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絶対に目立ちたくない元社畜おっさんの職人NPCスローライフ~推しモブに成り代わってしまったので代わりに夢を叶えます~  作者: 嘉神かろ
第2章

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第39話 モブサブの春よ来い?

「――まあ、今日はこんなもんだな」

「あ、ありがとうございました……!」


 みんな息も絶え絶えだな。

 まあ、仕方ないか。想定したよりずっと大変な訓練になってしまったからな。


 ケインやカロックの訓練は実戦形式に移っていたし、リリエやルカもMPを使い切るまで何度も繰り返し魔法を使っていた。MPが枯渇した時の倦怠感はなかなか酷い。


 俺も鍛冶で試行錯誤してるときに知ったが、現実になったこの世界ではMPの減少が体調の悪化に繋がる。大きな割合を一気に消費すれば失神することすらあるらしい。


 今の俺のMPで失神するようなことはまずないだろうが、それでも枯渇させたときは凄まじい頭痛と吐き気がした。酷い二日酔いをさらに数段悪化させたような感じだ。


 あれはもう二度と味わいたくない。

 ゲームの頃はデバフがかかってステータス低下とスキル性能の割合低下があっただけだったんだがな。


 自然回復効果を高めるポーションを渡してやって息が整うのを待ちつつ、片付けを進める。さすがにかなり荒れてしまったからな。いっそ、魔法で抉れたあたりは畑なり花壇なりにしてもいいかもしれない。


 あれこれ考えている間に、ケイン達も落ち着いたらしい。そろそろ今後の話をしよう。


「お前ら、明日も迷宮に潜るのか?」

「そのつもりです。いつ悪魔族が動き出すかも分かりませんし」

「うぅむ……」


 凄い活力だな。確かに時間がどれほど残っているかははっきり分からない。俺が立てた予想だって、ゲーム時代のイベントから概算しただけのものだしな。

 だが、やはり前のめり過ぎるように見える。


「なあ、ロザリエ、悪魔族の動きについては何か分かるか?」

「二日前に外の迷宮付近でそれらしい姿を目撃されてから一切情報が入ってきておりません。その迷宮についても特に変化は無いようです」

「だ、そうだ。何かあればロザリエが教えてくれる。その時になって万全には動けませんなんてことになれば意味が無いからな。休息もしっかりとっておけ」

「……分かりました。どうせ補充も必要ですし。明日は休息日にします。皆もそれでいい?」


 ルカが頷いたのに続けてカロックとリリエも了承する。二人はほっとした様子を見せているから、やはり危惧してたんだろうな。


「せっかくですし、夕食にお誘いしてはどうでしょうか」


 これは俺に言ってるのか。確かに家主は俺だが、食事に関してはかなりの割合をロザリエに任せてしまっている。他のことなら兎も角、食事は彼女がいいならいい。


「どうする? ロザリエの料理は美味いぞ?」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

「では私は用意を始めさせていただきます」


 なら俺は案内だけしたら風呂の用意をしておくか。魔法で泥なんかの汚れは落とせるにしても、汗は無理だからな。ゲーム上必要無かったというより、自分由来の汗を魔法で選択して除去するのは難しい、とどこかのNPCが言っていた。


 おっと、今のこいつらに自分で魔法を使わせるのは酷だな。


「『クリーン』。よし、それじゃあリビングに行くか。風呂の用意もしておくから、どっちが先に入るか決めておいてくれ」

「わーい、ありがとうございますぅ」

「助かるわ」


 ケインのやつ、きょとんとしてるがまさか、風呂の入る必要性を理解してないのか?

 汗べったりで寛ぐのが平気なタイプか。ルカの方はやはり気にするようだし、後々喧嘩の種になりかねないな。


「汗がべたついて気持ち悪いだろ。汚いしな」

「ああ、それもそうですね。たしかにお風呂に入った方が良さそうです」


 うん、素直。可愛いやつだ。


 男二人は湯船に浸からなくても良いらしく、溜めてる間に入ると決めたようだ。俺は汗をかくほど動いていないし、客人だけリビングに残すのも良くない。そう思って、女子二人の質問に適当に答えたり雑談したりしながら夕食のできるのを待つ。


「ちょっとトイレを借りてもいい?」

「ああ。出てすぐ左だ」


 礼を言って出て行く青髪の後頭部を見送る。バタンと扉が閉められて、一呼吸を置いたタイミングだった。


「アルゴスさん、ちょっと相談があるんですがぁ、いいですかぁ?」

「ん? ああ」

「ルカさんとケインくんのことですー。あの二人、見ててじれったいと思いませんかぁ?」


 じれったい? うーん、正直、微笑ましいとしか感じていなかった。

 すぐ横から見てたらそうなのか?


「なんだかんだ私たちも長いんですがぁ、出会ったときからあの感じなんですよぉ。ケインくんは未だに自覚してるかも怪しいですしぃ、私としてはぁ、ルカさんのためにもそろそろ一歩くらい進んで欲しいんですー」

「なるほどな。それで、俺はどうしたらいいんだ?」

「明日、二人がデートできるよう話を誘導するつもりなのでぇ、適当に合わせてもらえたら!」


 まあ、それくらいならいいか。

 色恋で人間関係が壊れることもよくあるが、そもそもカロックとリリエが既にそういう関係だしな。それならさっさとくっ付いてもらった方がルカのメンタルが安定するかもしれない。


 ケインも、自覚することで変化があったとしても、緊急時の選択が変わるなんてことにはならないだろう。俺の目から見ても、無自覚なだけで内心ではルカのことを憎からず思ってるように見えるし。それなら大して問題にならないはずだ。


「分かった。カロックは把握してるのか?」

「いえ。でも察してくれると思いますよぉ」


 ならいいか。


「あ、戻ってきますねー。それじゃあよろしくお願いしますぅ」


 返事をする前に扉が開く。厚みと素材的に聞こえてはいないだろう。


「おかえりなさいー」

「ただいま。何の話をしてたの?」

「デートの話ですー。カロックさんと明日行けたらいいなって思ってるんですよねぇ」


 さらっと嘘を吐いたな。いや、嘘ではないのか。

 歌唱スキルの応用に自力で気が付いたことといい、一番頭が回るのはもしかしてリリエか?


「そうね。たしかに、ミラディスに来てからはそんな暇もなかったわね」

「なんなら明日、時間を作ってもいいんじゃないか?」

「そう、ね。補充しないといけないものもそこまで多くないし、してきたら?」


 よし、これでルカとケインを二人にする口実はできたな。


「そうですねぇ。カロックさんが良いって言うなら行っちゃいましょうかぁ。もちろん、買い出しもある程度手伝いますよぉ。あ、どうせなら手分けしましょうかぁ!」

「別に二人で楽しんできてもいいんだけどね」


 思いのほかすんなりいったな。これ、俺が助力する必要あったか?

 まあ、保険にはなったか。リリエもその認識だったろうしな。


 なんにせよ、これで二人の関係が進んだらいいな。



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