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絶対に目立ちたくない元社畜おっさんの職人NPCスローライフ~推しモブに成り代わってしまったので代わりに夢を叶えます~  作者: 嘉神かろ
第2章

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第37話 モブサブの実力診断!

 ケイン達がレベリングを初めて一週間が経った。進捗は、良好。予想していたよりもずっと早いペースで進んでおり、もう上位職に入っているらしい。

 レベルアップまでの必要経験地が低めだったんだろう。住人は個人差があるらしいからな。


 そういう意味で、やはりあいつらは主人公らしい才能を持っていた。ストイックなのもいい。

 この調子なら、上位職の五つ目もいくらかは育てられるかもしれないな。


 ただ、レベルさえ上がればいいってわけじゃない。スキルをそのまま使うだけでは限界がある。スキルを使わない立ち回りについても独学だろうから、その辺も補ってやらないといけない。


 といっても、後者に関して教えられることは少ないが。ゲームの仕様だからこそ通用していただけのものも多いからな。


 今日はそういう技術周りを教えようと思って家に呼んであるんだが……、そろそろ時間だな。


 リビングのソファから立ち上がって軽く伸びをし、腰を捻る。その視界に扉の開くのが映った。


「アルゴス様、ケイン様方がおいでです」


 入ってきたのは買い物鞄を腕に提げたロザリエだ。どうやら帰ってきたタイミングで鉢合わせたらしい。


「分かった。玄関か?」

「いえ、裏の庭に回っていただいております」

「助かる」


 ロザリエと並び、キッチンの勝手口へ向かう。彼女は食材をしまいに来ただけかと思ったが、どうやら見学するつもりらしい。


「お嬢様をお守りする手段はいくらあっても良いので」


 ということだ。


 外に出ると、ケイン達が少し前にバーベキューをした辺りで準備運動をしているのが見えた。その様子だけでも、以前より確実に身体能力が上がっているのが分かる。


「待たせたな」

「あ、アルゴスさん。今日はよろしくお願いします」


 軽く返事をして準備運動に混ざりつつ、それぞれの装備に目を向ける。

 片手剣と盾のケインに、弓を持ち腰に数本のナイフを差したカロック、長杖のルカとリリエ。

 うん、どうやら伝えておいたことは忘れてなかったらしい。


「ちゃんと言った通りの職で来たみたいだな」

「はい。僕がウォーリアーでカロックがレンジャー、ルカがワイズで、リリエがバードです」


 今就ける職業のうち、それぞれが最終的に目指す役割に最も近い職業だ。微妙に違う部分もあるが、基本は変わらない。


 なんにせよ、まずは今の実力と知識を知らないとな。


「よし、それじゃあ今から模擬戦をするぞ。俺対お前ら全員だ。お前らは普段通りの武器を使え」


 俺は、ちょっと丈夫なだけの木の棒と盾だ。


「えっ、でも、アルゴスさん、その格好でですか……?」

「町着に見えるだろうが、ケインの鎧より頑丈だぞ。それに、だ」


 棒を一振りし、触れないままに地面を切り裂いてみせる。それからニッと笑みを使った。


「知ってるだろ? 俺は頑丈だ。そういう心配は、ワイバーンの切り札よりも高い火力を出せるようになってからすればいい」

「言ってくれるじゃない」

「だが、悔しいが、その通りだな」

「ですねぇ……!」


 ルカと、意外にもカロックが対抗心剥き出し。ケインとリリエは緊張した表情を浮かべる。

 コイツらがどれだけやれるか、楽しみだ。


「ロザリエ、合図を頼む」

「分かりました。皆様、準備はよろしいでしょうか」


 距離を空けて対峙し、各々が肯定の言葉を返す。


「それでは、始め!」


 まず飛び出したのはケインだ。様子見は無意味と判断したんだろう。背後にリリエのバフ効果を持った歌を聞きながら、盾を前よりに構えて突進してくる。


 全速力、なんてことは流石にしないか。そんなことをするようなら雑に受け流して地面に叩きつけるところだった。


 ここは受け止めるか。下がって避けてもいいが、ステータス差を考えれば避ける意味はあまりない。


 こちらも盾を上げ、打つかる瞬間に前へ出る用意をする。

 ――いや、これは違うな。フェイクだ。


 そう悟った直後、ケインの背後から影が飛び出した。


 影、カロックは棒の届く少し外からナイフを投げてくる。しかも盾側。同時にケインも加速したから、ナイフを縦で受ければシールドチャージをもろに受けることになる。


 さすがの連携だな。どちらもスキルを使っているようだから、普通なら十分な有効打だ。


 当然俺のVITなら無傷で受けられる範囲。だが、そんなゴリ押しをしては彼らを呼んだ意味がない。


 一度盾を逸らし、ナイフを弾く。その間に眼前までケインの盾が迫り、生産職のSPDで対処は不可能な距離となる。


 ケインは直撃を確信しているだろう。だが甘い。


 心の内で『シールドバッシュ』と唱えれば、SPDの数値上あり得ない速度で盾が前へ出た。


「なっ!? ぐっ……!?」


 目を見開くケインが押し返され、タタラを踏む。上手く衝撃を流したようだが、腕が下がっている。痺れてるな。


 追撃、といきたいところだが、ルカの魔法詠唱が終わりそうだ。大きいのが来る。


「『ルナミスレイ』!」

「『一閃』」


 カロックがケインの腕を引くのと同時に発射されたのは目の眩むほど強烈な光だ。意味がだいたい被るだろってツッコミは元ゲームの世界には野暮。ただ光属性の光線魔法と認識すればいい。


 つまりは発射と殆ど同時に着弾する光速の魔法攻撃。人の認識出来るスピードを越えているはずのそれは、しかし全く同時に放った炎の斬撃に阻まれる。


「嘘でしょ!?」


 発射されてからがいくら早くても、発射タイミングさえ覚えていたら対応は難しくないんだよ。対人戦闘でさんざんやったからな。

 詠唱完了、ルカの練度で言えば魔法名を言い切ってから三秒だ。それだけあれば、対抗手段を発動するのも難しくない。


「そろそろ俺も攻撃するぞ」


 ケインが盾を構え直し、リリエが前提職業である神官の結界魔法を発動しようとする。その裏に隠れながら、ルカとカロックは次の用意。間違っていない対応だ。


 間違っていないが、戦力差の判断が甘かったな。


「『アースインパクト』」


 ハンマースキルのただ一つを発動させ、木の棒で地面を殴る。他のスキルを併用しないのは、そうしないとケイン達が死ぬからだ。職業スキルの補正が乗らない状態でも、ステータスの差が大きすぎる。


 地面を叩いた振動が増幅され、大地のうねりとなって四人を襲う。つまりは足下からの攻撃。眼前に構えられた盾も、結界も、意味をなさない。


 咄嗟に対応できたのは、リリエだけだ。後方にいた彼女はケインとカロックが衝撃に打ち上げられるのを見て、即座に結界を下方へ動かした。


 しかしそれでも、そもそもの威力が許容量オーバー。結界は容易く砕け、リリエとルカを打ち上げる。


「く、そ……」


 死屍累々とはこのことだろうな。若者四人が倒れ伏し、起き上がれないでいる。


 一番耐久力の高いケインは威力のより高い至近でくらったがために戦闘不能。すぐ後ろにいたカロックや紙装甲のルカはいわずもがな。結界の防御が一応間に合った上、MND(マインド)が高く距離もあったリリエだけはどうにか立ち上がろうとしていた。


「まだ、ですぅ……!」


 回復するつもりか。だが一人一人回復するのは許されないぞ。どうする?


「――ほう」


 リリエが歌い出すと、淡い緑色の光がケイン達に降り注ぐ。バードの歌唱スキルと神官の回復魔法を組み合わせた超範囲回復だ。

 二段階ある上位職の内、一段階目においてヒーラー型ワイズを除く唯一の範囲回復手段。まさかそれに自力で気が付いているなんてな。


 教えなければいけないことが一つ減ったのは喜ばしい。その時間で別のことができる。


 見る見る傷が癒えて立ち上がったケイン達。拍手を送りたい気分だが、残念ながらまだ模擬戦中だ。だからそろそろ、拍手の前に、終わらせよう。


 さっきケインも使っていた盾スキル、『シールドチャージ』を連続で使い、一気に肉薄。勢いそのままに『スラスト』や『スラッシュ』といった最下級スキルを一発ずつ入れて、一瞬で四人の意識を刈り取った。


 ロザリエから見ればほんのひと瞬きの間の出来事だっただろう。だがこれが俺とケイン達の実力差だ。生産職ゆえに平均ステータスが下がっていても、技術でいくらでも上回れるし、そもそもステータスにも大きな開きがある。


 今日はその技術を教えるためだが……気絶させたのは失敗だったか?

 まあ、解答解説は、全員の意識が戻ったらだな。



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