したくて」


 なるほどな。

 けっこうな種類を取り扱ってるし、そういうデータを元にした計画はより重要になる。

 周辺店舗と若干被ってる商品もあるから、無意味に競合しないという意味でも必要になるだろう。


 セフィアも順調に進んでるようで安心だな。


「終わったのか?」

「はい。あとはその資料を元に計画を立てて、ロエと相談しながら調整してって感じですね。彼女が帰ってくるまで時間もありますし、午前中はいったんゆっくりしようかと」


 ふむ。セフィアものんびりか。

 自己管理も大丈夫そうだ。


 そういえば、友人らしい友人はいるんだろうか? ロザリエと二人でこの街に来たわけだし、いない気もする。


 仕事から離れて休暇を楽しんだり、愚痴を言えたりする相手の一人や二人くらいはいてもいい。

 できれば歳の近い同性で。


 ロザリエも近くはあるが、主従が先に来るからな。


 俺の知ってる範囲だと、ルカやリリエくらいしか思い浮かばない。


 そういえば、ルカとケインはうまくデートできてるんだろうか?

 時間的に、これから出発するぐらいだろうが……。


「ルカさんとケインさんがどうかしたんですか?」


 おっと、口に出ていたか。


「実はな――」

「なるほど、デートで二人の関係を進めようと!」


 ああ、やっぱり興味を持ったか。紫の瞳が凄まじく輝いている。

 別にいいんだが、どうしてこう他人の色恋が好きなのか。


「リリエさんも思い切りましたね。たしかに気持ちは分かります」

「そうなのか。俺としてはゆっくり見守っててもいいと思うんだが」

「甘いですよ! あそこまで行くと、逆に中々進展しないものです! ましてや傭兵。気がついた時にはもう遅かったなんてことになりかねません!」

「お、おう」


 傭兵云々は間違いなくそうなんだが、それはそれとして、近いぞ。そんな身を乗り出さなくても聞こえている。


「あ、し、失礼しました」

「いや、大丈夫だ」


 離れてくれたセフィアの顔は真っ赤で、りんごみたいだ。まあ、仮にも異性にあそこまで接近したんだから、当然の反応か。

 中身はおじさんと言われても否定しようがない年齢の俺でさえ少し恥ずかしかった。


「と、ともかくです! ちょっと強引に進めさせるくらいでもいいんです!」

「まあ、リリエもそんな感じだったし、正しくはあるんだろうな」

「はい! ……それで、相談なんですが、今日って暇ですか?」


 ああ、このソワソワ具合はそういうことか。


「はぁ……。分かった。付き合おう。俺もあいつらのデートに興味がないって言ったら嘘になるしな」

「やった! ありがとうございます!」


 仕方ない。傭兵が多いエリアにセフィア一人も不安だしな。


 街歩きの用意をしに一度自室に戻り、玄関に再集合する。思ったよりセフィアが遅かったのは、服を選んでいたからだろう。


「その、どうでしょうか……?」


 階段から降りてきた彼女は仕事に行く時とはまったく違う、装飾が多めの格好をしていた。


 靴は革のブーツ。服は白のロングワンピースで、その上から明るめの茶色のベストのようなものを合わせている。

 首元にはいつか渡したネックレスがあって、耳にはアメジストのような飾りのイヤリングが揺れていた。


「いいと思うぞ。似合ってる」

「本当ですか? 嬉しいです!」


 しかし、これだけオシャレしてくるなら俺ももっとまともな服を考えたら良かったな。シャツに暗めのパンツで、超絶シンプルだ。


「それじゃあ行きましょうか。探索用の消耗品補充が名目でしたよね。それでヴァーリアナの皆さんが泊まる宿の位置ですと、けっこう限られますね」

「それは良かった。その辺までは案内してくれるか。その後は俺が気配を探ろう」


 あいつらよりずっと広い範囲を探れるし、バレずに見つけるのはそんなに難しくないだろ。


 妙に上機嫌のセフィアに連れられて向かった先は、大通りから一本入ったところにあった商店街だ。ざっと見ただけでも傭兵向けの店ばかりが並んでいるのが分かる。


 歩いている人間も荒ごと慣れしてそうなやつらばかりで、付いてきて良かったと思える。


「傭兵向けの店は基本的にはこうして一つのエリアを形成してます」

「まあ、乱暴なやつも多いしな。この方が一般住民も安心だ」

「ですね。他にも同じようなエリアはありますが、一番近くても傭兵ギルドを挟んで反対側あたりなので、特別な事情がない限りはこの辺りにいるかと」


 ここから傭兵ギルドは、徒歩十分くらいか。それで反対側なら理由なしにはわざわざ行かないな。


 さて、それじゃあスキルの範囲を最大まで広げるか。街中だと情報量が凄まじいことになるが、一時的にならなんとかなる。


「んー……。お、さっそく見つけたぞ」

「もうですか?」

「ああ。カロックとリリエの気配だ。ケインとルカは範囲にはいない」


 カロック達は、動いてないな。商品でも見てるんだろうか。

 もうくっ付いてる二人のデートの邪魔をするのは悪いから、ケイン達のいるだろう場所を聞くだけにしよう。


 スキル範囲を普段通りに戻して、少し足早に見つけた気配の方に向かう。

 二人は、ああ、いたいた。


 いたんだが、あれは、何をやってるんだ?


今日から2日に一回更新です。

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